キラリは新たな変身をする
「ダンジョンに、道が増えてるわ」
キラリが指摘する方向へ目をやると、神秘の地下道に続く狭い道があった。
「ここから先へ、行きましょう!」
声掛けした私が先頭に立って、開発途中のダンジョンを進む。
しばらくは植物が生い茂っている壁が続くが、ダンジョンのエリアが変わる境目からは真っ白な壁となっていた。
そのまま更に前進すると、ムグルルコアが見えている十字路にたどり着いた。
「壁がまだ殺風景なのが、気にはなりますが……まずは、あれですね」
私は、十字路から左右に続く道を気にしていた。
左右の道を進むと、ダンジョンの立体マップで水玉模様のようにボコボコになっていた箇所へとたどり着く。
「とりあえず、左に行きます」
ここは、やや慎重に行動したくなった。
ムグルル以外のモンスターは今のところ設置していないので、一見何もない通路を進むことになるのだが……。
「えっと、なるほどです?」
右方向への曲がり角を曲がった瞬間、私は足を止めてしまった。
白い通路がまっすぐに続いているのだが、壁の一部分が黒くなっていた。
それだけでなく、恐怖のエネルギーと思われる黒いシャボン玉がたくさん、壁を伝って落下していた。
落下しているということは、シャボン玉のある場所には足場がない。
落ちたらリスポーン間違いなしの、特殊なギミックということか。
黒いシャボン玉はダンジョンの内側で回転している。
そう思えたのは、通路の端に寄ったら風を感じたからだ。
「みゅー。アマノハクの言った通り、ダンジョンに問題はないのです」
「そうだね。けど、見栄えというか……世界樹って暗いダンジョンという印象が、あまりないというか」
「みゅー。それは一理あるような気がするのです。でも、それならどうアレンジすべきだったのでしょうか」
「要は、色を変えたら良いのではないか。それなら丁度良いアイテムがあるし、適任者も揃っている」
何かを閃いたフィースペードが、キラリに対してアイテムを渡した。
「これって、試作品かしら?」
「あたしと同じような変身アイテムだ、それを使うとよい。あたしが聞いた話だと、それには恐怖のエネルギーというものを浄化できる能力が備わっているみたいなんだ」
「運営さんからのお墨付き、ねぇ」
「どうしたんだ? 使わないのか」
「そもそもの話、恐怖のエネルギーを浄化するというイメージがないのよ。こういう案件は、ジョーカーのお兄さんをはじめとした運営の者に頼りっきりにしたいと思っているのだけど」
「拒絶か、ふむ……」
フィースペードの視線が私に向いた。
これは……助けを求めているのかもしれない。
「キラリさんが変身するところ、見てみたいです。あと恐怖のエネルギーは、ちょっと私も苦手なので……お願いします!」
「そこまで言うのなら、仕方ないわ。変身してあげる」
納得した様子のキラリは、フィースペードから渡されていたアイテム――エメラルドの指輪を取り出すと、両手ですぐに握りしめた。
「解き放って。エメラルドの宝石星よ」
言葉を発すると、キラリの身体に緑の流れ星が纏わりついた。
それから間もなくして、キラリを取り囲むエメラルドの輝きが、周囲の視界を遮るくらいには輝いた。
キラリの宝石騎士モードは、いったいどうなるのか。
私自身が気になりだしたところで、眩い光が縮小していった。
「これが、宝石騎士モードね」
キラリは白いロンググローブがはめられた両手をくるくると回してから、自身の新たな衣装に目を向ける。
エメラルド色の制服に、黄色いヒラヒラがついているスカート。
見た目は想像以上に華やかだった。あたまにエメラルド色のリボンもついており、キュートらしさも全面に出ている。
ひとことで述べるとしたら、妖精アイドルという印象を受けた。
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