ブドウの林、伯爵家の使用人
今日は護衛を連れてアレクのところに午前中から出発した。
馬車の中で、ロミオとマリオに伯爵家の使用人の話をすると、ロミオは募集要項にぴったりの人がいるといった。
ロミオとマリオは雇われ傭兵になって南の国境に手配されたとき、大変お世話になった先輩にあたる人が仕事をさがしているといった。
彼の名はラルフ、ロメオとマリオは南の国境に4年ほどいたが、その後、さらに報酬の良い北の傭兵になり、彼とは別れたが、時々連絡はとっていたようだ。
今回公爵領で護衛として雇われたことを馬車便にて、ラルフに知らせていたようだ。
彼は面倒見がよく、大変頭の良い人で武術の他、文字や計算、生きるためのたくさんのことを若い彼らに教えてくれたようだ。
体を動かすこともいとわず、以前は村で野菜を作っていたが、干ばつの時村を離れお金の稼げる傭兵に志願した。
年齢は47歳で村で25歳の時結婚して10年ほどは村で畑を耕し生活していたが、干ばつのため、村を離れ、稼ぎの良い傭兵に志願して稼いだお金を12年間定期的に妻に送っていたそうだ。
南では両国の関係が少し改善したので、たくさんの傭兵は必要なくなり彼も妻のいる村に帰る予定で傭兵の仕事をやめた。
ロメオに挨拶に来る前に妻のいる村に戻ったが、耕す土地はほどんどなく、村に仕事がないので、仕事を探していると言う。
ロメオとマリオの待遇の良い仕事を大変驚き、自分も公爵領に仕事を見つけたいと希望している。
ロメオは彼に大変お世話になったので、仕事が見つかるまで、自分達の借家に住まわせているという。
近いうちに兄様に彼のことを相談するつもりだったようだ。
港の自警団とか公爵領には仕事があるが、奥様を呼び寄せるなら、伯爵家が良いと思う。
公爵領とも馬車で1時間半の距離だし、今のところあまり給料は出せないが、部屋はあるし、畑仕事ができるなら適任だ。
さっそくラルフさんのことをアレクに頼んでみようと思う。
ロメオとマリオの推薦なら間違いない。
彼にも伯爵領の当主となるなら、屋敷の協力者は必要だと思う。
今日もたくさん調理パンをもってアレクのところを訪れたが、彼は相変わらず眠そうな顔で畑にでていた。
今回の事件のこともあるし、領土の偵察もあり、屋敷のことをなにからなにまで一人でやるのは、無理がある。
私も婚約者とし協力を約束したが、毎日アレクのところに行くことは、できない。
アレクに使用人のことを話すと領地経営に赤字があるので、満足に給料を出せないと言った。
領土経営の赤字が解消するまでは、私がラルフさんを雇うということにして、婚約者の家に派遣する形にすると彼に言った。
私としてはそこまでする必要はないように思えるが、とにかくこのモジャモジャ頭をほっとけない。
彼の薬草の研究を応援して良い薬を世に出してほしい。
それに父や兄に修道院送りといわれ立場のない私の婚約者になってくれ、居場所を作ってくれた。
借りの婚約だとしても4年間は自由な時間が出来、修道院行の執行猶予がついた。
私はその4年の間に土台を固め、しっかり自分の人生を歩む道筋を作らないといけない。
まあ、父も兄も私には優しいし、お金も今回のことでたくさんあるので、一人で生活しても一生困らない生活はできそうだ。
ラルフさんには明日私のところに来てもらい、仕事のことを打合せすると、2人に言った。
ロメオとマリオも私には感謝してくれ、私のためなら、命も惜しまないと言ってくれた。
ちょっと待って、嬉しいけど、あなた達には婚約者がいるじゃない、命は惜しんでほしい。
簡単なスープとパンで昼食をとり、私はアレクにブドウの絵を見せた。
色は紫か薄いグリーンの実、房にたくさんの実をつけた木を何処かで見たことがないか? と聞いた。
彼は一度 伯爵領の端の土地でこんな木をみたことがあったが、その時はあまり実がついていなかっが黒っぽい紫色の実がついていたと私に言った。
今は秋のような季節だから、そろそろ実がついているかもと、私たちは伯爵領の端の森に行って見た。
そこには少しブドウとしては小ぶりではあるが赤ブドウの木がたわわな実をつけてならんでいた。
試しに食べてみるとほどよく甘く酸味もありぶどうの良い香りがした。
これは山ぶどう? でも山ぶどうにしては、少し実が大きい木なのかもしれない。
このブドウはこのまま果物としても売りに出せるけど、ワインは秘密企業だ。
このブドウの木が原料だと知られると隣の領土に近いので木を奪われるかもしれない。
誰も入ってこない、小鳥たちだけが知っている秘密のブドウの林、私は悪役令嬢のように、その林に立ち不敵な笑みを浮かべた。
同時にお父様達のアルカポネも真っ青な悪人顔が笑うのを想像した。
我が領はかなり儲かっているから、これ以上儲けると、王宮に目をつけられ、ややこしいことになるかしら?
我が領には、港もあり私兵もたくさんいて、皆王宮の騎士達には負けていないし、まあ、お父様、お兄さまがにらみをきかせれば、王宮も黙ってしまうかもしれない。
みなで摘めるだけのブドウの実を瓶に摘み、馬車で大切に持ち帰った。
屋敷に戻り私は皆に言った、 さあ、これで美味しいワインを作るわよ。




