心に刺さる棘
昨日は私が言いすぎてしまった。 ビビアンはアンドレに言った昨日の言葉を後悔していた。
彼だって、肩掛けを掛けてくれただけで、部屋の鍵もかけ忘れたのは私だ。
アンドレ様に過剰反応をした自分がはずかしい。
今日は朝から彼の好きな料理を作ろう。 私は朝早くから彼の好きな料理を作った。
アレクの好きなたくさんの料理はどうしても作りたくなかったので、新しい料理を工夫して彼には出している。
この家に来てすでに一か月になるが、私は自分の居場所がだんだん狭くなっていくのを感じる。
私に居場所は彼の家の小さな自分の部屋だけになってしまった。
そして、だんだんと自分が消えてしまいそうな気がして怖くなる。
このまま流されて、どんどんアレクとの距離が離れていくのを感じる。
あれからアンドレ様の前には直樹は現れていないようだ。
直樹はアンドレ様の体の乗っ取りを諦めてくれたのか?
とにかく来年早々にアカデミーの採用試験があるので、それまでは彼のそばにいて、彼の願いを叶えてあげよう、そのためには私の出来ることはなんでもしてあげよう、と食事の支度をしながら私は思っていた。
食事の支度が出来るとかれは台所の椅子に腰かけ黙って私の作った料理を食べた。
そして自分の部屋に行き机に向かい勉強をはじめた。
私はその姿を見ていた。
私はアンドレ様に多大な迷惑をかけている、彼の人生を私の我がままですべて壊してしまった。
そして今、私の過去の男に苦しめられている。
心に刺さった棘がチクッと疼いた。




