探索は危険である
「その……ムーンスノアさんは協力、してくださるのですか?」
「当然よ。……だから、早いところ会議しましょうか」
ムーンスノアは杖を天に差し向けて、杖の先端に魔法陣をひとつ展開した。
「早く来て。来ないなら、特大魔法をぶっ放すだけ。ふふっ」
ムーンスノアはニヤついていた。
というか、完全に脅しである。強引且つ手っ取り早く要件を済ませるには、力を示したほうが良いと思ったのか。
「この現場は良い子ね。よしよし」
何故か自分が撫でられていた。
リリークランは、ムーンスノアのペットとして生きていくしかないのか……?
ともあれ、現状で争いごとを避けたい八名がちゃんと戻って来たので、話し合いが出来る状況になった。
「あの……まずですが、自分たちの目的である『スペードの記憶』を見つけ出すには、このゲームの世界を探索しなさいってことでしょうか」
皆に問いかけると、一斉に頷く。
ムーンスノアが物申したそうにしていたので、話の主導権を渡す。
「ここ、探索するにしても、思ったよりも広そうだからね。探索範囲が被らないようにするのと、どう情報共有するかだけを考えましょう」
『了解!』
『わかったぞ!』
「それでは、パーティーわけをしましょう」
ムーンスノアの指示に従って、幾つかのグループが形成されていく。
「ムーンスノアさん、ありがとうございます……!」
「別にいいのよ。それで、ひとりぼっちでの探索は大丈夫そう?」
「へっ……?」
周囲を見渡す限りでは、リリークラン抜きでパーティーは完成されていた。
ミカドラ、ポップベーブ、シイタちゃん、ムーンスノアの集まり。
フミエルと、リノエルでの、双子の天使の集まり。
ルアーボ、ジャックゲイル、カラセナの三名の集まり。
グループをひと通り把握したら、リリークランは空を見上げた。
「まずは……このエリアのことですが、廃校エリアという名称にします」
冒険者に取り囲まれているリリークランは、落ち込んでいる暇なんてないことに気づいた。
気を取り直して、この場を仕切ろうと努力するしかない。
「探索についてですけど……現状では未探索エリアが多いので、自分が安全確認をしていきます。なので、しばらくの間ですが、三つのパーティーは合同で移動するようにお願いします」
この言葉に対して真っ先に反論しようとしていたのはムーンスノアだったが、キノコのコスプレをしているシイタちゃんに口止めされる。
敵が出たときは最悪、自分が囮になれば良い。
リリークランは自己犠牲の塊だ。そう思いながら、探索をはじめる。
まずは、廃校エリアの正門を目指す。
廃校エリアには、敵は見当たらなくて少しばかり寂しい気もする。
肌寒いのもあって、あまり長居はしたくなかった。
「ふぅ……」
リリークランが正門をくぐり抜けると、視界が悪い深い森が続いていた。
ここを森エリアとする。
不気味で暗いとはいえ、道っぽい地面の土色が見えていたので、路肩に入って適当に進まなければどこかしらのエリアにたどり着くことが出来そうだった。
「あっ……」
足を止めた先には、道が十字路に分かれている。
ひとまず、ここでパーティーを分散させても良いのだけど悩ましい。
「探索のリーダーさん、悩みかしら?」
「うん……」
十字路に分かれている道をムーンスノアに伝えると、ムーンスノアがカラセナというユーザーに声を掛けていた。
お姫様が着ていそうな薄いピンク色のパジャマの恰好をしているカラセナの手元には、そこそこ丈夫そうである厚めの紙があった。
その紙に対して、指先を当てて線を引くカラセナ。このゲームの世界地図を自力で描いていくつもりでいそうだった。
「たしか、廃校エリアに安全地帯があるんでしたっけ?」
おしとやかなカラセナの口が動くと、ムーンスノアがゆっくりと頷く。
「ここで道が分かれているけれど、どこからパーティーを分散させるべきかの話をしたいわ」
「正直なところ、どこでも良いというのが個人的なお答えですね。敢えてやりたいとしたら探索のリーダーと私たちのパーティーはそのまま直進、他のパーティーで左右を見るというものです」
「なるほど。その話にも乗ろうかしら」
ムーンスノアは話し合いが済んだ様子で、リリークランの元に寄ってきた。
「探索のリーダーさんはそのまま前進、お願い出来るかしら」
「は、はい……」
息を吞んだリリークランは、ただ前だけを見て進んでいった。
リリークランの後ろには、カラセナが率いるパーティーだけが付いてきていた。
カラセナの他には、長い棒に蛇を巻き付けているルアーボと、大きな裁ちばさみを持っているジャックゲイルがいる。
「この陣形は、なんだか……」
背後は思ったより安心感があった。
そして、この三名とも左右からの警戒力が強くて、不意打ちにも対応できそうだった。
自分が前方に注意してしっかりと見ておけば、安全は維持できる。
そう思っていたのだが……。
「ひっ……!」
足元に、何かが巻き付いてきた。
「えっと、なに……これって……。あっ」
『シャシャーッ!』
リリークランは視界を下に向けると、牙をむき出しにしている青いヒョウ柄の蛇と視線が合った。
お読みいただき、ありがとうございます!
本作品はなろうチアーズプログラムに登録中です。
面白いと思われましたら、評価やブックマークを付けて頂けると幸いです!!
よろしくお願いします。




