新たな変身システムのお披露目
「パルトラ。ムグルルコアのことは、聞かなかったことにする」
「そうしてもらえるとありがたいです。それで、フィーちゃんは私に何のご用で?」
「ああ、シクスオのバトルにかかわってくる新しい要素をみてもらいたいんだ。宝石覚醒スキルの応用みたいなもんだが……」
フィースペードは、手元にアメジストの輝きを持つ片手剣を持っていた。
どこからどうみても、聖剣ティルザードだった。
「フィーちゃん、その武器って」
「先日、ネフティマという女神からあたしに返却された」
「ふーん。フィーちゃんがSSR武器を取り戻したということは……」
「まぁ、新しい要素で必要になったからなんだろうな。この剣はあっても困りはしないか」
武器の返却に関しては、フィースペード自身は喜んではいなかった。
もっと喜んでも良かったのに……。
「それでフィーちゃん、新しい要素とは何ですか?」
「ああ、さっそくだがやってみる」
フィースペードが、持っている剣を強く握りしめながら口に出す。
「解き放て。アメジストの宝石星よ」
その言葉を聞いた瞬間から、フィースペードの前身が紫色に輝き始めていた。
大きなアメジストの宝石がフィースペードの目の前に出現し、周囲を少しずつ紫色の光で飲み込んでいく。
その後、フィースペードは無言で空いているほうの手を使って、宝石の表面に触れた。
これはおそらく、変身能力。
フィースペードの体がひと回り大きくなり、胸元が少しあいている薄い紫の鋼鉄の鎧が実体化していった。
まるで騎士のような見た目になってきた。
強そう、というよりかは……。
とても派手で目立ちそうな格好である。
「これが新しい変身システム、宝石騎士モードだ」
「宝石騎士モード?」
「ああ、そうだ。これも女神ネフティマの導きなのだろうか……」
フィースペードは、新しい要素に疑問視を抱いていた。
「さてと。しばらくお暇だから、パルトラの手伝いでもしてあげよう」
フィースペードが私に背を向けると、ギルドの出入口へと向かう。
「フィーちゃん……その格好で出歩くのです?」
「そうだが?」
「その、以前の……宝石覚醒スキルの際は忍びに似ていたから……目立つ格好はあまり好まないと思いまして」
「戦闘力が強化されているし、何も問題ないが」
「そうじゃなくって」
私が気になっていたのは、フィースペードの戦闘スタイルのことだ。
フィースペードは、器用な立ち回りで相手を翻弄するのが得意。
最前線で突っ張るようなスタイルの戦い方をもともと好まない。
そのことを私がよく知っていた。
「ああ、パルトラが気にしているのは戦闘での立ち回りか」
「そうです。フィーちゃんは最前線に立てるのか心配で……」
「たしかに最前線は難しいかもしれないが……そうだっ!」
フィースペードは、自身の胸元に手を当てる。
「材質を柔らかいものに出来るか……?」
フィースペードが願うと、再び衣装が光り出した。
気に入らなければ、衣装はすぐに再構築される。
今回は、より柔らかい素材のものになった。
デザインに変化はない。
「うん、軽くなった。これならどうだ?」
「フィーちゃんが動きやすいなら、それで良いと思います」
「パルトラ、ありがとう」
フィースペードがお礼を伝えると、そそくさとギルドから退出する。
「さてと、私も行きますか」
私もフィースペードに続いてギルドから出ようとしたら、ティルティに腕を掴まれる。
「フィースペードと名乗ってたの、不思議なのね。ティル、どこかで会ったことあるかも?」
「うーんと、現実世界でのフィーちゃんと会ったことあるならそれはそれで凄いことだと思うけど……」
「ティルはすぐには思い出せないかも」
「とりあえず、ここから出ましょう」
私はティルティを連れて、ギルドから退出する。
ティルティが、現実世界では病弱だったフィーちゃんに会ったことがある……?
私はティルティの発言に引っ掛かりを覚えるが、今のところ気にするほどでもなかった。
ギルドから出ると、神風の集落トルードの独特な雰囲気と呼ぶべき――世界樹の生命力を感じ取れた。
生い茂る緑の広間があり、大きな噴水からは清潔な水が溢れ出ている。
その噴水の傍で、フィースペードは空を見上げていた。
今回もお読みいただき、ありがとうございます!




