ベヒュモのフィールドを駆け巡れ
ところで、何か重要なことを忘れている気がする。
そうだ……コカトリスについて行く上で重要なことがひとつあった。
「ギベオさんが管理するダンジョンって、ここからだいぶ距離があったような……」
「えへへ……それならに及びませんよ。つい最近ですが、ギベオ様は自らが管理しているダンジョンの位置変更をなされていましたので」
「それなら思ったより近くなっているのかな。でも、今日は人数もいるし……」
「ティル、居るよ。パルトラちゃんが困る顔、あんまりみたくない気分かも?」
真っ先に申し出てきたのは、私の背後にいるティルティだった。
私とティルティ、あとはキラリが発動中である宝石騎士モードの力を借りれば、現在の人数でも一緒に飛行しながらフィールドを駆け巡ることは可能だろう。
「その案に乗るよ、ティルティちゃん!」
私は早速、天使の羽を広げて飛行する準備をした。
「ティルの、一番乗りー!」
「あれ、ティルティちゃん!?」
ティルティは、アマノハクをお姫様抱っこした態勢を取りつつ勢いよく飛んでいく。
「まぁ、ついて行くわね」
キラリもティルティに続くような形で、飛んで行ってしまった。
ネフティマと手をつないだ状態で。
「えへへ……皆様に置いて行かれましたね」
「うん、そうだね……。とりあえず見失わないようにしないといけない気がするけど……」
「ひとまずパルトラ様の杖の上にのせてもらっても構わないですか?」
「えっと、別に良いけど」
私はエグゼクトロットを、低い姿勢でシクスに向けた。
すると、シクスはエグゼクトロットの上に座り込んできた。
「さぁ、行きましょう!」
「シクスちゃん……この態勢で、なの?」
質問すると、シクスはすぐに頷いてきた。
「えへへ……ごーですよ!」
「はい。わかりました……」
渋々だけど、私は飛ぶことにした。
エグゼクトロットをあらぬ方向に向けているので、ちょっとばかり横が気になってしまう。
「ところでパルトラ様、メイカ様が現在持っているという聖女の力のこと、どのくらい把握されていますでしょうか?」
「それは……メイカちゃんとは全然会ってないから……」
私は、聖女のことについて疎いのであった。
実際には、私自身がダンジョンを作るのに夢中になることが多く、メイカとの接点を持たなかった。
「では、少しずつパルトラ様とお話しをしましょうか」
シクスは自身が持っている本をパラパラとめくると、赤くて丸い球体を六つ生み出した。
「えへへ……まずは何処からにしましょうか。ジョーカーお兄様がメイカを保護したところからが話しやすいですかね?」
「まぁ、その辺だったら……」
シクスの兄であるお方が何年ぶりかにログインして間もないタイミング。私のスキル調査をしていたので、前後の時期は微妙に覚えているかもしれない。
「最初からですが、メイカは聖女の自覚がありました。当人は聖女候補と仰っておりましたが……」
「メイカにはレアスキル、導きの蝶があった。ナビゲート系スキルの最上位と呼べるものだったかな?」
「そそ、そうです。聖女でしたら回復魔法が鉄板なのでしょうけど……王道パターンじゃない故に、周りの者が聖女という認識を持たなかったですね」
「シクスちゃんがそれ言いますか?」
「えへへ……?」
「でもなんで、シクスちゃんはメイカちゃんのことを聖女と呼んでいるのですか?」
「その答えは割とシンプルです。メイカ様はシクスオの世界を巡り続けて、レアスキルを聖女と呼べる決定的なモノに変えたみたいです」
「レアスキルを変更させる……」
「恐らくですが、パルトラ様にも心当たりがあるのでは?」
「天翔る銀河の創造天使……」
私は、スキルの名前をすぐ口に出した。
そしたら急に胸騒ぎしはじめる。
そういえば、このレアスキルって……非常に難しい条件を満たして獲得したんだっけ。
セレネが管理するダンジョンに潜り、最深部でダンジョンクラフトのスキルを使用しようとして、警告文が流れて。
勢いで壊したら……進化して……。
ふと、女神ネフティマが言ったことを思い出す。
『シックス・スターズ・オンラインには星読みシステムというものがあります』というもの。
空白の泉で未来を少し見ることができて、時には運命をちょっとだけ捻じ曲げることもある。
ただスキルの進化は、このシステムで見えないはずだけど……。
これまでの私の行動が、シクスオの世界に影響をもたらしていたのは間違いない。
レアスキルの進化なんて珍しい現象も、元を辿ると星読みシステムによって無意識に生み出しているといっても過言ではない。
それによって……もしもだけど、メイカの身に何か大変なことが起きていたとしたら。
私は何処かで、選択肢を間違えていた……?
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