追い込まれるヴァルハリーザたち
『ぐナッ!』
ピリコBは踏ん張りができず高く飛ばされた。
落下した際のダメージも考慮すると相当な深手を負うこと間違いない。このまま私が撃墜させればピリコBは機能不全に陥るのだろうが、アマノハクに任せるつもりでいた。
私は追撃するよりも、目の前の敵に集中したかった。
ピリコCがたてる足音が大きくなってきたのだ。
ただ、自分自身に言えることがある。
分身でも手加減しません。
エグゼクトロットの先端で弧を描き、ピリコCが持つ短剣をいとも容易くはじいた。
『ナッ!』
ピリコCにとっては、予期せぬ事態。
持っている武器がなくなれば、すぐに機能不全に陥ってしまう。
シクスオのNPCって、そういう風に設定されていることが多い。
今回も例外ではなかった。
戦意喪失したNPCの敵キャラは、もうただのサンドバッグ。
あとは私が確実に倒すのみ。
エグゼクトロットを縦に振ると、ピリコCの頭部に直撃した。
『やられた、ナッ……』
ピリコCが消失した。
ドロップアイテムは、なし。
流石に分身だからドロップ確率は渋いのかもしれない。
アマノハクの立ち位置から、炎竜の顔が出てきて、無防備なピリコBを襲った。
「もう分身が、やられてしまったナッ」
「パルトラちゃんによそ見していると、ティルにやられちゃうよ?」
「くっ……それくらい、わかっているナッ」
NPCの分身を二つ失ったピリコは、勝負を焦っていた。
立ち位置としては、ティルティと距離を取れているのだが……。
相変わらずピリコにとって不利な状況が続く。
「そろそろ、ティルが終わらせるよ」
ティルティが武器となる傘をピリコに向けると、青い球体を出現させた。
あの動作は……魔力をひとつに集めている。
ティルティは巨大な極太レーザーでも放つつもりなのだろう。
「このくらいかな。ティル、待てないよ」
ティルティの機嫌次第なのだろうか、思ったよりレーザーの発射が早かった。
そのレーザーはピリコに向かって飛んでいく。
「ここまでかナッ。ごめん、ヴァルハリーザ……」
「それは、させないぞっ!」
ピリコの前に割り込んでいくのは、ヴァルハリーザ。
黒い剣を使い、防御に徹してこの場をしのぐ。
「ヴァルハリーザ?」
「おう、無事か」
「まだ……大丈夫だ、ナッ」
ヴァルハリーザの助けが入って、リスポーンを逃れたピリコ。
瞬く間に、薄紫の斬撃が飛んでいく。
ここはヴァルハリーザが地面に転がり込む形で回避した。
「くそっ、休んでいる暇はないってか」
「それもそうだナッ」
ヴァルハリーザとピリコが立ち上がると、
「ほう、いまのも避けたか」
「ちっ……。なら……これだっ!」
ヴァルハリーザとフィースペードが互いに右足を踏み込むと、正面激突した。
ヴァルハリーザの黒い剣と、聖剣ティルザードが交わる音が聞こえる。
とても鈍く、重たかった。
ヴァルハリーザは歯を食いしばり、力でフィースペードを打ち負かそうとした。
「これで、どうだっ!」
「ふっ、SSRの魔剣を手にしてその程度か」
フィースペードは鼻で笑った。
ヴァルハリーザに焦りはないが、ヴァルハリーザたちにとっては非常によくない状況であることは理解していた。
ぐいーっと、私の服を引っ張る手があった。
「みゅー。魔力を少し渡します」
振り向いた私は、アマノハクが両目を閉じていることに気づく。
魔力を、私に向けて注いでいた。
「えっと……私は何をしたら良いの?」
「みゅー。ここはやはり、あのエグゼクトロットでの必殺技の準備をはじめる時ではないかと思いまして」
「必殺技、ここでやるの……?」
私が困惑するも、アマノハクは何度も縦に頷く。
「見せ物というほどでもないけど、仕方ないかな……」
準備をするには、良きタイミングであること間違いなし。
フィースペードとティルティに意識が向けられている今がチャンスだ。
私はアマノハクから渡された魔力を使い、エグゼクトロットの先端を青く光らせる。
「……準備できたかな。こっちの様子には、なさそうかな」
苦戦を強いられているヴァルハリーザたちは、私のことは見ていない。
「そろそろ行きますか」
赤い堕天使の翼を大きく広げた私は、ボスフロアの中で高く浮上していった。
エグゼクトロットの先端をヴァルハリーザに向けると、大きく右手を引いて魔法の弓を形成する。
「全身全霊で解き放て、エグゼクトアローっ!」
私は弓を引く動作をした。
エグゼクトロットが発射されると、青白い矢となって。
強大な爆発を引き起こした。
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