ついに公爵領を襲う流行り病、死の恐怖
公爵領に戻り無気力な生活をしている私だったが屋敷の皆は私に気を使って優しく接してくれている。
3月になり私は何とか自分を立て直したいと、商家3人娘の力を借りて、公爵領の港街にファーストフードの店を開くことにした。
私の話を聞き、「港に集まる船員達も喜んでくれると」兄様はとても喜んでくれた。
公爵家の厨房に来ているアンナさんの友人の息子さんがパン屋を侯爵領の港に開くので、そこで、片手で食べられるサンドイッチ、ハンバーガー、コロッケパンなどを作り売ってもらおうと思った。
私はロメオとマリオを連れ、港のあちこちを店を探し歩いた。
兄様は街の裏には物騒なところがあるから、港の大きな通り以外は立ち寄るなとの話だったが、メイン通りには適当な店が見つからず、ついついメイン通り外れた道を歩いてしまった。
そしてそこに赤い顔で酷く咳をして呼吸困難になっている3人が道路の端で倒れている姿を目撃した。
彼等は皆見慣れない制服を着た外国船の船員だった。
私はロメオとマリオの静止も聞かず、彼等の側に行き彼らの状態を確認した。
彼等の顔に手をやると額が燃えるように熱い。 咳が出て呼吸があらい。
インフルエンザの重症患者の症状に似たこの症状はアレクが話してくれたこの国に時々起こる流行り病の症状に似ている。
私はロメオとマリオに口を布で覆い、港の衛兵を呼び兄様に連絡をつけるよう依頼して、その後私たちはすぐにベッドがある空き家を見つけてもらい彼らを運び、医者の手配をした。
医者の話では彼等は体力があり、発見も比較的はやかったので、どうやら助かるようなので、私は安心した。
ロメオを通し、感染が拡大しないように兄様に公爵領全体に手洗いの習慣、それから口を覆う布の掲示をしてもらうことを伝達して、私は屋敷に戻った。
屋敷で私とロメオとマリオはしばらく部屋に隔離されることになった。
二日間が立ち、ロメオとマリオは少し熱が出た程度で回復に向かっていだが、私の体は高熱で悲鳴を上げていた。
このまま死んでしまうとの恐怖で苦しい呼吸の中でひたすらアレクの名を呼び、彼の助けを求めていた。
アレクに死ぬ前に一度だけでも会いたかった。
その頃アレクサンダーは途方に暮れていた。
彼の薬認証の話が王国中に知れわたり、ひっきりなしに屋敷には他領から挨拶に来る人達が後を絶たない。
次から次へと縁談話も持ち込まれ、毎日押し寄せてくる貴族達にうんざりしていた。
エランドール公爵家の皆に送る薬はすでに自分の研究室でできていたが、これを侯爵家に渡せば、ビビアンとの縁はすべて切れてしまうようで、なかなか公爵家に行くことが出来なかった。
ビビアンとあんな風に再会してしまい、彼女が毎夜、元気そうにみえる彼と一緒にいるのかと思うと夜も眠れなかった。
おかげで公爵家に渡す薬は彼が夜眠れず作った薬のおかげで300人用の薬ができた。
3月になりロイヤルアカデミーの仕事のため研究所から馬車の送迎が来てアカデミーの研究室での仕事ができるようになり、煩わしさから解放された気がした。
研究室で薬作りに集中ている時だけ、すべてが忘れられる。
薬を作っている間だけ、最近煩わしくなってきた伯爵領での出来事、ビビアンと元婚約者のこと、すべてを忘れられた。
私には伯爵領での仕事があるのでいつも午前中で退社しているが、研究室を出たところで、研究員が2,3人で話している話に耳を疑った。
公爵家で、疫病が出たと言う話だ。
そして次に出た彼らの話に思わず体が硬直してしまった。
「そう言えば、自分の婚約者を不幸のどん底に落とすと言われている公爵家の悪役令嬢ビビアン様が疫病にかかりっているとの噂だがすでに虫の息だと言う情報も僕の従弟からあがってきた、たぶん罰があたったんだろう、いい気味だ」 彼等は皆ビビのことを悪く言い笑っていた。
違う彼女はそんな女ではない。
彼女は以前婚約放棄された婚約者達のため、彼らが一生懸命幸せになれるように尽くしている。
今回のことも、そう思うと私が元婚約者に対ししている嫉妬する自分が器が小さい男だと思えてしまう。
それより彼女が心配だ。
私はアカデミーの馬車で自分の屋敷まで戻り、ラルフ夫婦に事情を話し、午後からの予定をすべてキャンセルして薬の包みを持ち、エランドール公爵家にラルフに馭者をお願いして、エランドールに馬車を走らせた。
もう、諦めてしまった彼女への愛だが、心の奥で今でも燃えている、彼女にもう一度だけでも会いたい。
ビビ、僕が着くまで待っててくれ、アレクサンダーは祈るような気持ちで彼の包みの中にある薬を抱きしめていた。




