ヴァルハリーザとの腕試し
「話は終わったか? それとも、パルトラは戦いたいのか?」
腕を組んでいるフィースペードの言葉が、私の耳元に届いた。
「えっと、そういう気分は……」
「オレは戦いたいな。オレこそが最強の元魔王であると証明しなくてはならない」
「ヴァルハリーザ、無茶は禁物ナッ!」
「私も戦いたいですが、キラリと戦ったばかりだし……」
「パルトラ、向こうに戦う意思があるが……。そうだ、ちょっと待ってくれ」
フィースペードは何か妙案でも思いついたのか、ヴァルハリーザに瓶のアイテムを渡す。
「それで回復させてやろう」
「おう、サンキューな」
ヴァルハリーザはお礼を伝えると、すぐにアイテムを使用した。
ヴァルハリーザとピリコの傷が癒えていく。
それと同時に、キラリから私の元にメッセージが入ってくるが、いま目を通せそうな雰囲気ではなかった。
真剣な戦闘が行われる前の、緊迫した空気に私は飲み込まれていた。
ヴァルハリーザが回復しても七割くらいってところだけど、それでも事足りるのだろうか。
ヴァルハリーザは自信に満ちていた。
「よし、これで準備万端だ」
私たちと少しだけ距離を取るヴァルハリーザは、黒い片手剣を構えなおす。
ピリコはその気にではないけど、ヴァルハリーザのやる気を見てため息を吐く。
「ヴァルハリーザは、仕方ないなぁ。ここは付き合ってあげるナッ」
ピリコは両手に短剣を握りしめると、空を切って突撃してきた。
……いや、肉眼では追いつけない速度だ。
私は慌ててエグゼクトロットを構えると、ピリコが目の前にいた。
「これを止めるとは、やっぱりなかなかやるナッ!」
ピリコの攻撃は間違いなく、私の首元を狙っていた。
ただ、手探り感であることは否めない。
戦況でみても、数はこちらのほうが有利ともいえる。
「おう。まずはパルトラから集中的に……おおっと!」
ヴァルハリーザが慌てて、でんぐり返しをした。
ヴァルハリーザがいた場所に向かって、薄紫の斬撃が放たれて地面をえぐる。
「ふむ、避けたか」
冷静さが出ているフィースペードは、攻撃を当てれなくて残念がる。
「おう、おっかねー攻撃だ。オレ出なければリスポーンしてただろう」
「ダンジョンマスターを倒しただけのことはあるか。そしたら、新しい目玉システムである宝石騎士モードを最大限活かせるかもしれない。今日はその試運転といこうか」
フィースペードが何度も斬撃を飛ばし、ヴァルハリーザが後方へと避けていく。
斬撃の威力、何度みてもおっかないレベル。
「おう。……新しいシステム? それ本気で言っているのかっ?」
「そういったはずだか」
「反則級だろ。……オレでなければ、瞬殺されてしまいそうだ」
戸惑うヴァルハリーザは、腰を抜かしていた。
「避け続ける心配はいらないと思うけど。あたしは既に無敵モードは解除してある」
「おう、というか……そういうことじゃねーって……!」
ヴァルハリーザの声が少し小さく聞こえる。
私との距離が、すっかり離れてしまっていた。
「ヴァルハリーザ、大丈夫なのかナッ!」
「えっと……フィーちゃんたちは、心配しなくても大丈夫そうですね。フィーちゃんが押し気味ではありますけど」
「ふぅ……それなら、って……本当にそうかナッ?」
ピリコはドン引きしている。
ヴァルハリーザが逃げ回るって相当珍しいことなのかもしれない。
「……ティルをよそ見すると、痛い目みるよ?」
ティルティの武器である傘が、ピリコの頭部を目掛けて降り降ろされる。
「はっ……!」
ピリコは私から離れるように動き、反射的によける。
「そういえばこっちは、一対一じゃなかったナッ……」
ピリコは、状況の悪さに焦りを覚える。
フィースペードと戦っているヴァルハリーザと違い、私とティルティ、そして後方にはアマノハクがいる。
流石にピリコひとりでは、三人を相手するのは厳しそうだ。
ピリコは、少しばかり頭を抱える。
「ティルと、もっと遊んで?」
「それくらい分かるつもりだナッ!」
ティルティとピリコが、武器を交える。
「あの、アマノハクさん。私たち、どうしましょうか」
「みゅー。後衛職でやることない場面なら、ひとまずは様子見です」
「……もっと、なんというか。なんかできない?」
「みゅー? パルトラさんに、そういわれても……」
「とりあえず、いつでも魔法を使えるように待機しておきますね」
「みゅー。それが良いと思います」
一対一の形が、ふたつ出来た状況。
それが、私とアマノハクを退屈にさせようとしていた。
……なんというか、知り合いとのバトルに対してもっとそわそわしたい気分である。
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