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ダンジョンで遊ぼう!! ~VRゲームの世界ですが、冒険者にいきなり襲われるのは嫌なので楽しくダンジョンを作りたいと思います~  作者: 愛原ひかな
第3.5章 記憶の探しもの

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選ばれし冒険者のはじまり


 ●リリークラン



 貴方は選ばれし冒険者になりました。

 闇のダンジョンマスターの願いである、スペードの記憶を見つけ出してください。

 それがこのゲームのクリア条件となります。


 ゲーム端末から入ったので、現実世界での命の保証は致します。


 現在の格好は、幼少期の憧れを具現化したものとなります。


 武器は頭の中で強くイメージしながら桜の木に触れると、何でも出てくると思います。

 但し、ひとり一種類しか持っていくことが出来ません。

 武器を正式に決定するまでは、何度でもイメージし直すことは可能とします。


 夜空が広がる寒い中庭での説明。

 白い桜の木の麓に現れた、全身真っ白な女性アバターはそう言っていた。


 話の内容を半信半疑に聞いていた夜叶は、自分のことをどう名乗ろうか悩んでいた。


 他の参加者が不意に離れようとしたら、女性アバターからの警告でユーザー名を先に決めるよう言ってきたのだ。

 白い桜の木を中心とした円形の結界が張られており、ここから出る為には冒険者としてのユーザー名というものを決めないといけなかった。



 夜叶が周囲を見渡すと、次々とユーザー名が決まっていくのか目に見えて分かってしまった。


 ムーンスノア。ミカドラ。ルアーボ。ジャックゲイル。ポップベーブ。シイタちゃん。フミエル。リノエル。カラセナ。


 気がついた時には、自分が最後のひとりになっていた。



 こういうの……苦手かも……。

 ひとりでおどおどしていても、他の者は自分に興味すら示さないだろう。


「まだなのかしら。決まったかしら?」

「ふえっ?」


 急に話しかけられたので、夜叶は驚いた。


「ひとまず、顔をあげなさい」


「はい……そうしますので……」


 女性に言われた通りに動いておく。

 自信なさげに視線を合わせた夜叶の瞳には、白い魔女の帽子をかぶった魔法使いが堂々と映り込んでいた。


「オンラインゲームとかは、はじめてなのかしら?」

「すみません……ここで使う名前、うまく決まらなくて」

「まるで迷子の妖精さんのようね。リリーとかどうかしら?」

「ちょっとアレかな……ありがちな……」


「そうね。だったら、アタシの故郷はね、国を統括する王様がいるんだけど、どこか抜け落ちてる一面があって」

「なんの話です……?」


「貴方とそっくりなのよ。堂々と王冠を被っていそうでそうでない、みたいな匂い」

「匂い、ですか?」

「例え話よ。そうね……クラウンから抜け落ちて、クランってどうかしら」

「それも……なんかありがちのような……」


「それじゃあ貴方はリリークランね。これでどうかな、ありがちな回答から抜け出したかしら?」


「うーん……」


 ムーンスノアというユーザー名が表記されている女性からの、ユーザー名の提案である。


 ちょっと名乗るのには自身がなくて……ピッタリかと言われたら何もいえないけど。

 この場に逃げ道なんて用意されていない気もする。


「リリークランです……。よろしくお願いします」


 夜叶は、自分のことをそう名乗るようにした。


「とても似合ってるわ」


 ほんのり微笑むムーンスノアは、視線を逸らしながら桜の木に近づいていった。


 あっ、自分もいかないと。


 白い桜の花びらを散らす木に触れて、武器を受け取ると、冒険者として結界の外に出ることが出来るようになっている。

 先に受け取った者が次々と円の外に出ていく。


 これ、もしかしなくても出遅れるとひとりぼっちになるのでは。

 ムーンスノアも、立派な青い杖を受け取っていた。


 やっぱり自分が最後である。


「お願い……します……!」


 リリークランは、右手を自身の胸元に当てながら木の表面に触れる。

 木に触れたので、武器が生成される。


「これは……」


 受け取ったのは、ドデカい白色のしゃもじだった。


 軽いので片手でも持てるけど、両手で握ったほうが振り回しやすような……。


 当たり外れとかは、よくわからなかった。

 選びなおすとひとりぼっちになるかもだし、もうこれで良いか。



『リリークランは、スキルを獲得しました』


 ゲームでよくありがちなステータス画面が目の前に出てきて、通知が入り込む。

 今度はなんだろう。特殊能力でもあるのかな。


 もしかしたら、シックス・スターズ・オンラインのような要素が組み込まれているのかもしれない。

 ゲームを優位に進めれることのできる要素のひとつとなっている。


 リリークランも同様に、それを得たのだ。



 固有スキル、輝きの調理劇場。


 効果は、ありとあらゆる素材アイテムを料理系アイテムに変えることができる。その際、魔法タイプの攻撃も行える。


「なんというか、これ……」


 とんちんかんな攻撃手段を獲得してしまったのかもしれない。ついでに料理も出てくるみたいなので、空腹の心配もなさそうだ。


 ここがVRゲームの世界だとして、空腹という概念があるのかすら不穏なんだけど。

 それはそうと、リリークランとしてやらないといけないことがある。


 情報収集だ。


「とにかく、皆さん待ってくれませんか!」


 一生懸命に叫ぶと、この場を立ち去ろうとしていた者、九名ともこっちに振り向いてきた。


「すみません。今回の依頼を達成するための作戦会議を、皆でしたいのですが……!」


 リリークランが提言すると、周囲がざわつく。



「皆さんで協力的に捜査できれば、早く依頼を達成して、その……多額な報酬もありますし……」


『どうする? 話だけでも聞いとく?』

『好きに動いて、さっさと探し物を見つけ出したいんだけどなぁ』


 あれっ、九名全員が聞いてはくれたけど、思ってたより動いていない。

 このままでは、ひとりで途方に暮れそうで、依頼もちゃんとこなせるかすら分からなくなる。


「なるほどね。……その手には乗ろうかしら」


 真っ先に理解を示したのは、ムーンスノアだった。


お読みいただき、ありがとうございます!


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