第二話:新しい犠牲者と雨の音
馬車から降り立ったのは、茶色の髪と琥珀色の瞳を持つ、女性と少年だった。
新しい母親と、義理の弟。シェーラは無感動に、窓辺から彼らを見た。
母親は、恐怖を意思で抑えているような、そんな瞳をして
少年は、怒りが揺らぐ瞳をして
同じ髪の色、同じ瞳の色なのに、二人は対照的な様子だった。
窓辺から冷めた瞳で彼らを見つめる娘。化け物と結婚させられた人身御供という、腫れ物扱いの男に再婚相手として嫁ぐのだ。内心は動揺しているのだろう。そしていま、シェーラの心まで、ひんやりと冷えていました。
でも、彼らには立場上、挨拶せねばなりません。シェーラは侍女が見送る中、自室を出て階段ホールへと向かった。
階段ホールに入ると、ちょうど父親が彼らを案内してくる瞬間だった。だが、いつもの父親より、もっと冷たい表情をしていることに、シェーラは気づいた。
厳しい表情をした父親が、玄関から彼らを案内してくる。シェーラはホールの上から、手すりに手をかけて、冷徹に彼らを見下ろした。
これが新しい犠牲者か、と無感動に見ていると、後妻の顔はみるみる青くなり、一方義弟はなぜか赤くなりました。
「シェーラ、この女性はリディアだ。この子はカイル、お前の弟になる」
温度を排した声音で父親はそう言った。
シェーラはゆっくりと瞬きをしました。了承の意味を込めて。
「よろしくお願いします」
無感動な瞳のまま、声だけを淑女らしく整えて、シェーラはそう告げた。後妻はヒッと息を飲み、義弟はなぜか彼女を睨みつけた。
領主である祖父も参加する、親睦のための初めての晩餐。
そのはずだが、状況が全く改善していないことに、シェーラは気づいていた。
眉根を寄せたまま、どこか苛立ったようにワインを啜る父親。
震える手でフォークとナイフを扱い、なんとかマナーを守って食事を進める後妻。
ほとんど食べずに、時々娘を睨む義弟。
祖父だけが上機嫌で、今回の縁談でどれだけ自領が有利になったかと語っていた。
居心地がいいとは言えない時間だった。
晩餐が終わった後、機嫌良く退室する祖父。新妻の方を振り返りもせず、廊下へ向かう父親。俯き、震える手でナプキンを命綱のように握りしめる後妻。
そんな自分の母親を気遣わしげに見た後、義弟は娘を見ました。そこには、怒りと、恐怖と、あとはなにか、分からないもの。
シェーラは静かに目線を外すと、さっと退室した。
後日、歴史の授業へ向かうと、義弟も席についていた。
「領主様の好意で、同じ授業を受けさせてくれるそうだ」
そうぶっきらぼうに告げて、プイッとそっぽを向いてしまう義弟。彼は娘が嫌いなようだった。
「そう」
シェーラはそう答えると、静かに席へ座りました。
その授業でも、次の授業でも、相変わらずシェーラの受け答えには無駄がなく、的確で、応答のスピードも早いものでした。
日が落ちる頃、義弟は呆然としていた。
スピードが早すぎたのだろうか。
「初めての授業だったのでしょう?とても立派にこなせていたわ」
珍しく親切な言葉を伝えるシェーラに、なぜか義弟は一瞬泣きそうになり、そのあと怒りと屈辱が彼の顔には滲んだ。
「うるさい!お前みたいな奴に、分かってたまるか!」そう言葉を投げつけると、彼は憤然と扉を叩きつけ、部屋から出ていった。
シェーラは、唖然として彼を見送った。なぜ彼は怒ったのか。自分は何か間違っていたのか。
答えが出ず、彼女は軽く首を傾げると、分厚い教科書を何冊も、丁寧に鞄にしまった。
ふと、窓の外を見る。雨が降り出していた。




