↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『メイドさんは出て行きたいッ!』~誕生日を忘れられたので辞表を書いたら、無自覚な家事技術で世界を救う聖女だと勘違いされました~  作者: 黒崎 凱


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/100

第36話:迫りくる『煌めき』

――翌朝。


白リネンが揺れる。

朝日、風……洗濯場。


いつもの景色……本当に

全て、いつも通りのはずだった。


「……」


アイナは、無言で洗濯物を干していた。

顔が、赤い……ずっと。


昨夜から――


『居てほしい』


『君が居ないアストラル家など』


「み゛ゃお~ぉんッ!!……」


――思い出した瞬間

立っていられなくなる。


(むっ、無理ぃ……っ……!)


「何よあれ……ッ!

何だったのよ、あれッ!


あんなのほぼ告白じゃない……ッ!

いや……でも、違うのかな?

でも、手握ってたし……頬に手まで……っ!


に゛ゃあぁぅうぅぅぅ……」


――本日のアイナ。

朝から完全に“不審者”である。


ともあれ……今日も今日とて

ある種“いつも通り”なアストラル家。


だが、そんな中――


「アイナ様ぁぁぁッ!」


「に゛ひゃぁっ!?」


――突如として掛けられた声に

『びくぅッ!! 』と飛び上がる。


「お顔が真っ赤ですだ!りんごなら食べ時ですだ!」


「な゛っ?!……なっ、何ですかぁぁぁッ!」


……アイナ、ツッコミの不発。


ジョセフはニコニコと笑顔を浮かべ、彼の後ろでは

使用人たちが生暖かい目をしていた――


「いやぁ……昨夜は実に尊かったですなぁ」

「若様の“居てほしい”……」

「ついにアストラル家にも春が……今は冬ですが」


「何処まで聞いてたんですかあなた達はぁぁぁッ?!」


――ようやく、アイナの絶叫。


「だっ……第一ッ!

あれは、別にそういうのじゃ――」


「あっ!……若様ぁぁぁッ!!」


「――み゛ゃんッ!?」


ジョセフの声に慌てて振り向くと、そこには

朝日を背負ったレナードの姿があった。


「おっ……おはよう……ございますっ……」


「あぁ、おはよう」


唯《ただ》の挨拶が、妙にぎこちない。

そして、使用人たちは色めき立つ――


「若い……」

「甘酸っぱい……」

「初々しい……」


「りんごは、お尻の辺りが黄色くなると美味いだよ?」


「其処ぉッ!最早《もはや》どこ目線ッ?!」


――朝から絶叫である。

そんな中――


「アイナ、手は……」


不意に、レナードが小さく呟く。


「へっ……?」


「火傷は……まだ、痛むか?」


「あっ、えっとその……平気ですっ!」


「そうか……なら、良かった」


レナードが、少し安心したように笑う。

その顔を見た瞬間……アイナは視線を逸らした。


「アイナ?」


「っ!……な、何でもありませんっ!」


慌てて洗濯物を掴んだアイナ

だが、焦ったせいで――


『ズザッ――』


「あぁっ?!」


――洗濯カゴは傾き

大量の白布が中を舞った――


「きゃぁぁぁぁッ!?」


――中庭へ広がる白。


風に乗って、一斉に空へと舞い上がる。


「アイナッ!」


――瞬間、レナードは

咄嗟に彼女の腕を引いた――


……


『ドサッ……バサバサバサッ』


洗濯物が舞い落ちる中

アイナは……レナードの腕の中にいた。


朝日が差し、風が吹く……そして。

強烈に近いその“距離”に――


「ぁ……っ……」


アイナの思考が止まる。


近い……近過ぎる。


顔が、呼吸が――レナードも

少しだけ目を見開いていた。


だが、次の瞬間――


「ふっ……珍しいこともあるものだ。

アイナが洗濯物を“投げる”とはな……」


――アイナを見つめ、笑みをこぼしたレナード

一方――


「わわわぁぁたしぃっ!……し、仕事しますッ!!」


「ア……アイナ?」


「今、忙しいのでぇぇぇッ!!――」


『逃亡』


誰の目にも明らかな、その背中を見送りながら。

レナードは……小さく息を吐いた。


そして――


「……困ったな。

ジョセフ……私は、どうすべきなのだろうな」


「例の“お達し”のことだか?」


「ああ……アイナを、悲しませたくはないんだ」


「おらも同じ気持ちだ……でも、無視は出来ねえだよ」


「ああ……分かっている、腹立たしいほどに」


白布が揺れる風の中

レナードの静かな怒りが中庭に響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。