お父様と兄様への告白
私はアンドレ様の屋敷で彼と一日過ごした。
屋敷というより3つの部屋しかない平屋の小さな家だ。
アンドレ様の体はかなり衰弱していた。
ここ数週間食事も睡眠も、ほとんど取れない状態のようだ。
彼は今まで自分の体を乗っ取られまいと一人で戦っていたのだろう。
直樹は彼の弱っていく姿を見て、乗っ取るチャンスをねらっているのだろうか?
私が彼のそばから離れないなら、直樹はアンドレ様を苦しめない。
そんな条件をだすなんて、直樹は何て残酷な人なのだろう。
これが彼の輝かしい一生をだめにした、私への罰なのだろうか?
でも、前世でも彼は私の恋人と私を引き離した、転生したこの世界でも同じことをしている彼の執念を恨んだ。 もう直樹には心がないのだろうか?彼は私への執念だけで、悪魔に魂を売ってしまったのか?
私は直樹が側で見ているような気がして虚空を睨んだ。
私は昨日,アンドレ様と話し合った。
なるべく私のそばにいること、体力を回復させて、死を遠ざけること、そして直樹に体と乗っ取られることを私と2人で全力で拒否すること、彼の希望であるアカデミーの試験のため、勉強は続けること、直樹が私の前に現われるなら、私は直樹と一緒に地獄に落ちる覚悟はすでにしている。
昨日のアンドレ様には何の変化も見られず、彼は安定していて、食事もすこしとれた。
そしてひたすら自分のベッドで眠っていた。
眠っているアンドレ様のそばで私は思った、私にとって今が地獄の中なのかもしれない。
もうアレクの優しい笑顔は2度と見られない。
私とアンドレ様のことがアレクにわかれば、彼は私を軽蔑して、恨むだろうか? 今の私には直樹と地獄に落ちるよりよほど怖かった。
もしアンドレ様が死んで直樹が乗り移る体をアレクに代えたら、私は直樹が乗り移ったアレク様を愛せるのだろうか?
翌朝公爵家の馬車が私を迎えに来た。 私はアンドレ様とともに公爵家へ馬車で戻った。
今日はロメオが馭者をしてくれているが本来なら彼等は新婚休暇で一週間の休暇をとるはずだった。
いつもなら明るいロメオは私に何も言わなかった。
何も言わず、私達を侯爵家に運んでくれた。
アンドレ様の家から公爵家に戻ると私は真っ先にアンドレ様を連れ、お父様とお兄様に面会を求めた。
屋敷の皆は私たちの奇妙な関係に皆何も言わず、無言で迎えてくれた。
父も兄も彼を送りに行って戻らない私を心配していたが、相当私に怒っていて、怖い顔がますます怖くなり強張っていた。
私は覚悟を決めて、彼等に私が違う世界から来てビビアン様の体に転移したこと、私の今までのことをすべて話した。
そして、前世で私を殺した人が私を追いかけ、アンドレ様の体を乗っ取ろうとしていることなどを話した。
お父様も兄様も私とアンドレ様を交代で見て、信じられない様子だったが、やがてお父様が私に「確かにビビアンは今までのビビアンとまるで違って、誰にでも優しい良い娘になっていた。 ビビアンの急激な変化に驚いてたが、そうゆうことだったのか」と口を開いた。
兄様も「ビビアンは美味しい物を作ってくれたり、僕を幸せにしてくれた。 今のビビアンは僕の大切な妹だ」と言ってくれた。
そして、兄様は「これからどうするつもりだ、悪魔付きになったアンドレを教会で預かってもらおうか?」といったが、アンドレ様は来年、王立アカデミーの受験を控えている。
私は彼の希望が叶うまで、側で応援したいと思います、と兄様に言った。
彼に取り付こうとしている悪魔も私が彼と一緒にいるなら彼に悪さはしないと言ってます、と兄様に言った。
「アレクはどうするんだ? ビビアンはアレクを愛しているんだろ?」その兄様の問いには私は何も答えれれなかった。
そんなとき、隣にいたアンドレ様が弱々しく答えた。
「僕がアレク様とビビアンさんの愛を守ります」と彼は言った。
その言葉はとても嬉しかったが、アレクはアカデミーに薬を出していて、治験中で大切な時期です。
彼の子爵領は経済的にもだんだん回復に向かっています、私は彼から離れます。
大切な時期に彼をこのことに巻き込みたくない、このことは彼には言わないでください、と父上と兄上に頼んだ。
私の財産はすべて公爵家に預けます、伯爵家にある店はサニーさんにしばらくお願いすることにします。
あと伯爵領のラルフさんの給金は私の財産から来年の春まで出してください。
そして来年の春までロメオとマリオは私に付けてください。
彼等には連絡がかりとアレクの伯爵家の手伝いをお願いします。
春が過ぎたら、この屋敷で雇ってください、彼等には家庭があります。
私は王様に来年の春までは婚約者になることを約束しています。
このことが王宮に知られたら、お父様にも兄様にもこの公爵領にも被害が及びます。
だからこのことは王家にも周りの皆にも誰にも知られないようしなくてはいけません。
お父様も兄様の私の話を聞き、侯爵家でも私に最大の援助をしてくれ、このことは誰にも内緒にすることを私に誓ってくれた。
そして私は最後に一番言いたくない言葉をお口にした。
春になり無事フェルナンド様のとの婚約が解消したら、私をこの屋敷から追放して平民にしてください。
その言葉にお父様もお兄様も黙って私の顔を見るばかりだった。
その後私はアンナさんに私はこの家を出るので、しばらく私は介護のため外出できないので、私のために3日に一回位、ロメオとマリオに2人で食べるだけのの食料を渡してほしいことをお願いした。
そして3日分の食料を厨房から調達した。
その後、私は自分の部屋に行き、当面のドレスとアレクがくれた体に良い薬草をぶどうの蔓で出来た特別にラフルさんが私に作ってくれたトランクに入れ、馬車にのりアンドレ様の家に戻った。
公爵家の屋敷の門を出たあたりで、私はアレクの乗る馬車とすれ違った。
彼は一点を見つめていて気が付かなかったようだが、私はおもわず顔を伏せた。
それを見ていたアンドレ様は、アレクサンダーと私の愛は悪魔と戦って自分が守ってみせる、と言ってくれた。
私は彼の言葉を信じたいと思った。




