悪魔のような少女
2度と会いたくないと思った人に会ってしまった。
彼女は私を見てひどく驚いていたが、私がなぜこの学園で先生をしているか?聞かなかった。
まあ、彼女にとって婚約解消した後の私のことは興味を持たなかったのかもしれない。
私の名はアンドレ、侯爵家の2男だった。
彼女と婚約した当時は私は貴族学園に通っていた。
私は貴族学園で成績優秀で女生徒にも人気が高く充実した生活を送っていた。
漠然ではあるが、私は嫡男ではないので、将来、侯爵家か伯爵家あたりの入り婿を希望していた。
学生生活2年目になった時、私に婚約の話があった。
私の婚約はまだ先のことだと思っていたし、婚約するなら、今付き合って女性徒の中から一番条件の良い人を婚約者に選びたかった。
父の事業の共同経営井者であり力のある公爵家ということで父があまりにも熱心にこの婚約を勧めるので、私は一度彼女に会ってみることにした。
私と初めて会う日、彼女は急に熱を出し、自分の部屋で寝ていた。
私はほんの短い間、彼女のベッドの横で初めて彼女を見た。
熱で赤い顔をしていたが、天使のように可愛い顔の14歳の少女だった。
誰? と重たい瞼を開くと紫水晶のような美しい目をしていた。
私はおもわず彼女の手をとった。 そしてすぐに婚約を決めた。
でも、私が彼女を可愛いと思ったのは、その時が最初で最後であった。
しばらくすると病気が治った彼女は私の学園に馬車に乗って表れた。
私を見つけると大きな声で私を呼び、驚いている私をさらに彼女は驚かせた。
彼女は厚化粧をして似合わない真っ赤な口紅をしていた。
赤色に大きな黄色い水玉模様のドレスを着て、髪は2つに分け、右には赤い大きなリボン、左には黄色いリボンをしていた。
まるで舞台の上の道化師のような服を着た婚約者のことを笑ったりしていたが、クラスの友人達も最初は驚いていろいろ私に言ってくれたが、そのうち友人たちは私を避けるようになってきた。
彼女は誰にでも喧嘩を売るのだ。
少しでも私が注意すると怒り学園の備品を壊したり大声で怒鳴ったり手が付けられない。
そのたびに公爵家の者達が来て、弁償金と称し莫大な寄付金を学園に支払っていた。
それでも私が3年に進学すると、とうとう彼女は学園の部外者と言うことで、私のいる教室には出入り禁止になった。
もう彼女に奇抜な衣装を見ることもあまりない。私は心の奥でホッとした。
彼女が学園に来なくなっても、私は婚約者の義務として月に一度は侯爵家を訪れていた。
彼女は些細なことですぐ癇癪を起し、私たちの間は最悪であった。
彼女が私によく言う言葉は、(なんで私と婚約したのよ、おかげで迷惑してる)だった。
迷惑しているのは私の方だ。 私は彼女との婚約解消を切に願った。
私は貴族学園で4年生に昇級していた。 このまま学園を卒業して1、2年後に彼女を妻にしても良いのか、真剣に悩んだ。
大きな公爵家のバックアップが私たちの侯爵家のプラスになり、私は彼女の持ってくる莫大な持参金でアカデミーに入り好きな研究が続けられると以前は思っていたが、このぶんでは私の結婚生活は地獄になるだろう。
そう思いながらも婚約を続けていたが、ある日私は我慢の限界がきた。
思わず彼女に手を挙げ、彼女が私の前で始めて泣いた。
私は婚約解消をその場で公爵家に申し出て、後にエランドール家から解消の知らせを受けた。
私の両親はエランドール家のてまえ私に怒っていて、私は侯爵家から勘当され、平民になった。
両親との話し合いで、貴族学校で卒業までに学費と小さな住む家を提供された。
それからの私は毎日、寝る間も惜しみ勉強した。 本当は王宮アカデミーに行き好きな研究をしたかったが、学園を卒業してからは生活のため苦労して好きでもない仕事をやり、やっと貴族学園で教師として仕事を得た。
彼女のほうは、婚約解消の後また婚約したらしいが、半年前にまた婚約解消されたらしい。
あの性格だ、婚約放棄されるのは決まり切っている。
社交界では悪役令嬢と呼ばれていたらしいが、小悪魔から悪役令嬢に成長したのかとあざ笑っていた。
婚約解消後は彼女のことは頭の傍らに押し込め忘れるようにしていたが、彼女は突然女神のような美しい姿で私の前に現われた。
彼女を迎えに来た男には見覚えがあった。 彼は確か伯爵家の次男と聞いていたが、学園ではあまり目立たない存在で人付き合いが悪く、クラスは2級下で私とは接点がまるでなかったが、やはり成績優秀で後に王宮アカデミーに入ったと聞いていた。
その彼がなぜビビアンといるのかは疑問だ。
彼等は今年貴族学園に入る男の子と一緒に仲良く帰って行った。
彼女は上品で穏やかで私の知る悪魔でも悪役令嬢でもなかった。
私を破滅させたのは彼女だ。 彼女は私の身分も夢も消してしまった。
それなのに彼女は自分だけは、何事もないような顔で私の前に再び女神のような姿で現われた。
その時私は怒りとも悔しさとも惨めさともちがう、何とも言えない感情の炎が彼女に向かっていくのを感じた。




