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【冤罪なし、反省ゼロ。溺愛の罰を召し上がれ】悪役令嬢、ヤンデレ王子に飼われ溶かされ壊される〜今さら謝られても、もう一生離さないよ〜  作者: 重井 愛理
二章

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19話:曝露の時

「まずは、君の着替えが必要だな」


 ルイスは、私を抱いて隠し通路を出ると、王宮のワードローブへと向かった。彼の背中には血が滲み、手の甲には擦り傷ができている。 


「私のことより、お怪我の治療を優先なさってください」


 私の願いは届かず、ワードローブのソファに下ろされた。

 彼は衣装棚に向かいながら、砂埃の付いた上着を脱ぎ捨てた。新しく身に着けた清潔なジャケットと礼装用の白手袋が傷を覆い隠す。


 私はソファから彼の横顔を見上げた。

 そこには、――王宮に連れられた日の夜、激しく押し倒された時のような――獰猛さも欲望もなく、ある種の執念だけが浮かんでいた。


「更衣は、女性にとって神聖な時間だ。だが、君は”それを使った”」


 彼は跪くと、私の左足のヒールを脱がせた。

 そして、罰を宣告した。

 

「もう君が自分の手でドレスの内側に触れることはない。これが三つ目の罰だ」


 常軌を逸した発言に、反射的に後ずさった。ソファの脚が床と不協和音を奏でる。両腕を胸の前で交差させ、自らの肩を抱きしめた。

 彼は、無理には距離を詰めず、ただ純白の手を私に差し伸べた。


 静かに時間が流れる。


 赤黒く染まった上着。部屋を満たす鉄の匂い。身体に残る温もり。

 どれほど多くから目を背ければ、彼の手を拒むことができただろうか。


 しかして、二つの掌は必然のように合わさった。



 彼は、私を立ち上がらせて背後に回った。耳元に唇を寄せ、囁く。


「では、始めようか」


 私の着ているエンパイアスタイルのドレスは、モスリンの生地で、胸下でサテンに切り替えがある簡素なデザインだ。デコルテのラインを美しく見せるため、襟元は極めて浅い。その近くの背中側、首の付け根に小さなホックが三つ並んでいる。


 彼は、私の肩からこぼれ落ちた髪の束に、そっと指を差し入れた。髪は背中まで垂れ、ドレスの留め具を隠している。ルイスは、柔らかな髪の重みを確かめるように掬い上げると、極めてゆっくりと、しかし容赦なく、それを片側の肩へと払いのけた。


 白く、無防備なうなじ。首筋から付け根の中心線にかけての肌が、露わになる。

 隠されていた肌が大気に晒されたことで、背中に寒気が走る。私が身をすくめる間にも、彼の指先は肌を掠め、留め具の起点を探っていた。


 そして、彼の長い指の腹が、襟ぐりの縁にあるホックを捉えた。


 カチリ、カチリと、金属の乾いた音が静寂を破る。その音は、まるで鍵を解錠するときのような、私の拘束が解かれていく始まりの合図のようだった。

 ホックが全て外れると、背中を覆っていたモスリンがわずかに弛緩し、肌との隙間に風が流れ込んだ。あるいは、風ではなく、彼の吐息だったのかもしれない。



 彼は躊躇なく、更に下へと意識を集中させた。

 次に触れたのは、ドレスの脊柱に沿って並ぶ、細かな包みボタン。一つ、また一つと、規則正しいリズムで留め具を開放していく。ドレスを傷つけまいとする細心の注意と、支配欲に満ちた狂気が、同時に脳を揺らし、私の羞恥心を激しく煽る。


 やがて、胸下のハイウエストラインを越えて、背中側の留め具が全て外された。

 瞬間、ドレス全体を支えていた構造が解放される。モスリンの上身頃と、サテンのスカートがゆるりと広がった。密着していた布地が、不安定な波紋を描きながら肌から離れようとする。


 ルイスは私の二の腕に、熱を帯びた手袋を載せた。


「アリエル。腕を上げて」


 それは、命令だった。私は顔を伏せ、屈辱に耐えながら、望まれるままに片腕を上げた。

 彼は、モスリンの肩口を優しく持ち上げると、その薄い生地を私の腕から滑り落とさせた。片袖が腕から抜けたことで、上身頃が胸元からはがれる。シュミーズの肩ひもが顔を覗かせる。


 もう片方の袖からも腕を抜いた時、ドレスは、自重に任せて、さらさらと音もなく床に沈んでいった。それは、降伏の証となって足元に堆積した。


 私は、ドレスの輪から、震える足先を隠すように片足ずつ抜き去った。


 今私が身に纏っているのは、肌着である麻地のシュミーズ一枚。淡い青色で胸元と下半身こそ覆われているものの、身体の曲線が布越しに明確に浮かび上がる。


 不意に背後から息遣いが聞こえなくなっていることに気づく。彼の視線は、シュミーズの奥、肌よりももっと奥、私の存在そのものに釘付けになっていた。

 灼けつくような視線と彼に剥かれたという事実に、私は悶え白い肌を紅潮させた。


「無垢な陶器のようだ……。君が世界に生まれたこと自体、奇跡と言っていい」


 彼は、私の肩から指先までを、その感触を刻みこむように時間をかけて辿った。手袋から伝わる体温に甘く蕩けそうになる。



 暫くして、肌着に汚れがないことを確かめると、彼は衣装棚に向かった。


「さて、アリエル。僕は着付けの知識は持ち合わせていない。君が教えてくれないか?」


 まな板の上の鯉に調理方法を尋ねるような残酷な問いかけ。


「私が……手ほどきして差し上げます」


 彼はひどい。

 だって、私の身体は、じんじんと疼いている。この場で食い尽くされることを、期待してしまっている。


 ルイスは満足げに唇の端を吊り上げ、衣装棚から取り出した一着を広げた。

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