表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/165

第一精霊研究所


「ここが、第一精霊研究所か」


 フィナが早速、本棚に置いたあったファイルに手をかける。


「校内に研究所は三カ所あるのですけど、わたくしはですね、ここで精霊について勉強をしていました」


 セレネはそう告げると、フィナが持っているものとは別の資料に手をかける。

 ここで、先ほどの戦闘を振り返る。


 研究所での待ち伏せ。

 紺色の紐に、文字が擦れた名札。

 メルヘンマトンになっていた担当教員が、セレネの先生であったことに、私は心苦しくなりそうだ。


「ここには、どんな資料があるのですか?」


 この場でひとり、三角座りして気を休めているところ申し訳ないのだけど、セレネに尋ねた。


「第一精霊研究所では、小さめの精霊についての、たくさんの研究資料が管理されています。大精霊のことは、もうご存知ですよね?」


 私とフィナは、その場で頷く。


「大精霊については、各国が協力して研究されていきましたが、小さい精霊までなかなか研究されなかった。この世界には、そういう歴史があります」

「何故、大精霊しか研究されなかったのですか?」

「すべては利益があるかどうか。各国の代表は、それだけで判断されておられました」

「ふむ……酷い話だ」

「フィナの言った通り、そう思いますね」

「大精霊の研究が進み、小さい精霊の存在があやふやにされつつあった。そんなある日、各国の代表が一斉に後継者へ引き継ぐタイミングが訪れたのです」

「後継者に引き継ぐ……?」


 フィナは首を傾げた。

 そこまで悩まなくても……推測できなければ難しいか……。


 各国の代表が一斉に後継者に引き続ぐってことは、現実的ではない。でも、起きてしまった。

 それを起こせるのは、アップデート。もしかしたら、シクスオのサービス開始を意味しているのかもしれない。

 そう推測出来れば、答えは簡単だ。後継者はシクスオ運営側の者という結び付けが可能となる。

 ギルドが世界に六か所あって、それぞれの国が治安を守るために活動している。

 シクスオには国王が存在しなくて、ギルドが世界の管理をしているのだから、そう考えるのが妥当だと思うわけで……。


 では、各国の代表とは?

 流石に、精霊研究所でそのような資料は保管されていないだろう。


 もし考えられるとしたら、タイトルくらいしか。


 ……うん、何もわからない。

 いまはまだ、誰も知ることができないだけかも。


「表舞台から降りた元代表たちは、蓄えていた資金を使って設立しました。クローニア学園を」


 セレネは語るのをやめない。

 この学園が誕生した経緯を――。そこから、小さい精霊の研究が始まったことを――。


「それで、竜の宝とは」


 フィナが、セレネに問いかける。


「これまでに、モンスターが何度も口にされてましたね……。そうですね、お二人さんに、そろそろ話さないといけません」


 セレネは、持っていた資料の最後となるページを開けていた。


「竜の宝とは、賢者の石のことです」


「なるほど、賢者の石……」

「伝説のアイテムじゃないか!」


 資料をじまじまみているフィナは、開いた口が塞がらない。


「賢者の石は、各国の代表が旅をしていた頃に、名前のわからないモンスターからドロップしたお宝であり、クローニア学園での研究を支えてきた大切なものだと教わりました。学内では、賢者の石を用いた実験が積極的に行わていましたが……」

「モンスターの襲撃か?」

「そうです。モンスターとの紛争は、クローニア学園を中心として、これまでに何度も起こきてきたと授業で学んでいます」


「あれっ……?」

「パルトラさん、でしたっけ。どうされました?」


「襲撃は一度ではなかったの?」

「そうですね。前回の襲撃時、わたくしはまだ入学していなかったので、詳しくは存じないのですが……。今回は紛れもなく、歴代でもトップクラスに最悪だと呼べるくらいには、甚大な被害をもたらしていますね」


「セレネさんは、入学していない。ね……」


 この場で立ち上がった私は、セレネが開けている資料に目を通しにいく。


 賢者の石は紛れもない、レアアイテム。その中でも特に入手するのは最難関とも言えるだろう。

 竜の宝と言ってる辺り、ドロップできるモンスターはドラゴン系になると思う。


 そんなレアアイテムを巡っての争い。


 どのみち、モンスターと人間が、対立してしまうのは仕方ないか。

 賢者の石という、存在しているだけで、無限の可能性を信じてしまう魅力があるのだから。


「次は……というか……賢者の石があるところに案内してもらえませんか?」


 セレネに、ひとつのお願いを持ち掛ける。

 これは賭けだ。私が強い、ただそれだけで。


 賢者の石が仮にあるとして、この紛争を終わらせることができるというのなら、私が賢者の石に触れることが最も最善手である。


 エネミースコアが必要なら、いくらでも払ってあげる。


 私自身は、そうわかりきっていた。

 但し、選択できる行動の中で、もっとも過酷な道でもある。


「それは……たしかに知っているけれど……」


 セレネは、拒絶反応をみせていた。


「あのですね、厳重なセキュリティが施されていて」


 それもそうだ。クローニア学園での研究を支えてきたレアアイテムなのだから、そんなに容易く触れることのできないものでしょうし。


「あたしには理解しがたいが、そこをなんとか頼む」


 フィナは跪いていた。

 そこから、全身を使った全力全開の、土下座。


 私も、フィナみたいにお願いプッシュしようかな……。

 やっぱり土下座するする度胸はないから、別に口だけでよいか。


「お願いします、セレネさん!」


「うーん……わかりました。そこまで仰るというのなら」


 セレネは、研究所内にある本棚の側面を触り始めた。


「たしかこの辺に……」


 セレネは手先で何かを探していると、カチッと音が鳴る。

 すると、本棚が下に沈んでいく。


「これは……隠し通路ですね!」


 壁と床、全面が銀色に光る通路を目の当たりした私は、とてもワクワクした気分になる。


「それで、賢者の石がこの先にあるのですか?」


「はい。厳重といっても、生徒や先生が使うのですから、手の届くところに隠されている。という表現が正しいでしょう」


 セレネは、この道を何度も通ったことがある。

 胸を張っているということは、本当にこの先に、賢者の石があるのだろう。


「フィナ、行きますよ?」


「ああ。この資料は、そのままでいっか……」


 フィナは、手に持っている資料を置いて、ついていくことにした。


お読みいただき、ありがとうございます!!

面白いと思いましたら、感想、ブックマーク、評価をお願いします。作者の励みにもなるので何卒よろしくお願いします!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ