Ⅱ 蠢動 ー7
「おはよう、ルークス」
ルークスの首を抱き、そう挨拶をすると、ルークスは鼻を近づけて、ターシャに挨拶してくれた。
ルークスはきちんと飼い葉もたべさせてもらえたようで、機嫌がよかった。
最初に少年が勧めた宿を、ナルが無視したのには、きちんと理由があった。
このマルゴの町では、安くていい宿だからと案内される宿は、大概何かを盗られるらしい。
厩舎付きであれば、馬が盗られる場合が多い。だから多少高くても、馬番付きの厩舎がある宿がいいと言われるが、何のことはない、馬番に賄賂を渡せるからだ。
この町は今でも、現役の盗賊集団の町だということだ。何も知らずに泊ってしまえば、身ぐるみ全部盗られかねない。
ただしコツさえつかめば、むしろ滞在しやすい。この町の者は、金で交わした約束事には義理堅いからだ。
ナルは少し多めに金を渡したのか、二人が宿で仮眠をとった後、昼過ぎにルークスを引き取りに行くと、馬番は愛想よく迎えてくれた。
昼時でもないのに食事を出してくれた、宿のおばさんにしてもそうだが、その愛想のいい笑顔を見ていると、とても盗賊の一味だとは思えなかった。ナルにそう告げると、ナルは『そういう家業だから』と一言で片づけた。
そういうわけで無事盗賊の町マルゴを出た二人だったが、ユースティスを助けるという目的は決まっていても、手段が全く分からなかった。まさか、ラウルの館に無策で突っ込んで行けばどうにかなるとは、思っていない。
これではナルが一人で困っている時と変わらない…いや、ターシャが加わっただけ、状況は悪くなっているかもしれない。
そう思わずにはいられなかった。




