10 凪視点
残されたのは小さな紋吉と私。まあ、私の部屋だからいいんだけど。紋吉は帰らなくていいんだろうか。私は部屋の電気をつけて、ベッドに座った。
しかし、三姫様とは、何処にいけば?私が考えていると、紋吉が「モン、モン」と言ってスマホをぺしぺし叩いていた。
「あ、壊さないでね」
私がスマホを取ると、丁度画面に結海ちゃんとのメッセージ画面が映った。
「結海ちゃんに聞けって事かな…スマホで調べろ?なんだろ?」
スマホにポチポチとメッセージを打ち込んでいく。
『結海ちゃん、宗像の三姫様って聞いてなにか分かる?』
そうやって結海ちゃんに送るとすぐに返事がきた。
『凪、宗像大社、行きたいん?明日行こうか?私も久しぶりに行ってもいいな』
「そうか。宗像の三姫様って宗像大社のことか」
私は宗像大社を調べると、ホームページに三人の姫が沖ノ島から大島、そして宗像大社がある本土で祭られていると書いてあった。
辺津宮 という宗像大社にあるお宮には、市杵島姫神 様が。残りの姫様達は大島の中津宮に湍津姫神 様、沖ノ島の沖津宮には田心姫神|様が祀られているそうだ。
御祭神は、天照大神の三女神、と書かれている。
天照大神は私でも聞いた事がある。すごく有名な神様だ。確か、日の神様、太陽の神様のハズ。その娘達って凄い神様が近くにいたんだ。
へえ、ほう、と言いながら、ホームページを覗いた。
宗像大社は近くて有名な神社って言うのは知っていたけど、昔、何回か行った事があるだけだ。海を守っている三姫様か。
「紋吉、宗像大社行ったらいいん?」
私が吉紋に宗像大社のホームページを見せると、紋吉は「モン、モン」と言いながらコクコクと頷いた。
『結海ちゃん、宗像大社、明日行きたい。車、出せる?』
『朝から行く?十時くらいに迎えに行こうか?お参りの後、昼ご飯どこかで食べてもいいんやない?うろうろするか』
『ありがと』
そう打ち終わると、紋吉の方を見た。その小さな気配が、胸の奥をじんわりと満たしていく。
「紋吉、ずっとついてなくても私は大丈夫よ。紋吉は海にいる方が力が出るの?外の方が気持ちいいんじゃないと?あ。紋吉に捧げものっち翡翠の姐さんがいいよった。ちょっと待ってて」
私は部屋を出るとキッチンに行き、冷蔵庫からトマトを取り出した。あと、何がいいだろう。紋吉は海の物って言ってたから…。と、乾燥ワカメを見つけて持ってきた。
「紋吉、トマトとワカメ。ワカメは乾燥だけど。いつも私を守ってくれてたんやね。ありがとう」
そう言って頭を下げて紋吉の前に差し出すと、紋吉はうれしそうにトマトをパクリと食べたあと、ワカメをパクっと食べて、ぴょいんと飛び上がっていた。
「乾燥は悪かった?いや、大丈夫?」
「モン!」
「大丈夫みたいだね」
私は紋吉を撫でていると、スマホが震えた。結海ちゃんかな、と思って画面を見ると、坂田さんだった。
『ワトソンからホームズへ。自体は動きだした模様。山本氏墓穴を掘った可能性アリ。俺は悪くないと説明をしてまわり、ホームズとは随分前に別れていたと説明。二ヵ月前の飲み会に本社から専務も来ていた時に、山本氏は専務の知り合いのお嬢さんに誰か良い人がないかな、みたいな話がでて、「自分は付き合ってるんで…」「ああ、そうだ、橘君とだったかな?」と、大勢聞いてた様子。上原や山本の事を詳しく知らない部署の人達も、なんだがへんだぞと首をかしげだした。ごちゃごちゃしてきましたぜ』
続けてもう一つメッセージが。
『坂田からもきた?専務が今週末、うちの支店に来るって。常務から連絡があったって、部長が動いたみたい。課長が部長に話し、部長から常務、専務に話しはいったみたいね。本部長は別に呼び出されているみたいでいなかったけど、波乱の予感』
『なんだろうね?急に色々動き出したよ?凪ちゃんは、とにかくリフレッシュしていたらいいよ』
私はそれを読んで、それぞれに「ありがとう」「わかった、そうする」と送った。不安もあるけれど、どこか心強い。まるで、見えない誰かに背中を押されているようだった。
「紋吉、急に動きだしたって…あなたのおかげ?」
スマホの画面を閉じて紋にそう言うと、紋は「モン」と言ってベッドにもぐりこむと消えてしまった。




