聖【性)なる夜、悪役令嬢が来りて笛を折る
年の瀬も押し迫り、私とアンドレ様は重ぐるしい空気の中、奇妙な共同生活を続けている。
今日はロメオが来て、アレク様から私へのプレゼントを渡してくれた。
去年の今頃は楽しかったな。
クリスマスには恋人達がプレゼントを交換するよ、と私が彼に教えてあげて、彼に男性用のマフラーをあげた。
アレクが今でも私のことを忘れていなかったことが嬉しかったが、今年の私は彼にあげられる物はなにもないことが悲しかった。
プレゼントの中には私の名入りの葡萄酒の小さな樽と、真新しい四角いマフラーが入っていた。
マリオに話だと今年の山葡萄酒は大変出来が良く、アレク様は侯爵家にもたくさんの葡萄酒を持って行ってくれたらしい。
この四角い肩掛けは柄のない物で今年の冬用にサリーさんが考案したものだった。
私の店はサリーさんに今任せているが、定期的に私にもお金が入ってきているので上手くいっているようだ。
私はこのお金をアンドレ様との生活のために使っているが、食料品は侯爵家の援助があるので、アンドレ様の物を買う以外ほとんど使うことがない。
アンドレ様は今日の朝食後優しい顔で今日は2人で買い物に行こうかと行ってくれた。
彼が口を聞いたのは、2週間ぶりだった。
彼にも学園から給金が出たので、私に何か買ってくれると言った。
最近二人の間に重苦しい空気が流れていたので、私は快く承諾した。
でもアレクからプレゼントが届くと、彼の態度は一変してしまった。
自分への裏切りは許さない、彼は怖い声で私に言った。
恋人たちのクリスマスの日ぐらい許してくれてもいいじゃない、と私は彼に言ったが彼は私を許してくれそうにない。
彼のプレゼントしてくれたマフラーを私の肩から取って、グチャグチャに足で踏みつけた。
私は彼を裏切ってないし、最初の約束通り、彼の試験日まで、側にいて彼を応援してる。
彼は私の用意した昼食を食べると、今日は私に一日中部屋にいるよう言い、私へのプレゼントの酒というものを夜一緒に飲むので私の部屋の鍵を開けておけと言って厨房から自分の部屋に引き上げて行った。
私は彼のプレゼントの葡萄酒を自分の部屋に持って行き、自分の部屋の鍵をしめた。
私と夜2人で酒を飲むということはどんな意味があるのか、私はわかっていた。
直樹は以前から私の体を求めていた。
私はそれが嫌で彼から離れたのに、今また彼に体を取りこまれようとしている。
ついに京子に戻り、直樹と対決する時がきたようだ。
でもやはり私は夜が怖い、怖くて怖くて、アレクのプレゼントしてくれたワインをがぶ飲みしてしまった。
聖なる夜、アレクが私の部屋に来てくれたら、どんなに嬉しかっただろう。
私は夜のとばりがおりるまでにワインをほとんど飲み干してしまい、ふらふらになりベッドにたおれこんだ。
私を苦しめるアンドレも直樹も大嫌い。
嫌いな人に抱かれようとしてる私も大嫌いだ。
もうどうにでもなれ、何もかも忘れたい。
そんな混濁した意識の中で鍵を外し、アンドレの体にいる直樹を待っていた。
アンドレは私がベッドに寝ているのを確認して私のベッドに入ってきたが、私は抵抗するのを諦め、アレクと呟きそのまま意識を手放した。
私が意識を手放した後、どうやら私の体に悪役令嬢の魂が入ってきたらしい。
アンドレの体とビビアンの体が取っ組み合いをした後、どうやらビビアンの魂は直樹のほの暗い魂に共鳴してしまったようだ。
悪役令嬢の魂は直樹の魂にほれて、アンドレの体から彼の魂を無理やり引っ張り出してしまった。
朝私が目を覚ますと、アンドレ様は裸で私の上に乗っかっていた。
彼を揺り起こすと彼はふらふら私のベットから出て裸で床に倒れこんだ。
私もほとんど裸状態であったが、体に異常はなかった。
私は服を着て裸で倒れているアンドレ様を抱き起した。
アンドレ様は小さな声で「すまない」と一言だけ言って目を閉じた。
アンドレ様の体は何とか直樹の魂と戦ってくれ、私を守っていてくれたようだが、力尽きてしまったようだ。
私は彼を動かすことが出来ず自分のベッドに寝かせた。
彼は2日間私のベッドで寝て、目をさました。
彼の心から直樹の霊は消えていた。 私は彼の目を見て、そう思った。
一体悪役令嬢ビビアンの霊は直樹の霊を何処に持ち去ってしまったのか?
悪役令嬢は結果、私を助けてくれたのか? 私は複雑な心境になってしまった。




