ダンジョンと謎の手
「ところで、パルトラちゃん。今日は配信しないんだ?」
「えっと……思ったより伏せたいことが多くて」
「ティル、アーカイブだけどパルトラちゃんの配信を楽しくみてるもん。たからね、今日もしてくれると嬉しい」
「えっと、そういわれたら……仕方ないね」
ティルティに勧められた私は、配信用のVRカメラを起動させる。
「さてと、急遽に近いけど……配信はじめまーあっ!」
急にダンジョンが大きく揺れ始めた。
「なに、これ……!」
私はその場でうずくまり、頭を隠す仕草をする。
ダンジョン内に、強い風当たりが襲いかかっていた。
まるで台風のような揺れがおさまるまで、ただひたすらに耐える。
「……大丈夫かな?」
風が止み、揺れが止まったことを確認すると、私は周囲を見渡した。
新しく作成したダンジョンの地形に大きな変化はみられないものの、不気味なくらいに静まり返っていた。
「ティルティちゃん?」
ティルティの姿が見当たらなかったが、それだけじゃない。
フィースペード、キラリ、ネフティマ、アマノハクも私の視界からいなくなっていた。
「みんなどこにいったのかな。あと配信は……」
:無事かー
:なにかあった?
:画面すっごい揺れてたね
ひとまず配信ログは正常に動いていた。
「私は平気だけど、ダンジョン内が大きく揺れてみんなが……」
もぬけの殻といっても、差し支えなさそうだった。
「えっと、いますぐ確認しないといけないことがあって……」
:お時間かかることか
:いいよー
リスナーは、心優しく待ってくれるみたいだ。
:ルト嬢、いまから何するの?
:わかんない
:知らん
:けど配信は楽しむ
配信ログは荒れていないので、ひとまず状況の理解をしてほしい。
そう思いながら、口を動かす。
「リスナーさんに簡単に説明するとね、このダンジョンに特別なコアを置いているのだけど、どうなってるのかなと……」
私は、ムグルルコアを設置している場所へと急ぐ。
「ムグルルコアは……」
私は息を吞む。
設置エリアで何も発見できない。ムグルルコアが、このダンジョンから持ち出されているに違いなかった。
「まずやるべきことは……」
:誰か倒れてる
:ほんとだ
:画面の右奥か
「倒れてる?」
リスナーの指示に従って右方向へ視線を動かすと、仰向けに倒れているアマノハクがいた。
:ひとまず確認か?
「そ、そうだね」
私はアマノハクに近づくと、アマノハクが目を回していた。
「みゅーっ……」
「大丈夫かな?」
アマノハクの体を起こして、肩を思いっきり揺らす。
「て、手がぁ……」
「私の手?」
「おっきな手が、コアをもちさって……みゅ……」
アマノハクが、大きく首を振る。
「何があったのかな?」
「みゅー。それは……」
アマノハクが黙り込み、私の背後を気にし始めた。
「後ろの方が」
「後ろ?」
私が振り返ると、白い本を持った赤毛の髪の美少女が立っていた。
「えへへ……すみません、緊急事態です!」
「ノ……じゃなくて、シクスちゃん……? なんでここに?」
「そうですね……パルトラ様に告げますよ。先程、シクスオの世界に大きな異常が発生してしまいましたので、現在トルード及び魔界ダンジョンにいるログアウトできる者を、一斉に強制ログアウトさせました」
「ログアウト……大きな異常……?」
「アマノハク様は既にみられていると思いますが……四つある魔神のコアがすべて取られてしまいました。アマノハク様も見られた大きな手は、メイカ様を中心に動かされていた痕跡があります」
「メイカちゃんが……コアアイテムを盗んだ?」
「その辺りの真偽は調査中になります」
「なるほど……いま私に出来そうなことは……」
私はフレンド登録している方の一覧表を開けた。
そこにメイカの名前がある。
メイカの現在地は、べヒュモと表示されていた。
メイカ自身が六カ国ダンジョンマスター交友会に参加していた覚えならあるが……それ以降、一度もメイカの姿をみていなかった。
それからのメイカは冒険者として、シクスオの世界を旅しているという噂を知っているけど……。
どうして、魔神のコアアイテムなんかを盗んでいったのかな……?
今回もお読みいただき、ありがとうございます。
第7章スタートです!!
続きを書いていきますので、よろしくお願いします!




