悪魔からもらった最悪なプレゼント
誕生日会が終わりに近づいたころ、その悪魔は私の前に現われた。
私は遠くから彼を確認して、すぐに隣のライアンの背に隠れた。
このままパーティから逃げ出そうと思ったが、こんな考えが頭をよぎった、彼はまだ19歳、私からみれば青二才、私は彼とは9年間も付き合った。 彼の好きな物、弱点も計算高いところもすべて知っている。 私は悪女になって、彼を騙し、今度は反対に彼から何もかも奪い、最後にポィって捨ててあげよう。 ライアンの後ろに隠れている場合じゃない。 今の私には可愛さもあり、以前の地味さはみじんもない。 そう思っていたら「伯爵様の息子のドナルド様がパーティーにいらしたわよ、ライアンと一緒に挨拶しなさい」と母から声がかかった。 挨拶しますよ、呼ばれてもいないのに、堂々と来る憎きドナルドに、と私はニッコリ笑ってライアンと手をつなぎ悪魔に近寄った。
悪魔は相変わらず、爽やかな笑顔で、「お誕生日おめでとう」と言った。 両子爵家の金採掘の話でも聞きつけてハイエナのように我が家を偵察にきたのだろうけど、私にはその笑顔はもう通じない。
淑女の挨拶はとばし、私もにっこり練習した一番可愛い笑顔でありがとう、と彼を悩殺の上目遣いで見た。
ドナルドはいきなり赤いバラの花束を「誕生日のプレゼント」と言って私の胸に押し付けた。
私はドレスに押し付けられた胸の赤い塊を見て、私の最後を思い出した。 あの時も真っ赤な血の花が私の胸に咲いていた。
彼を誘惑してる場合じゃない、彼を早く遠ざけたい、と思っていると急に眩暈がしてきて、いけない、このままじゃドナルドの胸に倒れこむ。最悪だ私、と思い遠ざかる意識の中、ライアンの名を呼び、隣の彼の腕をつかんだ。 どうやら、ライアンは私が倒れるのを阻止してくれようとしたが、私が薔薇の花を片手に持っていたのでバランスを崩し、そのままライアンを巻き込んで床に倒れ気絶したらしい。 そのままパーティーはお開きになり、私の悪女誘惑計画は、無残にも赤い花の恐怖にうちくだかれた。
気が付くと、父や母や弟とライアンが私のベッドのそばで心配そうにしていた。
どうやら私はライアンを下敷きにして、彼の上にちゃっかり倒れたらしい。
彼には迷惑をかけたが、ドナルドの胸の中に倒れなくてよかったわぁ。
母は花瓶に赤いバラの花をいれ、「いい男を見て気絶したのね」などと言っていたが、母よあれは、私たちを滅ぼしに地上に降りた、美しい仮面をつけた悪魔だよ。 私は彼も持ってきた赤い花の恐怖で気絶した、と言ってあげたかったがやめておいた。 私はすっかり疲れてしまい、そのまま眠ってしまった。
次に日、父は私に改めて誕生日プレゼントをくれた。 なんと彼がくれたのは、たくさんのお金だった。 金の採掘で帳簿を手伝い、私の連れてきた3人の作業員が優秀で、ヘアーシュシュが多く売れたので父は私に商才を感じたそうだ。 私はこのお金と銀行にある貯金で来るべき来年の気候異常に備えなければならない。
父は大きなお金を金鉱で獲得したので、いよいよ最初発見した洞窟の金と砂金の採取に取り掛かるそうだ。 私は、今まで、真面目に仕事をしてくれた3人を今回の洞窟の責任者にしてほしいとお願いした。
あの洞窟は奥が崩れやすく、補強作業が必要だし、深堀作業の時は特に危険だ。
取り出した金鉱を鉛で溶かし、金を抽出するにも、熟練の技が必要になる。 3人の責任書が必要だ、と私は父に言った。 最初の洞窟もまだ金が掘れるので、何人かベテラン作業員が必要で募集したが、となりの子爵出の例の日記帳に乗っていた、名簿リストに載っていた名前の2人が応募してきて面接に私も同行させてもらった。
私は父にこの二人は絶対に雇わないで、とお願いした。 「この2人は優秀で現場をすぐ任せられるとおもったが、マリアンヌの人を選ぶ基準がよくわからない」と父に言われたが、私は悪人顔が嫌いと答えておいた。 これには父も笑っていたが、お父様、この二人は以前お父様の仕事を妨害した悪人ですよ、笑ってる場合ではありません、と私は思った。




