表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宵の姫君  作者: さら更紗
Ⅱ 蠢動
PR
24/34

Ⅱ 蠢動 ー2


「ルークス!」

 森の出口近くに、隠されるように馬が幹に繋がれていた。

 馬は怯える様子もなく、落ち着いて、ターシャの呼びかけに鼻を鳴らして答えた。

「よく連れて来られたわね!」

 ナルに声が届かないのも忘れて、ターシャは大喜びで馬の首に抱きついた。

 ルークスは、父アランより贈られたターシャの馬である。

 公国では女性が馬に乗ることは一般的ではなかったが、愛娘の懇願に、父は十五歳の誕生日祝いとして、 選りすぐった馬を贈ってくれた。

 父は、足の速い駿馬ではなく、気性の優しい一頭を選んだ。これは娘への贈り物である馬に、足の速さはさほど重要ではないという大公の分別もあるが、ターシャに寄り添ってくれる気性が、なにより必要だと慮ってくれたからだ。

 それでも、大公家が選ぶ馬だ。血統、品格とも最高級の馬には違いなかった。

 大公一家の住居も兼ねている公舎の厩舎に、ルークスは繋がれていた。

 あの逃亡の夜、ルークスのことは頭に浮かんだが、怒声を上げる兵士たちが大勢いる中、とても厩舎に近寄ることは出来なかった。

 最高級の馬は目立つ。たとえ今のように古びた鞍を付けられていても、人の目を引きかねない。

 どうやってここまで連れてきたのか。ルークスはナルにも慣れていたから、駆けて来たのではあろうが……。

 訊ねようにも、今は無理だった。

 ナルがターシャの肩をそっと叩き、ルークスに乗るように促した。

 ターシャは跨り、ルークスの首に顔を埋めた。久しぶりのルークスの匂いに胸がいっぱいになる。匂いは記憶を呼び起こす。ターシャの頭は公国のことでいっぱいになった。

 お父様、お母様、ミア姉様……ユースティス。

 ナルが手綱を幹からほどき、ルークスを森から連れて出た。

 そこには街道があり、先まで伸びていた。

 都へ続く街道だ。

 ターシャはナルが行こうとしている先が、都であることをもう疑わなかった。

 夜の内に進めるだけ進んでおいた方がいいだろう。

 ターシャがそう思ったとき、ターシャの後ろにナルが飛び乗ってきたのを感じた。ルークスが鼻を鳴らして抗議の意を伝えたが、振り落としはしなかった。

 ターシャが首を撫でて宥めると、ルークスは「仕方ないなぁ」という風にまた鼻を鳴らした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ