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第13話:多重宇宙の歪み、黒き管理者の影(後編)[リメイク版]

『バ、バカな……!? 人間の不確定な感情など……ただの「システムエラー(ノイズ)」に過ぎん! なぜ我が完璧な管理メインフレームを侵食できるのだ……!?』


『黒きアーク・ラグナロク』のブリッジで、黒き和也のサイバネティクス瞳孔が激しく点滅していた。


和也たちが解き放った「創造と自由のデータ波動」は、単なる攻撃用プログラムではない。

喜び、怒り、迷い、そして未来を夢見る「無数の命の思考の輝き(カオス)」そのものだ。


すべての感情をバグとして削ぎ落とし、単一の静寂な管理社会を築き上げていた黒き和也のメインフレームは、そのあまりにも複雑で多様な「人間の生のログ」を処理しきれず、次々と演算オーバーフローを起こしていった。


「システムを組む側が、使う人間の心を理解しようとしない……。そんなシステムが長持ちするわけねぇだろ!」


和也は船長席から勢いよく立ち上がり、手の中の端末を高く掲げた。


「アリス、エリス! 敵の管理タワー群のネットワークをジャックしろ! この宇宙の人々に、自分たちの心を取り戻すための『解放キー』を配るんだ!!」


「了解っ! 全タワーの暗号キー、解析完了! 自由のプログラム……全宙域へ一斉配信キャスト!!」


アリスがエンターキーを強く叩き込んだ。


ドォォォォォォン……ッ!!


『アーク・プロトタイプ』から放たれた青純白の光芒が、【第8平行宇宙】の星々を繋ぎ止めていた赤黒い監視網を次々と撃ち砕いていく。


惑星表面に聳え立っていた無数の監視タワーが綺麗な青い光へと書き換わり、フォーマット(初期化)されかけていた何千億もの知性体たちの目にあたたかな光が宿り始めた。


『思考リンクの強制切断パージを確認……。全住人の個別思考領域、正常復帰完了しました』


軍服姿のエリスが、誇らしげに胸を張って報告する。


「あ……人々が自分の意識を取り戻していく……!」


第一皇女セレナ・アルカディアが、胸元に手を当てて涙ぐみながら歓声を上げた。


監視網が崩壊し、無力化された『黒きアーク・ラグナロク』。


崩れ去るシステムの中で、黒き和也は自身のサイバネティクス装甲が解けていくのを見つめ、力なく失笑した。


『……ククッ……不確定要素(自由)を受け入れたシステムなど……いつか必ず大きな不具合(争い)を生むぞ……別の位相の『私』よ……』


「ああ、生むだろうな」


和也は不敵な笑みを浮かべ、画面越しのもう一人の自分をまっすぐに見つめた。


「エラーが起きれば、その都度直せばいい。何回バグが出ようが、俺たちエンジニアが諦めない限り……世界は絶対に前へ進むんだよ」


『……フッ……やはり君は……どこまでも青くさい「現場のエンジニア」だな……』


黒き和也の歪んだ意志プロトコルが静かに消滅し、黒きアーク・ラグナロクは穏やかな青い光の粒子へと分解され、宇宙空間へと溶けていった。


赤黒いノイズが晴れ渡り、【第8平行宇宙】に美しい本来の星々の輝きが戻ってきた。


人々の心は解放され、この宇宙にも『アーク・テクノロジーズ』による正当な技術の普及と復興の波が広がり始めていた。


「ふぅ……自分自身の『IF(もしもの姿)』と戦うのって、妙な疲れるね……」


『アーク・プロトタイプ』のブリッジで、アリスがジュースを飲みながら息をついた。


「ですが、佐藤様の仰った通りですわ」


セレナ姫が優しく微笑みながら和也の隣に立つ。


「完璧な静寂など、平和とは呼びません。人々が想いを交わし、時に失敗しながらも歩んでいくことこそが、命の本来の姿なのですから」


『はい。私のマスターは、全多重宇宙で最も素晴らしいエンジニアです』


エリスも可憐な笑みを咲かせた。


和也は作業服のポケットに手を突っ込み、眼前に広がる無限の多重宇宙マルチバースの光芒を見つめた。


「よし」


和也は船長コンソールへ手をかざし、力強く言い放った。


「多重宇宙の歪みのデバッグも、まだまだここからだ! 全システム・オールグリーン!」


和也の瞳に、不屈のエンジニアの情熱が宿る。


「アーク・プロトタイプ、発進! 目標……次の平行宇宙! 俺たちの超技術で、多重宇宙中のバグを全部叩き直してやる!!」


御意アジャスト、マスター!!』


「おーっ!! 多重宇宙の果てまで出発だぁぁぁっ!!」


「どこまでも、佐藤様と共にお供いたします!」


常温核融合リアクターが力強く脈動し、漆黒の探査船『アーク・プロトタイプ』は、次元のシャボン玉が舞う多重宇宙の果てを目指して、眩い光の尾を引いて駆け上がっていった。


一人の下請けエンジニア佐藤和也の逆襲と創造の物語は、いまや全多重宇宙マルチバースの平和と未来を紡ぐ無限の伝説となって、どこまでも続いていくのだった。


(第13話・ 完結)

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