サヨナラが言えなくて、、、
「最近お嬢様、元気がありませんね」私の髪を結いながらローズが言った。
「そう言えばオレンジを取りに行って帰ってから元気がありません、馬車の中でもすこし泣いてましたね。 アレクサンダー様となにかありました」ローズの問いに私は微笑み、アレクにキスされたことをローズに話した。
嬉しくて泣いたのよ、男性を誘惑するにはあのドレスが一番ね、と私が言うと、「お嬢様は日ごろ私に大胆なことをわたしに言う割に、案外純情なんですね、初めてのキスに泣くなんて、、、」今日はローズがとても大人に見えた。
アルフレッド様とローズはもうキスをしたの?と私が聞くと、彼女は美しい顔をバラ色に染めた。
オレンジの木の下の出来事があってから、私は2度ほど伯爵邸に行ったが、嬉しそうな彼の顔を見るとなかなか彼にサヨナラが言えなかった。
アンドレ様に一度会って話をしなくてはいけない。
その前に私はお父様と兄様にアンドレ様は私をまだ許してくれていないことを話した。
彼がこの屋敷を訪ねたのは、私にそれを言うためだったと話した。
2人は大変驚いていたが、貴族学園に行き何とか対処すると言ってくれた。
お兄さまは貴族学園でのアンドレに事を聞いてきて、彼は以前からロイヤルアカデミーに入る生徒達を教える4年生を担当したいと希望していたが、そのクラスの担当する教員は貴族と決められているため彼にはそのチャンスがなかったらしい。
「アンドレはアカデミーに入る学力も生徒に教える能力も十分あるが彼の場合、学問から離れた2年のブランクがありそれはこれからの勉強次第でなんとかなるが、肝心の貴族の称号がない」との校長の言葉に、兄様は例外を認めてほしい旨を校長に頼んだ。
もし、彼が4年生を担当すれば、校舎は別になるし、一年生のクラスのロイドと接触することは極めて困難になる。
私は兄様の話を聞き、ぜひ彼の希望を叶えさせてほしいと、お父様に懇願した。
彼も自分の希望が我が公爵家により叶えば、少しは私への憎しみも薄れるだろうと思う。
アンドレ様には私への執着と言うより、侯爵家を追放されて、資金が得られず、かねてから念願の王国アカデミーの仕事につけなかった恨みが強いように感じる。
王子の婚約のことで王家に深い関係がある公爵家が、国王に頼めば、彼のロイヤルアカデミーにはいる道も開けてくるかもしれない。
私はこのことを直接アンドレに話に行こうと思い、貴族学園に行き彼との面会を求めた。
彼は私を見たとたん、不機嫌そうになったが、私は彼に話しかけた。
「ねえ、私があなたのこと好きだったって、知ってた」 いきなりの言葉にアンドレ様はびっくりしたような顔をした。 私はあなたの顔が大好きで、あなたと婚約できて嬉しかった、だから毎日自分なりのお洒落してあなたに会いに行ったのに、あなたやあなたの周りのクラスメートたちは私のことを笑ったり馬鹿にしてたから、私の心はあなたから離れてしまった、それに婚約放棄したのはあなたのほうでしょ、私に恨みがましいことを言うのは、お門違いじゃない」私はその当時のことを知らないし、口から出まかせかもしれないが、とにかく自分をを擁護することにした。
「あの態度が好きな人にする態度か」彼は驚きながら、私に言ったが私はたぶん、と答えておいた。
子供だったのよ、それに好きなのは顔だけだったし、あなたも似たような物でしょ、と私が言うとアンドレ様も錆びついたような笑顔をみせた。
私第一関門突破したかもしれないと思い、今回の要件を切り出した。
彼は黙って私の話を聞いていたが、その話が俄か信じられない様子だった。
そして、もし彼がアカデミーに入ることが出来たら、私を許すと言ってくれた。
私はお父様と兄様に一人悩まず話をして良かった。
アレクになかなか、さよならが言えずにいて良かった。
その後アンドレ様は貴族学園の4年生の担当の先生になった。
ロイドはアンドレ様に会えなくなってしばらくは寂しがっていたが、今まで彼の取り巻きで見ていた生徒達の中で平民、貴族の友人が出来てきて今はとても楽しそうに学園に通っている。
そして秋も深まり、待ちに待ったまたブドウの季節がやってきた。
かれこれ王宮に呼び出され、フェルナンド様と婚約させられ、一年になる。
あと半年すれば、晴れて私たちは婚約放棄できる。
ロメオとマリオの合同結婚式の計画もあり、今度の皆で行うブドウ狩りにはまた大量の寄付金を持って修道院に行きジゼル様をこっそり修道院から出し、フェルナンド様と一緒に結婚式やブドウ狩りに参加させる計画をアレクと一緒にたてていた。
私は栗の入ったクッキーやケーキ作りに専念していて、今度の皆のブドウ狩りにはたくさんの美味しい物を提供したいと思って毎日厨房に入っている。
そんな私だったが、思いもしないアレクとの別れが私には待っていた。




