公爵領の疫病との戦い
アレクサンダーはビビアンと別れた後、再びアカデミーに戻った。
ロイヤルアカデミーでの薬の製造をはやめ研究室の皆と一緒に少しでも多く薬を作ることにした。
アカデミーの上官と合い、公爵家で発生した疫病は早く手を打たなくてはこの国中に広まってしまうこと、薬の一刻も早い薬の製造が大切な事などを直接アカデミーの上官に訴えた。
アカデミーにはエランドールから多額の寄付を毎年受けている、国王の誉れも高い領だ、上官も彼の依頼を引き受け、薬の製造を研究室一丸となり進める約束をしてくれた。
次の日から朝からアカデミーに行き夕方まで製造過程に関与するようになったので、伯爵領の留守番はラルフ夫妻とビビアントと相談してロメオとマリオに交代でしてもらうことになった。
ラルフは丁重な断り方をするが、ロメオかマリオが伯爵家の玄関で家主は留守だと言えば、その迫力に負け訪問してくる貴族も諦めて帰って行った。
伯爵家の寄り親の公爵家の領主もたびたびアレクの館に来て面会を求めたが、そのたびにラルフが丁寧に断りをいれた。
アレクサンダーはアカデミーに許可をもらい一人で遅くまで残り仕事をしているが、仕事が終わると伯爵領には戻らずエランドール公爵家に戻っている。
彼は今までの寂しさを埋めるようにビビアンの側にいた。
父も兄も公爵領の疫病が収拾がつくまでの期限付きではあるが、アレクサンダーの滞在を認めた。
ビビアンや屋敷の皆は彼を当然のように受け入れた。
お父様の配慮で寝室だけは別に彼のために用意された。
ビビアンはアレクと会えた次の日の午後から病は全快したとの医者のお墨付きをもらい、次の日の朝からは、ローズと再び公爵家の厨房に立っていた。
アレクはしばらく公爵家からアカデミーに通うというので、彼の好物をたくさん作ってあげようと思った。
アレクと離れている間、彼に彼の好きな料理を作ってあげたいと、いつも思っていた。
朝食、夕食の他、彼のお弁当、お父様、兄様、ついでにフェルナンド様の弁当を毎日作った。
疫病と戦う彼等に美味しくて栄養価の高い食事とお弁当を提供したかった。
アンナも料理長もそんな私にいつも協力してくれた。
私は公爵領の屋敷の料理には必ず体の抵抗力を高めるためアレクの薬草をいれた。
ビビアンはこの国では初めてのマスクを屋敷の女性陣と一緒に作った。
白色マスク、黒色のマスクは男性用、ピンクや肌色のマスクは女性用でゴムは残念ながらこの国にはなかったので細い紐で後ろで結ぶように作った。
屋敷の皆にも港に行くときはマスクをつけるようお願いした。
手洗い、うがい、マスクの着用はこの領に提唱したい。
アニーさんの商会でもこのマスクの商品に注目してくれて、たくさん無償で公爵領への提供を約束してくれた。
アレクサンダーの薬がこの国に出回るまで、他の領でも時々発生する疫病にマスクが有効なら、本格的にマスク製造に乗り出すらしい。
マスクは疫病以外にも冬の間の普通の風邪の予防にも有効なので、あれば便利なものだと、サリーさんに教えてあげた。
お父様と兄様、フェルナンド様は朝から公爵領全体におふれを出し高熱および咳の症状が酷い者、とくに子供、老人、病人は役人に届けを出し、収容所に入ることを要請した。
また領内の住民に疫病予防に手洗い、うがい、外出時のマスクの着用をすすめた。
公爵家からのおふれを出してから、4日目に10人ほどの疫病患者港付近で見つかりが収容所に連れてこられた。
病状の比較的軽いものは対処療法でアレクの作った薬草のせんじ薬を飲ませ、栄養価の高い物を食べさせた。
病状の重い者にはアレクの薬が処方された。
最終的に病の数はこの領でも最大500人にのぼったこともあったが、体力のあるものは自宅療養で薬草のせんじ薬を飲ませたり,施設で薬を飲ませたおかげで徐々に下火になりどうやら疫病での死人はでなかった。
この疫病は一度感染すると免疫ができ再び感染することがないと言うことなので、私とロメオとマリオは自由に動くことができた。
ロメオもマリオも今伯爵家を交代で守ってくれているが、時々交代で公爵家にいるアレク様に伯爵家の屋敷であったことなのを報告に来る。
マリオが伯爵家で留守番の時、公爵家の対応にでたとき、アレクサンダー様のことを、娘の婿だと言ったので公爵様に完全に切れてしまったらしい。
マリオはあくまでも私とアレク様の見方だ。
マリオはかなりしょげていたが、アレク様はマリオは正しいとかえって褒めていた。
私は今回のことを兄様に話して、この公爵様に何とか圧力をかけてもらおうかと思ったが、兄様は今は自分の領のことで忙しいので、この疫病騒動が終わるまで、当分の間ロメオ様に伯爵邸には行ってもらうことにした。
3月初めから始まった侯爵領の疫病騒動は3月の終わり頃静かに収まった。
王室から招待を受け公爵家のエドモンドは王宮に行き、疫病終結報告を国王にも報告して王から多大な誉め言葉をもらい、王様は今後他の領に疫病が出た時のモデルケースにするとエドモンドに大変感謝していた。
公爵家のエドモンドには王から名誉伯爵の称号を与えらえた。
公爵家のエドモンドの推薦があれば、もし伯爵領が空けば伯爵になれると言う、かなりの特権だ。
エドモンドは辞退したが、王としてはお宝を散財するより爵位のほうが良いと思ったのだろう。
私はその話を後から聞き、何ともせこい王だと思った。
今ある伯爵家が何か不祥事をおこし取り潰されるか、領主の伯爵自体が辞退しなければ、伯爵家の爵位は授けられない、という荒唐無稽な爵位だった。
王様はフェルナンド様が立派に立ち直ったと聞き、とても嬉しかった。
王妃や次期国王の前では彼を庇うことは出来なかったがやはり彼は自分の息子だ。
公爵家でやる気のなさを出し、トラブルを起こさないか心配していたが、何事もなかったことを安堵していた。
そんな和やかな会話に、いきなり次期国王の第一王子のラインハルトがわりこんできた。
彼は今回の伯爵家の功績を称えることもなくエドモンドに「5月に私が国王となる戴冠式の儀式があるので、そのための葡萄の酒の追加購入の依頼する」と自分勝手な話をしてきた。
ラインハルトは第一王子に今は酒を造る季節ではないし、すでに約束どおり王室には5樽の渡してあると、どうどうと断った。
公爵家で大切に飲んで残っている3樽の山葡萄の酒は公爵家の大切な行事にとっておきたかった。
今年の春は息子のアシュレイの婚儀も予定されている。
フェルナンドも今年の夏までには、念願の恋人と結婚を予定している。
「次期国王の私を馬鹿にしているのか?」ラインハルト様はお父様を睨んだ。
命令に従わない公爵家の当主を苦々しく思い、ラインハルトが何より面白くないのが、あの気にくわない第3皇子のフェルナンドが、立派に立ち直り領土を治めると言う話だ。
我が公爵家を面白く思っていない次期国王第一王子はこの話を聞き、王国に多大な献身をしている、我が公爵家やフェルナンドになにか悪だくみを考えていた。




