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宵の姫君  作者: さら更紗
Ⅰ 幻の村
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17/37

Ⅰ 幻の村 ー17



 ターシャは聞き慣れぬ音に首を傾げた。

 カタン カタン カタン

 その音はずっと聞こえていた気もするし、今初めて耳にした気もした。

 耳障りではない。単調な一定のリズムが心地よい。

 目は開かなかったが、それでも良い気がしてきた。

「目が覚めたの?」

 柔らかい、女の人にしては少し低めの声が聞こえて、ターシャの意識は一気に引き戻された。

 勢いよく身体を起こすと、眩暈がして咄嗟に頭を押さえた。

 眩暈が収まるのを待ちながら、昨晩のことを思い出す。ユースティスのことを聞いた後のことは記憶が曖昧だが、動けないターシャに、蘭がここに泊るよう言ってくれたのだった。

「皆は?」

 自分のことで手いっぱいで、他の皆のことまで気が回らなかった。静けさから、どうやらこの家にはターシャと蘭の二人しかいないようだった。

蘭はターシャが横たわっている寝台の傍らに座った。

「キースは信のところよ。陽は…帰ってもらったわ」

 ターシャが何か言おうとするより先に、蘭は手を伸ばし、ターシャの頭に手のひらをそっと乗せた。

「あなたの国のことは、ずっと見ていたから知っているわ。あなたのことも、その婚約者のことも」

 それから優しくターシャの頭を撫で始める。

「今は(あの子)より、わたしが側にいる方がいいと思って」

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