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第6話:地球の反撃、銀河の沈黙(後編)[リメイク版]

神威島から全世界の首脳陣へ送られた一枚の動画と、外宇宙からの接近データ。


それは、地球の歴史を永遠に変える決定打となった。


圧倒的な威力で領海侵犯の艦隊を完封した『重力歪曲型プラズマ砲』の映像、そして半年後に迫る「未知の宇宙からの脅威」。それらを突きつけられた米国大統領、中国国家主席、EU首脳らは、一切の異論を挟むことができなかった。


和也が提案した『新地球連盟(NEW EARTH ALLIANCE)』の設立協定調印式は、提携発表からわずか一ヶ月後、日本の京都にて執り行われた。


主導権を握るのは、覇権国家アメリカでも中国でもない。


かつて東洋の小さな島国と蔑まれ、今や世界最高の超技術を誇る「日本」——そして、その頂点に立つ『アーク・テクノロジーズ』代表・佐藤和也だった。


「まさか、世界中のトップが和也の前に並んで頭を下げるなんてね……!」


神威島の地下工廠。アリスがメインモニターに映し出された国際会議の映像を見ながら、感慨深そうに溜息をついた。


画面では、米国大統領と中国国家主席が、緊張した面持ちで和也と固い握手を交わしている。


「彼らも必死さ。自分たちの持つ核兵器や最新鋭戦闘機が、宇宙からの脅威の前にはただの『玩具』に過ぎないと悟ったんだからな」


和也は作業服の袖をまくり、目の前のホログラム・ディスプレイに表示された超巨大な構造図を凝視していた。


画面に浮かび上がっているのは、地球の衛星である「月」の表面に建設される、巨大な防衛拠点——【月面超大型重力偏光砲陣地・ヤマト】の設計図だった。


「エリス、月面工廠の自動建造用ドローンの打ち上げ状況は?」


『順調です、マスター』


軍服姿のエリスが可憐に微笑み、ホログラムの指先で月面の立体マップを回転させた。


『当機の探査船から抽出した自己増殖型ナノマシンを搭載した無人ロケットが、すでに月面・「静かの海」領域に着陸完了。月面の豊富なチタンおよび珪素資源を採掘し、毎分数百メートル単位で地下基地と大出力重力波砲の建造を進めています』


「毎分数百メートル……。もはや建築の概念を超えてるね」


アリスが呆れたように笑う。


和也たちの計画は、地球上で指を咥えて待つことではなかった。


常温核融合の無制限なパワーと、エリスのナノマシン技術を組み合わせ、月面そのものを「地球を防衛するための巨大な砲台」へと変貌させる。地球の各国は資金と資材、そして世界中の優秀なエンジニアたちを和也の指揮下へ提供する「足回り」に専念していた。


かつて大手メーカーの下請けとして、理不尽な納期とコストに追われていた和也が、いまや世界中の何千万人というエンジニアや科学者たちを束ねる「総指揮官システム・アドミニストレーター」として君臨しているのだ。


「和也、あと一ヶ月で月面防衛陣地の第一期工事が完了するよ! これで、たとえ小惑星規模の物体が飛んで来ても、地球に到達する前に消滅させられる!」


「ああ。だが……問題は相手の正体だ」


和也は腕を組み、モニターの隅で点滅を続ける「外宇宙からのシグナル」を見つめた。


接近してくる謎の物体。


その速度は衰えるどころか、太陽系の重力圏に入ったことでさらに加速し、冥王星軌道を突破して天王星付近へと到達していた。到達予定時刻は、当初の予想を大幅に早め、あと「数日」へと迫っていたのだ。


ピピッ……ピピッ……!


司令室に、澄んだ警告音が響いた。


『マスター。太陽系外縁部に設置した当機の超長距離量子観測センサーが、接近する対象の「光学映像」および「高精度熱反応」の捕捉に成功しました』


エリスの声に、ピンと緊張が走る。


「画面に出してくれ!」


メインモニターの広大な画面に、ノイズとともに深宇宙の漆黒の映像が映し出された。


そこに浮かび上がっていたのは——。


「な……なんだ……あれ……!?」


アリスが絶句し、息をのんだ。


画面に映っていたのは、巨大な宇宙船ではなかった。


全長数キロメートルに及ぶ、不気味な漆黒の「結晶体クリスタル」。


表面には幾何学的な不気味な紋様が刻まれ、内部から赤黒い光が脈動するように明滅している。それは機械のようであり、同時に巨大な生き物のようでもあった。


『解析完了。……この反応は……!』


エリスの可憐な顔から、一瞬で色彩が失われた。


その瞳に宿ったのは、かつて見せたことのない、激しい衝撃と戦慄だった。


『ヴォイド……! 当星の第七外縁探査艦隊を完膚なきまでに壊滅させた、銀河の捕食者……「浸食型自律兵器ヴォイド」です!!』


「銀河の捕食者……!」


和也の背筋に氷のような激痛が走った。


エリスを乗せた銀河帝国の探査船を撃墜し、宇宙の星々を食い荒らしてきた悪夢の存在。それが、エリスの放った微弱な通信波を辿り、この地球へとやってきたのだ。


『マスター……! ヴォイドの先端部から高密度の崩壊粒子反応を確認! ターゲットは……地球!!』


画面の中で、漆黒の結晶体が不気味に赤く発光し、地球へ向けて「崩壊波」の照射体勢に入った。


世界の命運を賭けた、本当の「地球防衛戦」の幕が切って落とされた。


和也は恐れを拭い去り、力強く叫んだ。


「月面防衛陣地『ヤマト』、全システム緊急起動! エリス、アリス……地球の未来を、俺たちの手で掴み取るぞ!!」


『御意、マスター!!』


極寒の神威島から、そして月面から、全人類の希望を乗せた超技術の光が、深宇宙の闇へと解き放たれようとしていた。


(第6話・完)

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