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第12話:新たなるフロンティア、外銀河からのSOS(中編)[リメイク版]

帝都アルカディアの中核炉コアから供給される膨大な次元跳躍エネルギーを受け、漆黒の探査船『アーク・プロトタイプ』は、銀河系の外殻ヘイローを突き抜けた。


船外モニターに映し出されていたのは、自分たちが生まれ育ち、そして救い出した天の川銀河全体の、渦を巻く美しい黄金の姿だった。


「すごい……! 本当に自分の銀河を飛び出しちゃったよ……!」


ブリッジのメインコンソールで、アリスが身を乗り出して感嘆の声を上げた。


「見てよ和也、後ろに見えるのがボクたちの銀河で、前にあるのが……二百万光年先のアンドロメダ外銀河!!」


「ああ、圧巻だな」


船長席の和也は、作業服の袖を捲り上げ、手元のコンソールに表示される次元跳躍メーターを凝視していた。


数千光年の航行を可能にする「超光速航行ワープ」と、二百万光年もの星間海溝ボイドを一瞬で飛び越える「次元屈曲航行ハイパー・ワープ」は次元が違う。エリスの量子演算と、アリスのハッキングによる次元干渉バリアの連続展開、そしてセレナ姫が持ち込んだ旧帝国の「銀河間航行用座標ファイル」が揃って初めて成立する極限の航行だった。


『マスター。アンドロメダ外銀河の重力圏へ突入します。……次元固定フィールド、展開オープン


軍服姿のエリスが凛とした声でアナウンスすると同時に、船体を包んでいた青白い空間歪曲の光芒が収束した。


次の瞬間、ブリッジのメインスクリーン一杯に広がったのは——。


「っ……!? なんだ……この星空は……!?」


同乗していたセレナ姫が息をのんだ。


そこに広がっていたのは、美しい星々の輝く宇宙ではなかった。


何千億もの星々が存在するはずの外銀河宙域。その空間全体が、まるで歪んだ液晶画面のように「デジタルノイズと紫色の空間の亀裂」によってズタズタに引き裂かれていたのだ。


星々の光は不自然に明滅し、幾何学的なエラーコードのような光の粒子が大気も空気もない宇宙空間に舞い散っている。


「空間そのものが……『データ破損クラッシュ』を起こしてる……!?」


アリスが青ざめた顔でキーボードを叩いた。


「和也、ダメだよ! この宙域、物理法則の根本カーネルが書き換えられてる! 重力定数や光速度の数値がリアルタイムで狂って変動してるんだ!!」


『報告:救難信号(SOS)の送信元を捕捉しました』


エリスがホログラムで外銀河の局所マップをハイライトした。


『この外銀河の管理用中心人工星【第3構造管理体・ネビュラ】です。ですが……周囲を未知の形態を持つ「高次元情報浸食体」が埋め尽くしています』


スクリーンが拡大される。


そこに映っていたのは、旧銀河帝国のヴォイドのような「実体のある金属や結晶」ではなかった。


実体を持たず、空間のグラフィックや物理法則そのものをバグらせながら蠢く、紫色の「光のポロン・ノイズ(情報怪異)」。


それらは巨大な人工星ネビュラに群がり、その表面のテラフォーミングデータやエネルギー管理プログラムを食い荒らしていた。


『愚かな……3次元の肉体と物質に縛られた……下等な知性体どもめ……』


ブリッジ内の全通信回線、さらには和也たちの脳内へ直接、気味の悪い多重合成音声がノイズとともに響き渡った。


『我らは……高次元情報浸食体【グリッチ】……。この宇宙の不完全な物理計算を削ぎ落とし……すべてを『無』へと再初期化フォーマットする者なり……』


再初期化フォーマットだと……!?」


セレナ姫が腰の儀礼剣を握りしめ、凛とした声で叫んだ。


「勝手な真似を! 宇宙に生きる数千億の命と歴史を、バグのごとき身勝手な論理で消し去ろうというのですか!!」


『無駄だ……。我ら【グリッチ】には……実体の砲撃も……重力波も届かぬ……。3次元の物理兵器など……ただの通過するデータに過ぎん……』


不気味なグリッチの群れが、実体を持たないノイズの触手を伸ばし、和也たちの乗る『アーク・プロトタイプ』へと襲いかかってきた。


「物理攻撃が効かない……!? 和也、重力砲もミサイルも全部すり抜けちゃうよ!!」


アリスがパニックになりかける。


だが——和也は船長席で深く息を吐き出すと、静かに口元を歪め、不敵に笑った。


「実体がない? 物理兵器が効かない?」


和也は作業服のポケットから改造端末を取り出し、船長コンソールへと接続した。


「だったら……話は簡単じゃないか。……『プログラム(情報)』には『プログラム(情報)』で叩き潰す!」


和也の瞳に、圧倒的なエンジニアの誇りと輝きが宿る。


「概念や情報で襲ってくるんなら、俺たちハッカーとエンジニアの完全な主戦場だ!」


(第12話・ 完)

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