第11話:最終決戦、全銀河の再構築(デバッグ)(中編)[リメイク版]
銀河系の中心核。膨大な質量の超巨大ブラックホールが歪み、空間そのものが赤黒い幾何学模様となって脈動していた。
その中心に君臨するのは、全長数百キロメートルを超える巨大な黒結晶の要塞構造体——【ヴォイド統合核心】。
数千年前の旧銀河帝国崩壊の引き金となったすべての「自律侵食兵器ヴォイド」の起源であり、全銀河の物質とエネルギーを崩壊粒子へと還元して宇宙を沈黙させようとする、最大・最悪の自動殺戮メカニズムだった。
ドォォォォォォン……ッ!!
【マザー・コア】の巨体から放たれる、数万本の崩壊粒子光線と高密度の空間歪曲衝撃波。
「全艦隊、対消滅重力偏光バリア、最大出力!!」
第一皇女セレナ・アルカディアが、旗艦のブリッジで毅然と命じる。
帝都親衛隊と各地の工廠惑星から集結した五万隻の銀河連合艦隊。その全艦が張り巡らせた青と黄金の光の防衛陣地が、赤黒い光の濁流と激しくぶつかり合い、閃光と空間の亀裂を撒き散らした。
「くっ……相手の火力が大きすぎるよ! 単純なエネルギーの押し合いじゃ、こっちの防衛バリアが持たない!!」
『アーク・プロトタイプ』のブリッジで、アリスがキーボードを叩きながら悲鳴のような声を上げた。
「マザー・コアは銀河中心の超巨大ブラックホールから無限にエネルギーを引き込んでるんだ! このままじゃ、全艦隊が削り潰されちゃう!!」
「無制限の外部電源か。……まさにモンスター級の環境だな」
船長席の和也は、荒れるモニター画面の数値を冷静に見つめていた。
敵の攻撃は、銀河の物理法則そのものを崩壊させる圧倒的な暴力。だが、どれほど莫大なエネルギーを扱っていようと、それが「プログラム」によって制御されている以上、絶対に破綻の兆候は存在する。
「エリス、マザー・コアの制御アルゴリズムの『最小ループ単位』を算出できたか?」
『はい、マスター!』
軍服姿のエリスがホログラムで現れ、可憐な指先でホログラム・マップを叩いた。
『マザー・コアはブラックホールからの莫大なエネルギーを吸収・変換する際、〇・〇〇〇一秒に一回、過剰な重力熱を空間歪曲領域へ排出する「冷却シーケンス」を挟んでいます。……そこが、唯一の外部干渉ポートです!』
「冷却シーケンスの極小の間隙……か!」
和也の目が鋭く細められた。
「アリス! 五万隻の連合艦隊の砲撃を一点に集めろ! マザー・コアの前面バリアにピンポイントで過負荷をかけ、その冷却ポートを力任せに一瞬だけ露出させる!」
「了解っ! 五万隻の重力砲の照準プロトコルを、ボクの量子PCで完全に同期させるよ! 誤差ゼロ秒の同時一斉射撃……いっけぇぇぇぇっ!!」
アリスがエンターキーを強く叩き込んだ。
ズドォォォォォォン……ッ!!
五万隻の連合艦隊が一斉に放った、眩い青と黄金の集束重力光線。
それらがマザー・コアの前面防衛壁の『一点』へと突き刺さり、超高圧のエネルギーが衝突。直後、マザー・コアの表面に巨大な「光の亀裂」が走り、内部の赤いコアへと続く冷却口が露出した。
「今だ、エリス、セレナ姫!」
和也は立ち上がり、端末を胸に掲げた。
「帝都コアの莫大なエネルギーと、エリスの量子演算力を俺のプロトコルに全上乗せしろ! マザー・コアの最深部へ、全銀河を救う『最終デバッグ・パッチ』を打ち込む!!」
『御意、マスター!!』
「佐藤様……! 全銀河の未来を……貴方に託します!!」
セレナ姫の手から解き放たれた帝都コアの黄金の光と、エリスの放つ青い量子データ線が、和也の手の中の端末へと収束する。
和也の指先が、疾風を超える速度で最終キーを叩き込んだ。
「全銀河を滅ぼす悪魔のバグ……ここで永久に修正してやる!!」
ドッ……ガンッ!!
『アーク・プロトタイプ』の先端から解き放たれたのは、砲弾でもレーザーでもない——全銀河の構造そのものを再書き換えする『概念化された純白の重力パッチ光線』だった。
光線は一瞬でマザー・コアの露出した冷却口へと突き刺さり、その核心部へと
到達した。




