↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫁が魔王の娘だった件 〜Dランク盾使いの僕ですが、ツンデレで世界最強の妻を一生守り抜くと決めました〜  作者: 神無月 奏
第一部 辺境編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/33

第11話 約束

僕たちはとある部屋にいた。

部屋というよりは、真っ白な空間といった感じだ。

ドアはなく、魔法陣でのみこの部屋に出入りできるそうだ。


部屋には、僕とティナ、お義父さんとお義母さん、そしておばばがいた。


「えっと……おばばさんはなぜここに?」


「さん付けなど、こそばゆいわ。おばばでかまわんよ」


「じゃあ……おばばはなぜここに?」


「……あんだって?」


——答える気ないんじゃないかな……


「儀式は、このばば様が執り行うのだ」


お義父さんが代わりに答えてくれた。


「ひっひっひ」


この人はいったい何者なんだろう。


「それじゃあ、あたしから説明するかね……」


そう言うと、さっきまでのとぼけた感じとはうって変わった調子で話し出した。


「まず、この儀式は王家の血を絶やさぬための儀式じゃ。本来であれば王にのみ許されるのじゃが……」


そう言って、おばばはお義父さんに視線を向けた。

お義父さんはゆっくりと頷いた。

おばばは、それを見て言葉を続けた。


「すでにヴァル坊から聞いているとは思うが、この儀式には大変な危険が伴う」


ティナの手が震えていた。

僕はそっとティナの手を握った。


「資格のない者が行えば命はない。そして、成功しても一生縛られる呪いとなる……それでも受けるかえ?」


握り返す手に力が込められた。


「受けるわ!」


「はい」


お義父さんは満足したように頷き、お義母さんは口に手を当て、今にも泣きそうな表情で僕たちを見ていた。


「よい目じゃ……何百年ぶりかのう」


そう言うと、おばばは装飾の施された小さな箱から、白く輝く杯を取り出した。

聖杯とでも呼ぶのだろうか、その杯を高々とかざした瞬間……地鳴りのような音とともに、純白の祭壇が出現した。


「この杯にお前の血を入れるのじゃ」


そう言われたティナは、ためらうことなく自分の指を切って、杯に血を満たした。

そして、それをおばばに渡した。

おばばは、その杯を祭壇に捧げ、聞いたことのない言葉で何かを唱え始めた。

とても温かい光が杯に降り注いだ。


「アルティナよ。杯を取ってライルに渡すのじゃ」


ティナは祭壇から両手で慎重に杯を取って、僕に差し出した。

その手は、やはり震えていた。

僕は自分の手で杯ごとティナの手を覆って、ティナの目を見つめた。


「大丈夫」


ティナはゆっくり頷いた。

もうその手は震えていなかった。

僕はティナの手から杯を受け取った。


「では、飲み干すのじゃ」


僕は杯の血を一気に飲み干した。

——熱い!喉が焼けるように熱かった。

そして、僕の記憶はそこで途絶えた。


——夢を見た。

たくさんの扉が宙に浮かんでいた。

どこかに通じているのだろうか。

僕は、扉を開けようとした手を止めた。

なぜだろう……先に進んだら戻れなくなってしまう気がした。


ふと、ティナのことが気になった。

ティナはどこにいるんだろう。

会いたい、いとおしくてたまらない……

僕の頭の中はぐちゃぐちゃになってしまった。


そのとき、柔らかい光が差し込み、新たに扉が現れた。

扉の向こうから誰かが呼んでいるようだ……僕は扉を開けていた。


——天井が見えた。

天井に反射した日の光が眩しかった。

……身体が動かない。

そういえば、前に同じようなことがあったな。


「ライル!?」


ティナが僕の顔を覗き込んだ。

その目は赤く泣きはらしたようで、目の下には濃い隈ができていた。


「ティナ、おはよう……」


「ばかじゃないの……あなた三日間も目を覚まさなかったのよ……」


ティナの目から涙が溢れていた。

……僕も涙が止まらなかった。


「ティナ、ありがとう」


「本当によかった……」


ティナはそっと僕の頬に手を添えて、やさしく唇を重ねた。

しばらくすると、お義父さんとお義母さんも駆けつけてくれた。


僕は身体を起こそうとするが起きられなかった。


「無理はするな。そのままでよい」


お義父さんは最初に会ったときと違って、やさしい表情をしていた。

親が子供を気遣うようなそんな表情だ。


「そのままの姿勢で聞くのだ」


僕は頷いた。

ティナがずっと手を握ってくれていた。


「これで晴れてライルもわが一族となった。ティナが生きている限り、お前の寿命は尽きることがない」


ティナが嬉しそうだった。


「だが、不死というわけではない。寿命以外では死ぬのだ。そうなったら、結局、この子は一人になってしまう……」


お義父さんは一度目を伏せてから、僕の目をじっと見据えた。

そして静かに、けれど重い口調で僕に言った。


「ライルよ」


「はい」


「絶対にティナを置いて死なんと、儂に誓え」


——もちろんだ。何があっても生きてみせる。


「誓います!」


「お父様だけじゃなくて、私にも!!」


ティナが僕の手を引っ張った。

——痛い……

それを見ていたお義母さんも楽しそうに口を開いた。


「あら、私は入っていないのですか?」


部屋に笑い声が溢れた。


それからさらに三日経ってようやく歩けるようにまで回復した。

それまで、ティナは付きっきりで看病してくれていた。

その間に、お義父さんやお義母さんもお見舞いに来てくれた。

お義父さんは、あまりに頻繁に来るので、ティナに追い返されていた。


今は、部屋におばばがいる。


「しっかりと魂がつながっているようじゃの」


おばばには何かが見えるらしい。


「ふむ……」


目を細めて何かを考えているようだった。


「どうしたんですか?」


「……なんか言ったかの?」


こうなっては何も話してくれないだろう……


「あの儀式はの、寿命を得るだけではなく、力を分け与えるという役目もあるのじゃ」


僕は拳を握ってみた。

特に変わったとは思えなかった。


「そのせいで、今ではヴァル坊よりもフレイヤのほうが強くなってしまったわい……ひっひっひ」


「……お義母さんっていったい何者だったんですか?」


「それは本人に聞いてみるとええて」


僕とティナは顔を見合わせた。


「おばば。ライルも私の血を飲んだってことは、強くなったの?」


「……いや。お主の力は受け継がなかったようじゃの」


「ふ~ん、そうなんだ。まぁ、私が戦えばいいから問題ないわね!」


——ティナの力を受け継いでいたらどうなっていたんだろう。

想像できなかった。



「国を挙げて婚儀を行うぞ!」


お義父さんの、その一声で結婚式を行うことになった。

しかも国を挙げて盛大に祝うみたいだ。

代々、王家の花嫁は、身を清めるために一週間、城の中にある教会で過ごすことになるらしい。

ティナは嫌がっていたが、お義母さんの説得でしぶしぶ了承したそうだ。


その期間にドレスの採寸なども行うということだった。

ちなみに、その間は教会に男性は立ち入ることができない。


僕も式に着る服を仕立ててもらうために採寸はしてもらった。

だけど、新郎はそれ以外にやることがないみたいだった。

僕が手持ち無沙汰で部屋にいると、お義父さんが訪ねてきた。


結婚式の準備期間中は公務も行わないそうだ。

やることがないので、僕の所に来たということだった。


「ライルよ」


「はい」


「そなたはティナの姿が見たくないか?」


「はい?」


「夫となるのだ、もちろん見たいに決まっておるよな!よし、ライル行くぞ!」


なにか嫌な予感がする……

僕は半ば引きずられるようにして、ティナが過ごしている教会に向かうことになった。


「正面から行ったのでは見つかるのでな。裏に回るぞ。こちら側は王家専用の通路なのだ」


確かにこの通路には誰もいなかった。


「そこを曲がれば、教会だ」


お義父さんがそう言って角を曲がった。



——教会の扉の前に、お義母さんが仁王立ちしていた。


「あなた。式までは近づいてはいけないと言いませんでしたか?」


そしてお義母さんは僕の方に目を向けた。


「ライルさんまで……。まったく……男の人というのはどうしてこうなのかしら」


僕はお義父さんの顔を見た。

目を逸らされた……


「ライルはずっと起き上がれなかったのだ。ティナと離れ離れにしたら可哀そうではないか……」


——え?僕なの?


それを聞いて、お義母さんが目を細めた。


「……どうせあなたが、無理やり連れてきたのでしょう」


「……」


そのとき、扉の向こうから声が聞こえた。


「ライル?」


ティナの声だった。

僕は会いたい衝動に駆られて、返事をしようとした。


「ちょっと、あんた。なんでこんなところにいるのよ!私も会いたいの我慢しているんだからね!」


怒られた……

僕とお義父さんはしょんぼりしながら来た道を引き返していった。


それから一週間。

結婚式の当日を迎えた。

僕は、正装したガレンさんに先導されて城のバルコニーに向かった。

そこでみんなにお披露目をするそうだ。

すでにお義父さんとお義母さんはバルコニーに出ていた。


バルコニーの手前に到着すると、向こうからティナが女官と共に歩いてきた。

真っ白なドレスが陽の光でキラキラ光っていた。

そのドレスにも負けない透き通るような白い肌……

そして銀色の髪は綺麗に結い上げられ、軽く化粧をしていた。


「……」


——美しかった。


ティナは僕のことを確認すると恥ずかしそうに、少し下を向いた。

僕はティナの前で立ち止まった。


「……すごく綺麗だよ」


「ば、ばっかじゃないの!いつもと変わらないわよ!」


僕はティナの手を取って、その青い瞳を見つめた。


「あ、あんたも似合ってるわよ……」


顔を真っ赤にして俯きながら、そう呟いた。

——はじめてティナに褒められた気がする……


「ちょ、ちょっと。なんであんたが泣きそうになっているのよ!早く行くわよ!」


そのとき。


「皆の者!この度、わが娘が伴侶を迎えることとあいなった!」


街中に響き渡るような声量だった。

それに答えるように、歓声が沸き起こった。


「ここに新たな夫婦が誕生した!わが娘、アルティナ・ヴェル・グレイヴァルト。ならびに、わが息子となったライル・グレイヴァルトである!!」


その声と共に、僕とティナはバルコニーに進み出た。


「うぉぉぉ!」


ひと際大きな歓声だった。

バルコニーから見渡す限り、人で溢れていた。

この街のすべての人が集まっているのではないかというくらい、そこは熱気に包まれていた。


僕とティナは、集まってくれたみんなに手を振った。

すべての人が僕たちを祝福してくれていた。

——こんなに温かい世界があるんだ……

ここに来てよかった。


それから数日後、僕とティナはリンドルへ戻ることにした。

挨拶をしに両親の居室を訪ねていた。


「二人とも元気でね。たまには帰ってくるのですよ」


「はい。お母様」


「それと。この人がライルさんに無理なことを言うようなら、すぐに私に知らせるのですよ」


お義母さんはお義父さんを見ながらそう言った。


「……」


お義父さんは苦い顔をしていた。

本当に何か言おうとしていたのかな……


「ライルよ。あの約束忘れるでないぞ」


「はい!」


僕の覚悟は決まっている。


「ティナよ」


「なに?お父様」


「身体に気を付けるのだぞ。それから、すぐに会いに行くからな!」


どこまでいってもお義父さんは親バカだった。


お互い別れを惜しみながら、城を後にした。

来た時と同じ転移の魔法陣に戻る途中も、街の人たちの温かい祝福の言葉が溢れていた。


リンドル近くの森の中に戻ってきた。

僕たちは、おばばにお礼を言って歩きだした。

ずいぶんと久しぶりな感じがした。


リンドルの街に戻った途端、シドにつかまった。


「おい!お前たち、どこ行ってやがった!」


シドには本当のことを話さないといけない。

僕は思い切って、ティナと僕が結婚したこと、ティナが魔族だったこと、そして義父が魔王だったことを打ち明けた。


「は?おまえ……いきなり何言ってるんだ?」


当然の反応だった。

いきなりそのようなことを説明されて信じる人はいないと思う。


「いきなりいなくなったと思ったら、結婚しました。ティナが魔族で、魔王の娘だぁ!?お前ふざけてんのか?」


「ご、ごめん……でもふざけてはいないよ」


僕はまっすぐシドの目を見た。


「それになんだよ、この『ちょっと出かけてきます』ってのはよ!こんなんで伝わるか!」


シドが一枚の紙を手にしていた。

エルデンハイムに行く前、冒険者ギルドに置いてきた手紙だった。


「ごめん……」


それから、儀式のことを伏せたうえで、寿命が延びたことを伝えた。


「あんだけ聞かされたらもう驚かねぇ……まぁ、お前は無茶ばっかりするから、それくらいがちょうどいいんじゃねぇのか」


「……ありがとう」


「そうだ。お前が長生きするってんなら、あれだ。俺が死んだら毎日、墓に酒を供えてくれよな!……それが俺たちの約束だ」


——僕は、最高の妻と最高の親友を手に入れたんだと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。