春風の誘惑
メリーアンは春風に誘われて、母と伯爵領に来ていた。
ここにはあまりよい思い出はないが、メリーアンが伯爵家に嫁いでから使用していた、宝石店、ドレス店があった。 子爵出であまり服装にかまわなかった私に、社交界に出る前、見栄っ張りな夫はたくさんのドレスを買ってくれた記憶があり、どのドレスもこの店のドレスは素晴らしかった。 母も父からたくさんのお小遣いをもらい、好きなドレスがあればいくらでも買って良いと言われていたので、母と二人でたくさんのドレスを注文した。 冬の間、温室で育てた薔薇から、薔薇水と薔薇のオイルが完成したのだ。
私は社交界に出て、薔薇の化粧水とバラの香りの石鹸を売らないといけない。
ドレス店の人たちは私達からとても良い匂いがすると言ってくれた。 私はこの香料は子爵家で出来たもので、このオイルを風呂にいれると、良い香りになり肌も綺麗になると、さっそくドレス店に宣伝しておいた。
どうやら子爵家は、去年の雨傘や食料不足の時たくさんの援助をこの伯爵領にもしてくれたと、有名になっているらしい。 ドレス店の店員達は、私たちを優遇してくれて、前世から顔なじみの少し若返った店長さんまで挨拶にきてくれ自らお茶を出してくれた。 ここの店長さんは、自分が気に入った相手にしかお茶を出さない。
つぎに私は宝石店にはいり、母用にエメラルドのネックレスを選び、ライアンの来年のプレゼントを選んだ。 私は昨年のことでたくさん貯金を殖やし、父からもたくさんお金をもらった。 私はそのお金のほとんどを、ライアンのプレゼント用の最高級のダイヤを使った蔦をデザインしたブローチを注文した。
私はこの伯爵領にはドナルドの嫌な思い出もあるが、伯爵夫人として、事業を応援してくれた友人も出来、皆でお茶を飲んだり、事業の話をしたり、楽しかった思い出もあった。
母は宝石店で自分とお揃いのデザインの少し小ぶりにしたピンクダイヤのネックレスを私のために注文してくれたようだ。
春風に誘われて浮かれていた私の瞳に、街を歩くドナルドと公爵の令嬢のゼルダ様が映った。
ゼルダ様は、あいかわらずドナルドをあちこち引きづりまわし、ドナルドはうんざりした顔をしていたが、いい気味だと思った。 ドナルドは彼女が苦手で嫌いだったが、彼女はドナルドが大好きで婚約者気取りで私達の婚約もゼルダ様はことごとく邪魔してきた。 ゼルダ様は過去の私にとって嫌な女だったけど、今世ではゼルダ様の恋を応援してあげるから、がんばってね、と去っていく2人にエールを送る私がいた。
そよ風に誘われて、その時は、私は本当に生まれ変われる気がしていた。




