次期国王が、私達に突き付けた難儀な要求、駆け落ち?
ラインハルトは影からエランドール公爵家の結婚披露宴の話を聞き、たくさんの貴族が披露宴に訪れた盛況だったことを報告した。
影は結婚式のため臨時に雇った女性メイドと男性サーバントの中に紛れていて、パーティーの一部始終をラインハルトに報告した。
その中でも義弟フェルナンドが幸せにそうに伯爵令嬢と参加していたという報告と悪役令嬢のビビアンが噂と違い美しく優しい人だと言う報告を聞き机を叩き割らんばかりに怒った。
ビビアンは披露宴が終わった後、臨時雇いの使用人にも丁寧にお礼を言い、軽食を出してくれて、小さな箱に入ったリンゴジャムをプレゼントに渡してくれたそうだ。
男性の影はビビアンの美しさに感激して帰りがけに握手してもらい、彼女は悪役令嬢とはかけ離れていて婚約者ととても仲が良かったと報告した。
ラインハルトはその後。自分が社交界に流した噂がじきに消えていくのを確認し、自分の計画が失敗したことを知った。
怒りに燃えたラインハルトはあろうことか、自分と結婚した奥方と上手くいかないのは、すべてフェルナンドとビビアンのせいにした。
中でも、「フェルナンドの幸せは我慢できない」とひどく醜い計画をたてた。
フェルナンドとビビアンを誘拐して自分の前に連れてくる命令を危険な仕事を請け負う影達に命令した。
その日から影達は2人の様子を伺い誘拐する機会を狙っていた。
ジゼルさんは伯爵家に養子縁組され、伯爵家の娘としてフェルナンド様と付き合っている。
いずれ彼等は結婚して我が領の寄リ子の子爵領を継ぐ予定だが、お父様は疫病を無事に納めた褒美に伯爵の爵位を一つ授かったので国のどこかに空きの伯爵領はないかと探していた。
フェルナンド様はジゼルと暮らせるならどこでも良いと言ったが、私もその気持ちがわかった。
私はアレクがアカデミーで仕事をしている間に早くジゼルさんと2人で暮らしたい悶々としているフェルナンド様を誘い2人でこれからの暮らしに必要な家具の下見に行こうと誘った。
ロメオに馬を出してもらい、賑わう公爵家の港に着いた。
最終的にはジゼルさんが選ぶことになるだろうが、2,3点候補を挙げて、彼等の門出を祝い私のお金で家具はすべてプレゼントするつもりだ。
フェルナンド様とジゼルさんは離れ離れになり今まで辛く悲しい思いをしてきた。
2人には早く幸せになってほしい。
公爵領の港の家具屋を何点か回り、疲れて何か飲み物を飲もうと店を探し小さな店を見つけた。
ロメオも家具店など2人について護衛をしていたが、ビビアンが飲み物を買ったらすぐに馬車に戻ると言ったので先に馬車を止めてあるところに戻ることにした。
果物ジュースを店で買った時、フェルナンド様は私に真剣な顔で「姉様には本当に王宮から連れ出してくれて、感謝している。 僕達が幸せになれたのも、すべて姉様のおかげだ。 僕は生涯姉様に命を懸けて恩返ししたい」と言ってくれた。
ロメオが待っている馬車止めの場所に向かう途中数人の男達につかまり馬車に押し込まれた。
フェルナンドは馬車の中で私を守るためめちゃくちゃに暴れたが、取り押さえられて、何かを注射され、
静かになり体が馬車の中で崩れ落ちた。
私はフェルナンド様を抱き起し、何度も彼の名を呼んだ。
私達は城の裏門から城の中に入れられ、黒い覆いを被せられて、暗い城の奥の部屋に監禁されてしまった。
私はフェルナンド様を揺り起こすと彼はかすかに目を開けた。
しかし彼の目は焦点が定まらず、私の呼びかけにも反応がなかった。
私は床に転がるフェルナンド様の頭を膝に乗せ、フェルナンド様のかすかに震えている手を握った。
「お前たち、仲が良いな」背後から男の声がした。
そこにはフェルナンド様の義兄のラインハルト様が護衛兵2人をともない立っていた。
私はフェルナンド様を守り、ドレスの下から外出の時いつも持っている短剣を2本だした。
私は短剣の名手だ、この短剣で護衛2人を止めることが出来れば、驚いているラインハルトの剣をとりあげ、フェルナンド様と無事にこの城を出ることができる。 たぶんこのことは極秘で行われてることなので、城が大騒ぎになれば、ラインハルトの立場も悪くなる。
一か八か私はこの作戦でいくことにした。
その時フェルナンド様はよろけるようにたちあがり、「兄様の思いどうりにはならない」と腰に差した剣を抜いたが、ラインハルトの護衛兵にすぐ羽交い絞めにされてしまった。
あら、もうおしまいだ、と私は思った。
フェルナンド様が人質に取られてしまった。
思った通り、ラインハルトは私に短剣を大人しく置くように指示してきた。
そして私はとなりの部屋に連れていかれた。
いったい私達をどうするつもりなのか? 私はラインハルトに尋ねた。
「やはりビビアンは悪役令嬢だな、気が強い」と彼は言い「お前たちは2人で駆け落ちしたことにしようと思う」とラインハルトは言った。
私には大事な婚約者がいるし、フェルナンド様にも思いを寄せ合う恋人がいる、なんで私達が駆け落ちをしなくてはいけないのか? まるで私には彼の言うことが、意味不明だった。
2人で駆け落ちしたことにして、この城の隅で生活してもらう、嫌なら、2人で自殺はどうだ? 頭のネジがとんでるラインハルト様の提案はどちらも嫌だった。
隣の部屋から悲愴にみちたフェルナンド様の私を呼ぶ声が聞こえた。
フェルナンド様に何をしたのか? 私はラインハルトに聞いた。
「注射は暴れるので影が痺れ薬を注射したが命に別状はない」と彼は答えた。
「どっちを選ぶかお前に考え、2日間余裕をやる」と言って部屋を出た。
私の部屋の外には護衛が見張っていた。
この部屋からの脱出してフェルナンド様の部屋に行き彼と一緒に城から逃げ出すのは無理そうだ。
私はどうしてよいかわからず、にいた。
1日たち、前日出された食事には私は手を出さなかった。
次の日も私は食事を拒否した。 それが私の答えだった。
フェルナンド様の私に呼びかける声はだんだんと途切れ、小さくなってきた。
彼は隣の部屋でどんな状態なのだろう、体はまだしびれているのか? 彼は食事もとれずだんだん弱っていくように感じる。
フェルナンド様はせっかくもう少しで愛する人と一緒になれるのに、この城で囚われの身になり私と一緒に生活することを望むのだろうか? いっそのこと、2人で死んだほうが良いのかもしれない。
答えを出せず、私は夜を迎えた。
夜になり、またラインハルトは私の部屋を訪れた。
私は、私にもフェルナンド様にも愛を誓った婚約者がいるので、ここで2人で暮らすことは無理だ、と彼にいった。
国王もこの城で私達が暮らすことは許可しないし公爵家もそんなことは許さないと彼に言った。
彼は笑いながら「父も2人が愛し合い公爵家で反対され城に私を訪ねてきたと言えば、ここでの2人の暮らしは許すと思う。 我が王宮も公爵家とのつながりを持てば、王室は強靭なものになる、もうすぐ私は国王になる、なにもかも私の判断次第だ」と醜く笑った。
次期国王はこれほどの憎悪を義弟にもっているのか? 彼が幸せになることをこんなに妨害したいのか、この人は私の返答いかんではフェルナンド様と私を殺しかねない、と私は思った。
明日の午後までには返答を、とラインハルトは言い、この部屋を出て行った。




