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困った私の道標~海の神さまと、私のぬりかべ~  作者: サトウアラレ
二章

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16/25

1 大地視点 

「なんでメッセージが既読にならないんだよ!!」


バンっとスマホを机に置くと、PCの横に置いていたコーヒーが零れた。


「くそ!」


慌ててティッシュをとって、零れたコーヒーを拭くと、スマホの画面が割れていた。


「は?マジかよ」


上原との関係が凪にバレてから、最初は上手くいくと思ったのに、少しずつ、違和感を感じだした。何もかも上手くいかない。凪と付き合ってる時は全部上手くいっていたのに。別れたとたん、変な感じだ。糸がプツンと切れたような。


「ちっ」


画面も一度拭いてから、割れたのが画面に貼ってある保護シートだと気付いて、ほっとした。


流石に上原との関係が凪にバレた時は、(やべ)っと思った。


凪と付き合って十か月。最初の三ヵ月は楽しかったけど、四ヵ月目で上原が入社してきた。入社してからすぐに上原から関係を迫られ、ずるずると付き合って半年。上原は遊びにはいいが、金遣いは荒いし会話も出来ない。それでも、遊びの相手としては悪くない。


これから上原との関係も上手くいくか分からないし、凪と別れるのは嫌だ。上原の事は上手くごまかして、凪と結婚して、穏やかな家庭を築く。その前のちょっとした遊びの相手、それが上原だと思っていたのに。だいたい、上原みたいなタイプは新しい好みの男が出来たらそっちに移るんだ。上原は遊びにはいいが、結婚したい相手ではない。


上原との関係が三ヵ月位経った頃に面倒な相手に手を出したかな、とは思った。


「パパとー。うちの本部長ー、仲良しなんよ?だから私、この会社、入れたんだ」


(わ。やべえ奴に手えだしたかな)とは思ったが、もう後の祭り。どうしようもない。それに上原はなぜか凪にライバル意識があるようで、凪の悪口を俺に良く言うのだ。


「私の方が仕事出来るのに、仕事やってます感が出てウザい」

「だいたい私の方が可愛い。スタイルだって良くない」

「二つも私しより年上、おばさんじゃん」

「ブランドに興味ないですって感じが強がってる感じ。貧乏な人ってバレたくないだけじゃん」


と言っては凪の事を嫌っている事を隠しもせずに言っていた。


「なんでそんなに嫌いなん?あいつになんかされた?」


俺達の事バレて、嫉妬かな?とも思ったが、上原からの返事はそんな感じでは無かった。


「え?嫌いな理由?ちょっと私より先輩なら、仕事が出来て当たり前なのに、私が失敗すると、周りがすっごい煩く言う。贔屓?もう、あの人サイテー。とにかく嫌いなだけ」


「そんなもん?」


「うん、部長に仕事を褒められて嬉しそうにして馬鹿みたい。給料分だけ働けばいいのに、社畜ってああいうタイプがなるんでしょ?こっちがサボってるみたいに見えるじゃん。ああやって、良い子っぽい感じの人本当嫌い」


「ああ、とにかく合わないみたいな?」


「うん、そう。真面目なんですねー、って言ったら『そうかな?ありがと』だって、バカにしてんの分からないの?いらつく。課長もさ、周りの人もあの人過大評価しすぎじゃない。底辺バッカ!」


とか、とにかく凪に対しても、凪の周りに対してもイライラしていた。


上原が凪の事を悪く言ってる内容も上原の一方的な八つ当たりばかり。上原は凪が羨ましいんだろうな、とは思ったが、そのことを言うと怒りそうなので黙っておいた。上原が凪に嫉妬して、俺に一生懸命になるのも可愛いし、俺にべたべたしてきて甘えてくるのもいい。


俺を取り合うみたいなのも、悪くはない。


言葉がストレートな上原は、「寂しい」「会いたい」「凄い」「大好き」とか俺になんでも言ってくる。そんな事を言われるのは悪い気はしない。


凪はそんな事は言わない。


凪も入社した時は可愛かったけどな。頼ってくれて、俺の事を尊敬みたいな目で見て。そして、一生懸命仕事を覚えようとしている姿が可愛かった。


でも、一年経って、後輩が入ってくると、凪はもう後輩に教えられるように頑張っていた。その時も、微笑ましく見てたんだ。背伸びしてる姿が可愛いく思っていた。まあ、その頃は俺には付き合ってる彼女もいたし、その頃は彼女ともそれなりに上手くやっていたつもりだったけど、合コン行くな、とか束縛がうざくて、その頃いいなと思っていた女の子に声掛けてたら、偶々そのラインを見られて喧嘩になって別れた。


そんな時に残業で凪と一緒になって、俺がコーヒー買って、凪の机に置いたらお礼を言われたんだけど、コーヒー代を出そうとしていて、今迄俺の周りにいた女の子はコーヒー奢ったら文句は言われてもお礼も軽くしか言わなかったから、新鮮に感じたんだ。


(真面目…)


そんな風に思ったけど、器用ではないのに一生懸命してる姿がいつの間にか気になって、それで人生で初めて告白をした。


「ねえ、橘さん、俺、橘さんの事、好きなんだけど、良かったら付き合ってくれないかな」


こんなセリフを自分で言うなんて思わなかった。(遊ぼう)とか(暇?何しとう?)とか、誘ってから向こうが(つきあう?)って聞く感じが多かった。柄にもなく照れたりしたけど、凪の驚いた顔は可愛いと思ったし、まあ、こんな真面目な付き合いも悪くないなと思っていた。


いつかは俺も結婚とかするんだろうし、その時は凪がいいなと漠然と感じたんだ。


だけど、上原が入社してきて、そこからどんどん歯車は狂って行った。上原と一緒にいると、ラクなんだ。


そのラクさにずるずると流されていたのだけれど…まさか、あそこで凪が入って来るとは思わなかった。時間まではまだ余裕があったのに。


上原が「ちょっと寂しい」とか言うから、少し休憩してただけなのに。


しかも最初は課長も俺らの話を良く聞いてくれて、別れ話のもつれ。上手くいかなくて、凪がちょっと上原にきつく当たってる、って感じを信じてくれてる感じだった。上原が本部長にも話をするって言ってたのに。


凪にいくら連絡しても返信はない。既読になったのもあるが、ならないのもある。ブロックされているのか?


上原は本部長や親に言いつけたらしいのに、なぜか上手くいっていない。なぜだ?こう、上手く進もうと思っても抜け出せない迷路のように道を塞がれているような気がする。


「専務が来るって?凪が異動で上手くいくんじゃないんかよ」


俺は頭を抱えてスマホを見たが、凪から返信が来ることはなかった。


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