メディチ家、エリッサの館で起きたこと
私は重い心で父に馬車を頼み、メディチ公爵家のエリッサの館を訪ねた。
何度もライアンと一緒に見た景色をみて、ライアンのあまり楽しくなさそうな顔を思い出した。
エリッサの前世大好きだったケーキをお土産に持ち屋敷に行くと、エリッサは快く私を迎えてくれた。
エリッサとしばらく話した後、ライアンの作る木箱に入った商品はこれから納められられなくなるかもしれないと彼女にいった。 エリッサは「彼の作るバラの花のついた木箱はとてもきれいで、プレゼント用にしてるけど、皆に好評だったのに残念だ」と言ってくれた。 彼女は、今、髪飾り入れとして使用してるらしい。
ライアンの手作りの木箱は丁寧な作りで、薔薇の一部が彫刻され、ピンクの薔薇が浮き出たようになっていて、綺麗な小物入れとしても使える。 彼一人で作っていたので、たくさんの入れ物を作るのに大変だったと思う。
私は早速、本題を切り出した。 商品を先日納入してから、彼の様子がおかしい。この館でなにかあったのか?とエリッサに尋ねた。
彼女には心当たりがなかったようだか、さっそくライアンがいつも使っているゲストルームに2人で行ってみた。 護衛の人に尋ねると、「ライアンは商品を倉庫に収納してそのあと、いつものようにゲストルームですこし休み帰っていった」と言ったが、そのあと「そういえば、ゲルトル-ムから出て帰る途中、出口でゼルダお嬢様たちにお会いになりライアン様は倉庫に引き返し、箱を3つ持ち、入り口近くにある予備室に彼女達と入って行きました」と言葉を続けた。 その言葉に私は全身から血の気が引いた。
私はエリッサにこのゲストルームがある場所はライアン専門にしてと、お願いしたはずだけど、と尋ねた。 エリッサは考えながら、「その日は夜、身内だけの食事会があった予定だったけど、少し遅れて皆には別の部屋で準備ができるまで待機してもらっていた」と私に話した。 私はゼルダがエリッサの親戚だということを忘れていた。 彼女達は案内された部屋には行かず、ゲストルームのある場所にこっそり行こうとしたのか? 出口でライアンに会って、彼に予備室であんな残酷なことを言ったのか?
私は全身の血が頭にのぼって、その場にしゃがみこんだ。 エリッサは酷く驚いていたが、すこししてから、ライアンが行った予備室に2人で行った。 予備室には、何もなかったが、仄かに薔薇の花の匂いがのこっていた。 良く床を見ると、ガラスが砕けたようなかけらが落ちていた。
私は2日後に開かれるパーティにゼルダが来ると聞いて、それまでここに滞在してゼルダに直接会いたいとエリッサに言った。 私のただならぬ雰囲気にエリッサは心配してくれたが、そのようにとり計ってくれると約束してくれた。
約束の日、メリッサは私とゼルダが直接話ができるよう部屋を用意してくれた。
ゼルダはメリッサが来るのかと思って待っていたが、私が部屋に来たので驚いていた。
彼女は敵意のこもったいつもの目で私をみていたが、私も彼女には彼女の10倍ぐらい敵意のある目で睨み返した。 私はあの日のライアンのことを彼女に聞いた。 彼女は「あなたの周りをウロウロしてた、クマみたいな男ね」とライアンのことを言った。 「ちょうど入口で会ったから、化粧品の話を彼に聞いたら、見本を見せてくれると言ったので、予備室に来てもらったのよ、見本を置いて帰ろうとしたから、箱から肌水を取り出して、やはり、いらない、って言ってやったわ,だって、あんなクマみたいな不細工な男と泥棒猫が作った化粧水なんて、綺麗になれないんじゃない」と笑った。
私はあなたがライアンを醜くて、臭くて、汚いと言ったの? と聞くと「違うわ、私は醜いといってだけ、汚いはエリザベス、臭いはエルザが言ったのよ」とゼルダは答えた。
みんなしてライアンに酷いこと言ったのね、私は彼女を睨んだ。
彼女は笑いながら、「子爵家のクマと泥棒猫が公爵家に出入りするのが、気に入らない」と言ってきた。「あなただって、いい加減あの男に飽きてきて、私の婚約者のドナルドに言い寄ってるんでしょ,私の婚約者に近寄らないでよ」やはり前世と同じ見当違いのことを言ってきた。
でも今回は違う、ライアンを傷つけた。 私は彼女達を生涯ゆるさない。
ライアンは口下手だけど、自分なりに一生懸命商品を売ろうとしてくれたのに、彼女達の悪意に酷い目にあわされた。 私は静かに席をたったが、ゼルダには燃えるような闘志を持った。




