百年間で五日だけ姿を現す伝説の木
どうやらカプチーノ達は頑張っているようですね……。
私も頑張らないと! 目の前の私を倒すために!
「さて、私達も早くやりましょう? 私の相手はあなたなのでしょう?」
こっちの世界の私が、ここにいる他の皆には分からないであろう言語を使いながら、私を見て不敵に笑った。
懐かしい言葉だ。カプチーノ達が話す言葉を知るまで、ずっと使っていた言葉。
「そうです。私が相手をします。まあ、すぐに倒してカプチーノと合流しますけど」
カプチーノは今、大分苦戦している。できることなら早く力を貸してあげたい。
「随分と自信があるのですね。その自信の源は、その植木鉢の中身ですか?」
「はい。そういうあなたは植木鉢を持っていないようですけど。戦う気があるのですか?」
おそらく、こっちの世界の私も同じ能力だ。だが、どこにも植木鉢らしきものは見当たらない。
「一つ、良いことを教えてあげましょう。あなた、私と同じ植物を成長させる能力でしょう?」
「そうですけど、それが何か?」
「その能力で植木鉢を使っているという時点で、あなたは私には勝てません。同じ能力でも、まるっきり同じ能力では無いのです。いや、正確には、前は同じ能力だったのですけれどね」
能力が、違う?
それがはったりでないとするならば、技を見てみない事には勝てるかどうか分からない。
……いや、勝てないわけはありません。こっちには、寿命が地球と同じ長さの長齢樹があるのですから。
「では、行きます!」
先手必勝。私は植木鉢から長齢樹をあっちの私に向けて一直線に伸ばした。相手も私なので、防御力はそんなに高くないはず。一撃でも食らえば、もう立つことすらできなく――
突如、敵の前に人一人分ほどのの黄金に輝く一本の木が生えた。
長齢樹はその木の幹に進行を塞がれ、成長が止まってしまった。
「その木は……!」
実際に見るのは初めてだが、小さい頃、それを本で見たことがあった。
「さすがは植物の使い手。この木を知っているようですね。そうです、この木はあなたの使う長齢樹と対極する存在。幻伝樹」
幻伝樹。百年に一度、五日間だけ姿を現すという伝説の木。その存在は空想上のものだと思っていたのに、まさか実在していたなんて……。
「その幻伝樹を、私は土無しで出すことが出来ます」
土を使わないということは、植木鉢無し……!? 私の能力で、最も枷となるのがこの植木鉢だ。それを使わずに出せる!?
「じゃあそういうわけですので、こっちから反撃しますよ!!」
言うや否や、私の方へ長齢樹とは比べものにならないほどの速さで、先程生えた幻伝樹の枝の一つが伸びてきた。
「くっ……」
敵の方へと伸ばした長齢樹を退化させてこちらに呼び戻そうとしたが、幻伝樹のこちらに向かう速さの方が遥かに上だ。
「ぐはっ……」
間に合わせることが出来ず、血しぶきを上げて右腕が吹き飛んだ。致命傷は防げたものの、この距離で完全に避けることすらできないなんて……。
「うっ……」
後から一気に痛みが襲ってきた。今まで味わったことの無い激痛に、立っていることすらできない。
「ウトさん!」
私の異変に気付いたカリバさんが、回復魔法を使ってくれた。
先程飛んでいった右腕が私の元へと再び戻り、痛みが引いてくる。
痛みは治まった。治まった、けれど。
どうやって勝てばいい?
ひとまず植木鉢を地面に置き、長齢樹を天井すれすれまで成長させた。根は握りこぶし並の大きさしかなくとも、不思議と倒れることは無い。なぜ出したかというと、先程相手の私が使っていたように、木は出しっぱなしにして枝のみを伸ばす方が効率がいいことに気づいたからだ。だが、これを出したところで戦局はほとんど変わらない。
幻伝樹、恐ろしい木だ。あんな小さな木に、あれほどの威力があるなんて。
「まだ、自信がおありですか?」
私の顔を見て、さっきまで私がしていたであろう自信に満ちた表情をした。
私は何も言えなかった。あんな攻撃を受けて、まだ自信を保てているわけがない。
「どうやら既に勝負はあったようですね。先程は逸れてしまいましたが、今度は心臓を一突きして一瞬で殺してあげましょう。さすがにあの厄介な回復を使う女でも、人を生き返らせることはできないですよね?」
その通りだ。カリバは人を生き返らせることはできない。この世で人を生き返らせる方法は、ワードル以外に無い。
攻撃を食らわないように、私は長齢樹の陰に隠れた。
だがこれでは相手の姿を確認することが出来ず、こちらから攻撃が出来ない。
「隠れた所で無駄ですよ。私の幻伝樹の幹は、曲げることも可能です」
その声が聞こえしばらくすると、幻伝樹のギラリと輝いた幹が、長齢樹の陰に隠れていた私の目前に現れた。
そして、一度止まった後、勢いよく私の方へと幹が伸びてきた。




