分身するピリコ
「窮屈さを観測。敵の数を増やす未来を描くことを提案します」
大胆に姿を見せたネフティマは、身に覚えのない白い短剣を両手で優しく包み込んでいた。
「ネフティマちゃん……?」
「これは、持ち主の分身を増やすことが可能な武器。とアレイさんが申しております」
ネフティマは、白い短剣の持ち手をピリコに向けていた。
ピリコに分身を作ってもらえれば、私の窮屈さを解決できると踏んでいるのかもしれない。
ピリコにとっては贅沢な選択肢を取れる半面、受け入れてくれるかは不明だ。だが、この戦闘を楽しめるようになる可能性の芽は潰したくはない。
私は静かに頷くと、ネフティマはピリコの動きを観測し始めた。
的確なタイミングを見計らって、ピリコに武器を投げ渡すつもりでそうだった。
上手くピリコの幻影を生み出せば、私も戦闘に参戦できる。
「みゅー。その短剣、魔方陣が刻まれています?」
アマノハクが指摘してきた。
「そうだけど」
否定しないネフティマは、ピリコに向かって白い短剣を投げた。
白い短剣は、刃の部分がこちらを向いている。
「なんだナッ!」
ティルティとの戦闘中だったピリコは驚いて、白い短剣を避けた。
白い短剣が地面を転がり、誤作動なのか地面に小さい魔方陣が展開された。
「あの、ピリコさんは避けないで拾ってもらえませんか」
「急にどうしたナッ?」
半信半疑に白い短剣をみたピリコは、しぶしぶ拾う決意をする。
「ティルにとって面白いことがはじまるの?」
「それは……わからないナッ。詳しいことは武器をこっちに投げ込んだヤツにら聞いてみたら良いナッ!」
ピリコの口調が、半分投げやりになっていた。
ただ、ピリコはティルティに押され気味な現状に不満を持っていた。
一対一の状況でありながら、ピリコは防戦一方だったのだ。
「これ拾って、変なことが起きても知らないけどナッ……!」
ピリコは呆れながら白い短剣を拾うと、魔方が発動した。
ピリコのアバターがぼやけて、分身がひとつ、ふたつ。
本体含めてピリコの姿が三つになった。
「なんだナッ?」
ピリコは驚いていた。
ただ、ふたつの分身はピリコの姿をみずに、私とアマノハクに注目していた。
『はじめるよ、ナッ』
『行くよ、ナッ』
なんの迷いもなく、こちらに向かってくる。
ピリコの分身というより、ピリコの見た目をしたNPCであることがすぐに分かった。
とりあえず、分身となるピリコに区別をつけてみる。
本人はピリコAとし、分身その1をピリコB、分身その2をピリコCに決めた。
ピリコBとピリコCに僅かながら違いもあった。
ピリコBは移動速度が速めで、ピリコCは持っている短剣のリーチが少し長い気がした。
「あれって勝手に動く敵キャラかナッ? どっちにしろ手数が増えたようなものだから助かるかナッ……」
「そうだと良いね。ただね、パルトラちゃんは負けないよ? ティルにはわかる」
ティルティは、私の戦闘力に対して信頼を持っていた。
「さてと、ティルとのお遊びの続きをしようね」
「うっ……そ、そうだナッ!」
ピリコは引き下がるわけにはいかなかった。
その姿を見届けた私は、急接近してきたピリコBに向かってエグゼクトロットを突き出してみた。
『それは甘いナッ』
ピリコBがジャンプして、私の頭上を軽々と越えてきた。
でも私の後ろにいる、アマノハクが狙いを定めていた。
この場が吹き荒れそうな気配が、漂いはじめている。
「風の悪戯よ、悪しき影を迷宮の果てまで引き飛ばしたまえ」
アマノハクの手から、凄まじい風圧が解き放たれる。
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