悪い噂
4月になり私とアレクサンダーは改めて婚約した。
彼の領の公爵にはお父様が圧力をかけてくれ、伯爵領には立ち入らないようしてくれた。
彼は結婚を申し込んできたが、私は結婚はもう少し待ってほしいとアレクに言った。
もちろん彼と一緒に暮らしたい、
私は結婚は兄様の結婚式が済み一段落してからにしてほしいと彼に言った。
それからアレクに私は、はやくに母を亡くし伯爵夫人としての教育は何もしてこなかった、と言った。
伯爵夫人になるには、それなりの行儀や交際術は必要だろう。
アレクは私の妻になってくれるなら、そんなものはいらないと言ってくれたが、正直、会社員の家族から転生してきた私は、貴族夫人の生活は想像がつかない。
前世の私は婚約者の両親がやっている食堂を手伝っていた普通の料理好きの大学生にすぎない。
お父様やお兄さまの公爵家ではのびのび好きなことをやって暮らしていたが、伯爵夫人になると言うことが、いまいちピンとこない。
お兄さまとカリナ様が結婚したら、カリナ様にいろいろ教えてもらうつもりだが、気が重いのだ。
社交界では私は悪役令嬢のレッテルが貼られているのでアレクの足を引っ張らないか心配している。
悪役令嬢のビビアン様は舞踏会に行くのが好きで、社交ダンスだけはなぜか私の体に身についているのだが、彼に体をぴったり寄せられ嬉しくて胸がときめき、アレクとはダンスは上手く踊ることができない。
そんな私にアレクはいつも微笑んでくれて、気にしなくても良いといってくれる。
アレクに結婚を申し込まれ、私は自分が伯爵夫人になることを迷っている自分がいた。
そんな私に社交界の悪い噂が届いた。
兄様が怒り顔で舞踏会から帰ってきた。
別に兄様に直接私の悪口を言われたわけではない、あくまでも噂なので、ビビアンは気にするなと兄様は言ったが、私は気になった。
私の悪い噂が社交界に流れている。
今まで地味で兄と代わり当主になったばかりのアレクが薬のおかげで有名になり、アレクの婚約者としての私に、私の悪行の噂が再び貴族社会に流れている。
このことで私はアレクを傷つけるのが怖い。
お父様は私を呼んで、誰が流した噂だか知らないが、今のビビアンは悪役令嬢ではないし、私の関係している貴族は皆ビビアンのことを悪くは思ってないので気にすることはない、と言ってくれた。
そしてやがて事実でない噂は消えていくだろう、と言ってくれた。
それでも悪役令嬢で名高い私は伯爵のアレクと結婚するのは無理なのかと考えてしまう。
アレクに私が公爵令嬢からアレクを横取りしたと言う、荒唐無稽な噂がそのうち届くだろう。
彼をこんな噂に巻き込みたくない、私は愛するアレクとはやはり結婚できないのだろうか?
そんな噂の中でアレクはいつもの通りだった。
彼の通うアカデミーは貴族出身の人が多いので彼にも悪い噂が届いているだろが、私に噂のことは何も言わなかった。
アカデミーの仕事が終わると公爵領に一度寄ってから自分の伯爵領に帰って行く。
ラルフさんの奥さんが食事は用意してくているので、毎日は無理だが、時々私の家族と一緒に私の作る夕食を食べてくれる。
そんなアレクの優しさに私は胸が苦しくなっていた。
ただもうすぐ兄様がカリナ様との結婚式がある、自分の苦しい気持ちは後回しにして、私は兄様とカリナ様の結婚式に向けて全力を尽くすように頑張ろうと思った。




