アレクと私の中のさざ波
アルフレッド様に会ってから、私の心は憂鬱な気持ちになっていた。
こんな気持ちでアレクの屋敷には行けないと思った。
アレクの伯爵家は今はラルフ夫妻がついているし、彼の食事の心配もしなくて良い。
山葡萄の季節も終わり、毎週のようにロメオやマリオに手伝いに行かせることもなくなった。
元気のない私をフェルナンドは心配してくれた。
お父様もお兄様も慈愛に満ちた目で私を見守ってくださったが、これは私の問題なので誰にも解決できない。
ローズにだけは私の心情を打ち明けたが、彼女は黙って私の話を聞いてくれた。
そして「アレクサンダー様はお嬢様が2度婚約放棄されたことを知っても心変わりするような人ではありません」といってくれた。
私はローズに、あなたも知っているでしょう、私があなたを醜く鞭で打ってた姿を、、、私は社交界では悪役令嬢と呼ばれていたの、アレクは私が2度も婚約放棄されたことも悪役令嬢と呼ばれていたことも知らずに、私の婚約者を引き受けてくれたのよ。
私はその気持ちが嬉しくて、彼にはできる限りのことをしてあげたいと思っていたけど、今回のことで彼は彼なりに私との婚約のことを考えると思うので、すこし私と彼との間に距離を置こうと思うの。
それに、彼と王宮で出した婚約届は一応白紙になっていると思うから、今なら彼も私とのことを考え直すことができるでしょ。
ここまで話すとローズは私に「もしアレク様とのことが無しになったらお嬢様はどうされるのですか」と聞いてきた。
あと一年ほどたったら、私は修道院は嫌なので、お父様に頼んで平民になって立派な屋敷で気楽な独り暮らしをするわ、と彼女に言った。
その後、私がアレクの屋敷に行くときは商品の投入の時とお店の代金を清算する時だけになった。
アレクは今まで通り私には優しく接してくれるがやはり彼も思い悩んでいるように見えた。
私は直接そのことを彼と話し合うのが怖くて、用事がすむとすぐ戻ってしまうのでラルフ夫妻は寂しがっていたが、私にはそれが精一杯のことだった。
交代で馭者をしてくれるロメオもマリオも私たちのそんな様子を見て心配しているようだった。
アレクサンダーは今日もビビアンの馬車を見送り、深いため息をついた。
新年のパーティーの後、彼女はあきらかに様子がいつもと違っていた。
彼女が婚約放棄されていたことは、私には何の問題もなかったが、気がかりは彼女の以前の婚約者がもう一度婚約を申し込んできたことだ。
彼は自分よりはるかに大人の男でビビアンの兄の友人だと言った。
性格がまるで合わないのが婚約放棄の理由だといっていたが、彼女は勇気があり慈悲深く優しい性格でどうみてもお似合いの2人だった。
2人に何があったのかは知らないが、鞭を持った派手なドレスを彼女が着ていても、穏やかそうな彼から婚約放棄の言葉が出てくるとは思えなかった。
ビビアンは彼に婚約放棄されて、たぶん悲しんだであろう、その彼からまた婚約を申し込まれ私の手前困っているのかもしれない。
彼女のためには、私は彼女を自由にしてあげなくてはいけないのかもしれない。
でも、今の自分には手放す勇気はもてない。
今日も彼女にそのことで何か話さないといけないと思ったが、何も言えずに帰してしまった。
アレクサンダーは彼女に、自分の栽培した薬草で最高級の薬を作りプレゼントするうために自分の薬草室に戻るのであった。




