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ダンジョンで遊ぼう!! ~VRゲームの世界ですが、冒険者にいきなり襲われるのは嫌なので楽しくダンジョンを作りたいと思います~  作者: 愛原ひかな
第3.5章 記憶の探しもの

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疑いの瞳で見つめる


「こ、来ないで……」

『シャーッ!』


 青いヒョウ柄の蛇が、容赦なくかぶりつく。


 これがモンスター。本能のままに行動して、弱者に襲い掛かる。

 恐怖で足が硬直してしまった。思うように動かない。


「たすけ……て……」


 神経の奥深くにまで届いていそうな凍てつく冷たさを、嚙みつかれた部分から感じ取った。

 後ろから三人の声が聞こえているが、リリークランはパニックになって何を言っているのかよく分からない。


 自分って、やはり足手まといだったのか。

 探索を開始して早々にひとりぼっちになって、この不幸が降り注ぐ。

 それでも、ここはゲームの世界だから、現実世界での命は大丈夫だよね……?


「このっ、離れろ!」


 ジャックゲイルが裁ちばさみを振り上げて、青いヒョウ柄の蛇を遠くへ吹き飛ばした。

 青いヒョウ柄の蛇が星になって姿かたちが見えなくなっても、嚙みつかれて表面から凍てついた足はしばらく自由に動きそうにない。


「はぁ……ありがとうございます……」

「それよりも!」


 お礼を聞きもしないジャックゲイルは、怒り狂っていた。


「さっきの蛇、オマエのか?」

「はあ? なにを言っているんだ?」


 ジャックゲイルは、真っ先にルアーボを疑っていた。

 ルアーボの能力は蛇にまつわる何かである。それは、ルアーボの武器である長い棒を見れば一目瞭然だからだ。


 長い棒に巻き付いている蛇を使役すれば、リリークランを襲うのは容易。

 仮にそうだとしても、意図的に攻撃を仕掛ける理由なんてリリークランには心当たりがない。


「オマエが襲って、探索人数を意図的に減らす。今回の依頼の報酬は、総額が決まっていて山分けになっている話だったはずだ。もし独断で襲ったというのならば、いまここでオマエを消す」

「はあ? 頭がお花畑な面白い考えだな。今回のモンスターがもしそうだとして、どう指令を送るんだ?」

「スキルを使ったに決まってるだろ!」

「ふたりとも、頭をさげて」


 カラセナの冷静な言葉に、ジャックゲイルの体が反応する。


「ちっ……」


 武器を持っていない手で、ルアーボの頭を押さえつけた。

 その後、ジャックゲイル自身もその場にしゃがみ込む。


「カラセナさん……えっ?」


 リリークランの耳元を高速で何かが通り過ぎていく。


 鋭いハサミの先端が、ルアーボに目掛けて飛んできていたのだ。

 幸いにも、ルアーボの姿勢が低くなっていたので頭上を通り過ぎて難を逃れた。


「はぁ? いまのハサミはなんだよ!」

「それはこっちが知りたいが……」


 どう見ても大きな裁ちばさみ。しかも自覚をもって動くタイプ。

 普通の一般家庭にありがちな裁ちばさみではない、これもモンスターだ。


「ジャックゲイルと言ってたっけ、スキルで仕返しか? 面白いな!」

「だから違う。少し冷静になれ!」

「ジャックゲイル、それを言うならスキルを見せろよ!」


「呆れた。あれを倒したら考えてやるか」

『チョッキーッン!』


 空中に浮かぶ裁ちばさみのモンスターが振り返って、こちらを切りたがっていた。


 対抗策は、モンスターと戦うしかなさそうだ。

 中途半端に逃げても、素早い動きをされて切られるかもしれない。

 そして、ジャックゲイル自身には、裁ちばさみを操るスキルを持ち合わせていないのだろう。


「リリークランさんは、その場で待機を。万が一の時にはスキルでサポートをお願い致します」

「あっ、はい……!」


 カラセナの指示が行き届いて、ほんの少しだけど不安が和らいだ。


 というか、この声って……。

 ゲームのシステムを利用している?

 パーティー内のチャットではなく、グループリーダーチャットというものを使って直接語りかけてきたのか。


 これなら、自分がひとりぼっちでも問題なく意思疎通が……。


 深く考えている暇なんてない。

 そう思ったリリークランは、大きなしゃもじを両手に構えた。


「はっ。弱いな」

「協力して倒したところで、冒険者のひとりを襲ったという疑惑は晴れないが」

「はあ? それはこっちの台詞だぞ!」


 大きな裁ちばさみのモンスターは、ルアーボとジャックゲイルが既に倒し終えていた。


 戦闘においては、自分の出番はなかったのかもしれない。

 ひとまず、一件落着……とはいかない。


 今度は地響きがした。

 足音も聞こえる。急速にこちらへ向かってくる。


「はあ? 今度はなんだよ」

「さぁな。蛇使いに聞かれても困る」

「はあ? ハサミ使いに偉そうに言われる筋合いはないぞ!」


「あれは……」


 カラセナの視線の先、足がついている白い卵のような集団がこちらへ走ってきていた。


 その白い卵には、口がついていて、歯をむき出しにしていた。

 これもモンスターなのだろう。それにしても、見た目がシンプルの割には動きがキモいのである。


「はあ? 次に来る群れを、あのぼっち冒険者が使役していたら面白そうだったのになっ!」

「蛇使いの愚痴なら、後で聞いてやる」


 熱血的な意志を持ちながら蛇を使役して戦うルアーボと、クールな動きで敵を翻弄するジャックゲイルの姿が目に映る。


 カラセナは分厚い本を手に取り出すと、炎の魔法を放っていた。

 一方でリリークランは、戦う三人に対してただ見とれているだけだった。


 但し、三人の間を通り抜けて近くまで来てしまった卵のモンスターは、怯えながらも調理することにした。


 無意識にスキル、輝きの調理劇場が発動していた。

 この卵のモンスターは、素材アイテムという認識なのだろうか。

 大きなしゃもじで振り払おうとすると、卵のモンスターがビームに変換されて四方八方に攻撃を巻き散らかした。

 そのビームが当たった卵のモンスターは、その場で倒れ込んで動かなくなる。

 ついでに大量の卵焼きが空から落ちてくる。お皿は一緒に出てくるようなので、料理そのものが地面に落ちることはない。


 それから五分が経過した頃。


 モンスターの姿が、リリークランの視界からいなくなっていた。


 ルアーボ、ジャックゲイル、カラセナ。息を切らしながらも全員が立っている。

 戦いには勝ったのだ。



 倒したモンスターの半数程度が、小さくて丸い球体を落としていた。

 それは赤、橙、黄、緑――と、七色に煌めいていた。


お読みいただき、ありがとうございます!


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