あなたを愛することはないと、彼女は言った。愛してはいけない人
アンドレの体調は日増しによくなった。
彼女の介護でもう自分によく似た男は夜にも白昼夢にもでてこなくなった。
アンドレは彼女がいれば、生活の心配もない、と思うようになった。
アカデミーに入れば、給金もでるし、彼女に対して侯爵家からもお金が出る、好きな研究に毎日打ち込むことができる。
現に、僅かな間しか在職していなかった学園からも不思議なことに給金が出ていた。
そして王宮アカデミーへの推薦状は取り消しにならなかった。
詳しいことはわからなかったが公爵家から寄付金として大金が貴族学園に出ているのかもしれない、と彼は思った。
彼女は私が婚約中してた時とはだいぶ様子が違っていた。
私が次第に我がままになってきても、穏やかに少し困った顔をしながらその我儘を聞いてくれる。
私は体が元気になってきたので、買い物に彼女を連れていくことが多くなった。
勉強の間の息抜きと彼女には言ったが、私は街で彼女と一緒に買い物をして街の人たちの反応を見るのが楽しくてしかたない。
穏やかな様子で私の好みの食料や服を買ってくれる彼女の優しさ美しさは男性からの羨望が私に向けられ、悪い気はしない。
よく行く店からは裕福なお似合いの新婚さんと言われ、からかわれたりしている。
彼女は料理が上手で優しく悪役令嬢と呼ばれていた欠片は今はもうみじんもない。
以前していた約束を反故にしてこのまま彼女と結婚して一緒になれれば、どんなに未来は輝くだろう、と最近の私は思うようになってきた。
彼女は私が勉強しすぎて、首や肩が凝ったと言うと、仕方なさそうに揉んでくれる。
でもいつも彼女は極端に私に触れられることをこばんでいる。
夕焼けが綺麗だった昨日もそんな感じだった。
寒くなってきたので私は部屋に彼女の肩掛けが置いてあるのに気が付き彼女の部屋に届けに行った時のことだ、ドワは鍵はかかっておらず、私は彼女の部屋に許可なく入った。
私に気づかず彼女は窓の外を見ていた。
彼女の小さな肩が寒そうで寂しそうで私は思わず彼女の肩を抱きしめたい衝動にかられた。
そっと肩掛けを掛けると、彼女は怒ったような顔を私に向けてこう言った。
彼女はカーテンを閉め、私の部屋に勝手にはいらないで、希望のアカデミーに入れるまで、あなたの世話はするけど、私には恋人がいるのであなたを愛することはない、と私にきっぱり言い切った。
私も思わず誤解するな、私もお前を愛するつもりはない、と彼女に言い返した。
私は自分の部屋に戻り、ビビアンには愛する人がいる、彼女は愛してはいけない人なんだ、と心の中で呟いた。




