ドロップアイテムですか?
「ドロップアイテムかしら?」
カラセナが丸い球体をひとつ拾い上げる。
「……これは……割れたたまごの欠片ですか。どうやら素材アイテムのようですね」
拾ったモノをすぐに手放して、カラセナは次の進行方向について考え始めていた。
「卵の殻の栄養は……ちょっと厳しいような……」
リリークランはため息を漏らす。
いつも探偵事務所で食卓を並べているのは、助手である自分の役目と自覚していた。
卵に関する知識についても、少しは詳しいので安全に食べれるかどうかの見分けくらいはすぐに出来るよう努力はしていた。
とはいえ、貴重な素材アイテムでもある。
拾っておくに越したことはない。
今度はリリークランが小さくて丸い球体を拾い上げると、システムの音声が脳内に流れ込んだ。
『割れたたまごの欠片を獲得しました』
急にアイテムウインドウとなる画面も出てきて、拾った物の詳しい情報が表示された。
収納する場所を持ち合わせていないのだけど、本当にそれを持っている気分にさせてくれる。
ゲームならではのシステムで間違いないのだけど、現実世界と違う機能に新鮮味を感じる。
とりあえず五個くらい拾い上げておく。手の届く範囲で。
あとは料理アイテムってどうなるのかな。
……と思いながら手を伸ばしていると、自動的に小さな球体になって料理アイテムだけは全部回収出来た。
これでリリークランの手元に、回復アイテムが数十個ある状態になった。
使うとしても、ただのお食事になりそうだけど。
「さてと、どうしましょうか。廃校エリアへ引き返そうとすると雲行きが怪しくなりそうですが――」
「カラセナの判断に任せる」
「難しいことわかんねーから、リーダーに任せるぞ!」
「わかったわ。未開拓エリアへ行きましょう」
カラセナ達はどうやら移動する様子だった。
進行方向はリリークランの背中に向けて。
……というか、足がまだ凍っていてまともに動けないんだけど。
そう思った束の間のこと、ジャックゲイルの手が足元に急接近した。
「流石に、おんぶするか」
リリークランは急にお姫様抱っこされて、ジャックゲイルとの顔が近づく。
「ありがとうございます……」
「お礼は、別に良い。こうでもしないと、ウチのリーダーが怒るからさ」
「カラセナさんでしたっけ?」
「そう。一応だけど、カラセナとは現実世界でも知り合いだからさ。仕事としてだけど」
「ふーん……」
「念の為に言っておくが、あの蛇野郎は知らないからな」
怒りっぽい口調が見えたのだが、ジャックゲイル自身の表情が硬いおかげなのか、あまり不信感は抱かなかった。
そして、ジャックゲイルには申し訳ないと思いつつも、カラセナが進みたい方向へ道なりに進んでいくことが出来た。
森エリアを抜けると、今度は湖があった。
湖エリア。湖の中央には小島のような陸地が見えており、そこには塔の出入口もあった。
空高く見上げてみる。
塔はどこまで続いているのか分からなかった。
「ああ? 次は塔の中でも探索するか?」
「そうしたいわね。けど、時間ね」
カラセナは何かを気にしていた。
「時間……ですか……。ふぇ?」
リリークランの目の前に、大きな画面が急に出てきた。
『残り時間が一分を切りました。間もなく、現実世界へと転送します』
そのようなメッセージが表示されていた。
スペードの記憶を捜索する依頼を、ここで振り返ってみる。
今回の参加者は十名。報酬額の上限は予め決められており、スペードの記憶を保護した時点での参加者の人数で均等になるように分配される。
一日当たり、約一時間の探索が認められる。
現実世界での命の安全は、アモネイド株式会社が保証するものとする。
今回探索することになるゲームの世界は、仮想空間XZとする。
仮想空間XZでは、シックス・スターズ・オンラインと同じくゲーム初回起動時にプレイヤーそれぞれがスキルを一つ獲得することが出来る。
仮想空間XZは、本来はパーソナルコンピューターでいうゴミ箱のような役割を果たしており、ゲームに実装されなかった没データが眠っている可能性は否定できない。
現実世界への帰還――。
仮想空間XZの探索、一日目が終了。今夜はもう寝よう。
ベッドの上で横たわるリリークランの――秋星夜叶は、瞳を閉じて眠りについた。
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