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Ⅰ 幻の村 ー17
ターシャは聞き慣れぬ音に首を傾げた。
カタン カタン カタン
その音はずっと聞こえていた気もするし、今初めて耳にした気もした。
耳障りではない。単調な一定のリズムが心地よい。
目は開かなかったが、それでも良い気がしてきた。
「目が覚めたの?」
柔らかい、女の人にしては少し低めの声が聞こえて、ターシャの意識は一気に引き戻された。
勢いよく身体を起こすと、眩暈がして咄嗟に頭を押さえた。
眩暈が収まるのを待ちながら、昨晩のことを思い出す。ユースティスのことを聞いた後のことは記憶が曖昧だが、動けないターシャに、蘭がここに泊るよう言ってくれたのだった。
「皆は?」
自分のことで手いっぱいで、他の皆のことまで気が回らなかった。静けさから、どうやらこの家にはターシャと蘭の二人しかいないようだった。
蘭はターシャが横たわっている寝台の傍らに座った。
「キースは信のところよ。陽は…帰ってもらったわ」
ターシャが何か言おうとするより先に、蘭は手を伸ばし、ターシャの頭に手のひらをそっと乗せた。
「あなたの国のことは、ずっと見ていたから知っているわ。あなたのことも、その婚約者のことも」
それから優しくターシャの頭を撫で始める。
「今は陽より、わたしが側にいる方がいいと思って」




