遅い春、寒い夏
春はいつものような日差しはなく、いつものように暖かくならなかったが私は父に商会を通して、持って来てもらった寒さに強い野菜の苗を植えるように提案した。
前回と同じように父は春植え小麦に次期を暖かくなるまで少し待とうと言ったが、私はいつもの小麦畑を3分の一にして残りを寒さに強いライ麦、オーツ麦、大麦、カラス麦を植えてみようと言った。
農家の皆は少し寒い春の麦の種まきを頑張ってくれた。 カラス麦なんて、黒い固いパンしか作れないと言う人もいたけど、山羊ミルクに黒く固いパンでもふやかして粥のようにすれば、お腹はふくれ栄養もとれる。 小麦の種まき、野菜の苗を植えた後、おおきな小麦用乾燥装置付き倉庫を建て、隣には保存食用、リンゴや果物のシロップ漬け、ジャム、乾燥野菜、果物などを作る作業場を作った。
今年に新しい試みとして、大きな5つの牧場には山羊を10頭づつ贈呈して乳牛のミルクはほぼバター、チーズの生産に力を入れた。 もともとはこの領は牧場経営でなりたっていた。 バター、チーズは他の領にも有名になりつつあった。
豆科のその植物は寒さにも強く成長が早く、豆は人間の食用としても食べられると商会の夫婦に教えられ、たくさんの豆種を買った。
牧場の空いてる土地ににマメ科の植物を植え、牛には豆をとって後の葉や蔓を食べさせるよう指示した。
大きなバター、チーズ作りの作業用建物と牛舎、馬小屋、山羊用小屋用意し、その横に室内で生育できる草などを作る温室を作った。 草を作る温室については、お金の無駄という声が多かったが、大事な牛たちのためだ、将来はそこで我が領でも薔薇を育てたいので問題ない。
日差しの薄い春の終わりに、メイプルシロップのことで隣の領に父と遊びに行くと、ライアンが自慢そうにメイプルシロップを私に持って来てくれた。 彼の無邪気な笑顔を見てると、ささくれたおねえさんの心もすこし痛みが消える。
父は隣のおじ様と金の採掘事業の話があるので、私はライアンの案内で最近増築した大きな乾燥室に行った。
薪の山の隣にライアンが狩った猪や鹿の肉の塩漬けと乾燥茸がたくさんあった。
野菜、卵、ミルク、パンなどはこちらから提供するから、肉や薪、茸はそちらの領で頼むぞ、ライアン、もっともっと集めてほしい。
温室の薔薇園には我が家が提供した香りの良い薔薇と、ゴムの木の挿し木がづらりとならんでいる。
ライアンは働きものだね、と私が言うと嬉しそうに笑う。
お姉さん(おばさん)はその笑顔が大好き、いつまでもその笑顔を壊したくないと思った。
メリーアンにとってライアンの笑顔は宝物の様に大切な物だ。
もうすぐ、何時もと違う寒い夏がくる、寒い夏が来る前に、雨が降り続くその前に、もう少しライアンの笑顔を見ていたかった。




