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第12話:新たなるフロンティア、外銀河からのSOS(後編)[リメイク版]

「実体がないなら、直接その『定義プログラム』を書き換えるまでだ!」


船長席に座る和也の宣言とともに、『アーク・プロトタイプ』のブリッジ全体が、澄み渡るような量子光のグリッドに包まれた。


画面の外では、紫色のノイズを撒き散らす浸食体【グリッチ】の群れが、空間の物理法則を破壊しながら船体へと迫り来ている。


「アリス! 相手が物理空間をバグらせるのに使ってる『変数プロトコル』を逆解析しろ!」


「了解っ! 相手のノイズパターン、ただのランダムじゃない! 16次元の位相空間コードを使った『概念的バッファオーバーフロー』だ!」


アリスが銀髪を振り乱しながら、ノートPCのキーボードを神速の連打で叩く。


「相手は『この空間には重力も質量も存在しない』っていう偽のエラーデータを周囲に強制送信して、物理兵器を無効化してるんだよ!」


「なるほどな。典型的な『偽装エラーインジェクション』か」


和也は不敵に口元を歪めた。


「なら、相手の偽装コードを受け取る前に、こちらの『絶対的物理定義カーネル・プロトコル』で全空間を初期化リセットして上書きする!」


『マスター! 当機の量子コアと帝都中核炉の次元送電ライン、完全同期完了!』


可憐な軍服姿のエリスが、凛とした声を響かせて手をかざす。


『概念干渉型論理兵器【概念修正波ロジカル・パッチ】、射出準備完了しました!』


「セレナ姫、船体の概念展開バリアの出力を限界まで引き上げてくれ!」


「お任せください、佐藤様! 皇室の誇りにかけて、一歩も引かせはいたしません!」


セレナ姫が美しく澄んだ声で応じ、コンソールの最終増幅スイッチを押し込んだ。


和也の指先が、全銀河の技術とエンジニアの誇りを込めて、最終決定キーを叩きつける。


「喰らいやがれ、外銀河のバグめ! ——【概念修正波ロジカル・パッチ】、全方位無制限射出!!」


ズドォォォォォォン……ッ!!


『アーク・プロトタイプ』の全方位から解き放たれたのは、見えない「圧倒的な論理ロジックの青い光芒」だった。


光の波が宇宙空間を駆け巡ると同時に、ノイズで歪んでいたアンドロメダ外銀河の空間が、目に見える速さで「正常な物理法則」を取り戻していく。


『ギ……ギギガガガガッ……!? な……なんだこの絶対的な『論理構造』は……!? 我らの不確定性ノイズが……すべて『正常値』へ修正されていく……!?』


高次元情報浸食体【グリッチ】たちの悲鳴とも怒号ともつかぬ概念音声が、宇宙全体に木霊した。


和也たちの放った論理の光線は、グリッチたちが撒き散らしていたエラーデータを片端からパージ(消去)し、実体を持たなかったノイズたちを「ただの数値データ」へと強制還元していく。


「トドメだ! アリス、エリス!」


「合点承知っ! 全グリッチノードへ、クリーンアップ・プログラムを一斉送信!!」


『システムエラー消去デバッグ……完了!!』


カアァァァァァッ……!


眩い青純白の閃光がアンドロメダ外銀河の闇を照らし出し、無数のノイズたちは跡形もなく消滅した。


ノイズが晴れ渡り、漆黒の宇宙空間に浮かび上がったのは、黄金と銀の光を纏った巨大な人工星【第3構造管理体・ネビュラ】の美しい姿だった。


ネビュラの表面から、澄み渡るような概念通信が届く。


『感謝……いたします……天の川銀河の管理者たちよ……。我が外銀河を滅びのバグから救ってくれたこと……深く、深く感謝いたします……』


画面には、かつて見たことのないほど進化した外銀河の知性体たちの安堵の表情が映し出されていた。


「よかった……! 外銀河の皆さんも、無事だったんだね!」


アリスが感極まった声を上げる。


「ええ……本当に見事な勝利でした、佐藤様!」


セレナ姫が心からの尊敬を込めて、和也の横顔を見つめた。


『ふふっ……さすがは私のマスターです。外銀河の未知のバグすら、ものの数分でデバッグしてしまうとは』


エリスが可憐に胸を張り、誇らしげに囁く。


和也は作業服のポケットに手を突っ込み、眼前に広がる、いまや美しく輝くアンドロメダ外銀河の何千億もの星々を静かに見つめた。


「和也、これからどうするの?」


アリスが尋ねると、和也は不敵で、どこか無邪気な少年のような笑みを浮かべた。


「どうするもこうするもないさ」


和也は力強く前方を指差した。


「この広い大宇宙には、まだまだ俺たちの知らない外銀河や、助けを待っている星々、そして直すべき『バグ』がたくさん眠っている。……エンジニアの仕事に、終わりはないからな!」


船長席で力強く命じる和也。


「全システム、オールグリーン! 探査船『アーク・プロトタイプ』、次なる未知の外銀河宙域へ向けて……発進!!」


『御意、マスター!!』


「おーっ!! 宇宙の果てまで突き進むぞぉぉっ!!」


「どこまでもお供いたします、佐藤様!」


常温核融合リアクターと帝都コア、そして外銀河ネビュラのエネルギーが一つに融合し、漆黒の宇宙船はさらなる深宇宙へと向かって一進の光となり駆け上がっていった。


冴えない下請けエンジニア佐藤和也の逆襲から始まった大冒険は、天の川銀河を越え、いまや全マルチバース(多重宇宙)の希望の光となって、永遠に紡がれていくのだった。


(第12話・ 完結)

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