ダンジョンの防衛ライン
「パルトラ様、少し深く考え過ぎてませんか?」
「うーんと……シクスちゃんのいうことは合ってると思う……かも……」
息を吞んだ私は、シクスの顔をチラッとみる。
シクスは至って真顔だった。
ただ進むべき方向を見つめながら、集中力を高めていた。
ここから数分間、シクスと会話せず私は飛び続けた。
やがて、ギベオが管理するダンジョンが見えてくる。
地下の方向へ進むことができる、古代遺跡の入り口のような見た目をしていたギベオのダンジョンの『荒れ狂う大地の巣窟』の周辺には、たくさんの冒険者たちが集まっていた。
緊急事態なのか、まるで防衛ラインでも張っている様子であった。
その冒険者に混ざるような形で、ティルティたちがいた。
「ボスモンスターのコアを守れ。得体の知れない存在が、あそこにいるぞ……!」
ギベオが指揮を取ると、皆が武器を構えた。
私もとりあえず前方を注意して……えっ、あれは……なに……?
冒険者たちが気にしている方向、頭をあげた私目と鼻の先にあったのは、白く腐敗した空飛ぶお城だった。
「えへへ……あれはイレギュラーなダンジョンですね。あの城のなかにメイカ様がいると予想します」
「メイカちゃんがこの先に……」
「地上にいるギベオ様たちが、注意を引きつけてくれそうな気がします」
「それじゃあ、私たちはこのまま突撃だね」
私は速度を上げて、薄っすらみえているお城の扉に突っ込んでいく。
「スキルを発動します。エンジェルディザスター!」
シクスがスキル名を宣言すると、シクスの手元に浮遊していた六つある赤い球体の光が一斉に扉の方向へ飛んで行った。
その球体が城の扉にぶち当たると、パカっと音がして大きく開いた。
「あの扉、モンスターみたいですね」
「モンスター判定?」
「えへへ……。当然ですが、シクスオに未実装なので……モンスター追加の検討をしなくちゃですね」
どことなくお気楽なシクスだったが、エグゼクトロットをぎゅっと握りしめる。
恐らくは、扉を通り越すためだろう。
勢いだけついている私から振り落とされては、元も子もないからだ。
「シクスちゃん。通り抜け、出来たね」
城の扉を超えたところで、私は飛ぶ速度を緩めた。
そのまま両足を着地させたら、すぐに周囲を見渡してみる。
床に白黒の網目模様が入っていること以外は、至って普通のお城――。
「あっ、モンスターが出てきた」
地面から巻き上がる煙から見えたのは、緑っぽくも見える黒い人の形をしたモンスターだった。
モンスターの名前は、クロニクルナイトと表示されていた。
それが三体もいる。私のダンジョンで徘徊させているどのモンスターよりも見た目が強そうだ。
「さてと……シクスちゃん、一緒に戦うよっ!」
「すみません。いまからジョーカーお兄様と連絡を取り合うので、しばらくパルトラ様ひとりで戦って頂けませんか?」
「う、うん。それなら私一人で戦うね」
私はエグゼクトロットをくるりと回して、自身の手の感覚を確かめた。
クロニクルナイトは私ひとりでも十分倒せると思える。けど……シクスにとっては、何か心当たりでもあるのだろうか。
そこが少しばかり気になってしまう。
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