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困った私の道標~海の神さまと、私のぬりかべ~  作者: サトウアラレ
二章

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12/25

7 凪視点

「結海ちゃん、フレンチは宗像(むなかた)の方?」


「うん、そう宗像。凪、その店、行った事ある?」


「ううん、ない。けど、お母さんが、有名っち言ったから」


「みたいね。評判凄く良いみたいやけ、行ってみようかっち思ってさ。で、凪、なんがあったん?」


「うーん」


「彼氏との別れ方、まずかったん?」


「うん、そのことも。話すと長いし、面白くない話しやけ、私のことはまだいいよ。結海ちゃんは?元気?」


「うん。相変わらず。最近は陶芸も始めた。無になって土をこねるのは楽しい」


「凄い。今度何か作って欲しいな。土代?作品代?お金だすね」


「いいよ。凪になんか作る」


「あ。もうすぐ、道の駅の横、通るね。結海ちゃん、行った事ある?」


「あるよ。魚が新鮮っち聞いた。帰りに寄る?」


「うん、お母さんに何かお土産買って帰ろうかな」


「ああ、乾物なら昼からでもあるかも」


海岸沿いを走り、フレンチのお店まではあっという間だった。その間、結海ちゃんは私には詳しく何も聞かず、私はなんて話そうかな、と考えたりしていた。


結海ちゃんが連れて来てくれたフレンチの店は可愛い外観だったけど、中に入ると高級感があり、アットホームの中に、きちっとした特別感のあるお店だった。


「いらっしゃいませ」


「昨日予約した藤本です」


「はい、藤本様、お待ちしておりました。こちらへ」


そうして通された席に着くと、コース料理だった。


「結海ちゃん…。あのさ、ここって、お高い?」


いつの間に予約を。そう思いながら私がこそっと聞くと、結海ちゃんは頷いた。


「安くはない。でも、べらぼうに高いわけではない。私は毎回来れないけど、特別な時は来たいと思う。凪が落ちこんでるときとか、食べてもいいやん。大穴当てたしね。まあ、美味しく食べよ。五百円が三百倍になったけんね。凪、遠慮せんで食べり」


「う、うん。ありがと。凄いね。三百倍、大穴だね」


「うん、あの差しがよかった。画面に向かって叫んだよ。まくりが決まったのが熱かったんよね」


そこからは、フレンチコースには似合わない結海ちゃんの大穴話と最近ハマっていると言う陶芸の話と、仕事の話を聞いた。ご飯を食べている間、結海ちゃんは私に無理に別れ話を聞く事も無く、自分の話をしてくれた。


「結海ちゃん、ご馳走様でした」


「はいはい。今度は(せい)に連れて来て貰ったらいいよ」


「いや、結晴君に連れてきて貰う訳には」


そんな事を話ながらフレンチのお店を出ると、結海ちゃんは道の駅に向かった。


「じゃ、ちょっと買い物したり、ぶらぶら見ようか」


「うん」


私は海苔の佃煮と、ワカメをお母さんに買い、お父さんにかまぼこを買った。


「凪、スムージーとソフトクリームがある。食べよ」


「いいね」


私は本日のグリーンスムージー、結海ちゃんは季節のソフトを買った。近くにある椅子に座ると、結海ちゃんが聞いてきた。


「もう話せる?」


結海ちゃんはソフトクリームを食べながら私に聞いた。


「うん、私、同じ会社の人と付き合っとうって言ったよね?その人が後輩と浮気をして」


「は?あ、だからクソ男。あ、いや、ごめん、続けて」


「うん、会議の準備しようとしたらね…」


と、今までの経緯を説明すると、結海ちゃんは私が話している間、ずっと黙っていたのだけれど、呆気にとられているのか、静かに怒っているのか、眉間に皺を寄せて聞いてくれていた。


「と、言う事でした」


「まあ、そう。でも、今、課長や同僚がそうやって気にかけてくれているのはいいね」


「うん、その言われた当日は支店に異動した方がいいのかなって思ったりしたんやけどね。もう、辞めた方がいいのかなとかもさ。でも、私が悪くないのに謝りたくないって思って」


「凪が謝る事はないやろ。凪、役に立つかは分からんけど、なんかあったら私が入ってもいいけど。いや、私の名刺渡す。辞める覚悟もあるなら、私の名前も出していいよ。司法書士っとかそういう肩書って、会社とかはちょっと構えたりするからさ。なんでもさ、こう、使えるもんは使っていいけね」


結海ちゃんは名刺ケースから自分の名刺を二枚出した。


「凪に前、渡しているの、なくしているかもしれないけんね。あと、何かあった分の予備」


「うん、ありがと」


私は名刺を大切にしまうと、結海ちゃんの方をみた。


(せい)に連絡も取ろうと思う。私は即戦力になるように頑張るつもりではいるけど、(せい)が専門だから、ちょっと聞いてみる」


「結海ちゃん、結晴(ゆうせい)君にもご迷惑をかけるわけには」


「凪、私が好きにする。私が『仮に、こういう場合ってどんな感じ?』って家族として兄に質問するだけ。まあ、本当に(せい)に頼む時は成功報酬にして貰って、どうにかしよう。慰謝料沢山とって、問題なしって事で」


「う、うん。い、慰謝料?」


「そ。傷つける人達ってさ、簡単に考えているんよ。でも、相手にも心があって、そこが傷ついて、そして嘘が犯罪になる事も知っていないんだよ。自分だけが正義って思ってる人が多いんよ。今回も軽く考えているんよね」


「嘘?」


「うん、こっからは私の独り言。まだ、証拠は凪のメールとか話しか聴いてないし、アドバイスはしない。いい加減な事は言いたくないし、私は専門家じゃないから。だけど、私は自分の考えをちょっと声に出して確認しようと思う。晴に聞く為にもね」


「独り言?」


「元カレとその後輩、まずはこの二人が元凶よね。凪の会社で凪の仕事が出来ないとか嘘を言ったり、地位を貶めようとしてる。社会的地位を貶める行為。コレは名誉棄損罪に当たるんじゃないかな」


結海ちゃんは指を一本立てた。


「そして、仕事が出来ない等の嘘で職業上の信用を傷つけていたとしたら、これは別に信用毀損罪も考えようかな。凪は異動も考えさせられていたけんね。嘘の情報での異動で、会社にも周りにも迷惑をかける。業務妨害罪も考えて動いていいのか」


結海ちゃんは話しながら指をどんどん立てていく。


「そもそも侮辱罪も、あるか。今迄のは刑法、で、民事で慰謝料を十分請求できる。コレは後輩にも元カレにも当てはまる」


「あ、私、私が、モラハラ?パワハラとか言われてたんやけど」


「凪が、後輩にやろ?一応確認だけど、凪はパワハラ行為はしていない?他の同僚にも確認していい?」


「あ。うん、それは勿論。同僚にも課長にも確認していいけど、私はしていない。もしかしたら、知らないうちにって事は可能性としてゼロじゃないかもだけど、でも、そもそもそんなに後輩とは接点ないし。席は近かったけどね」


「じゃあ、職場の安全配慮義務違反、これ、パワハラね。で、慰謝料案件になるんじゃないかな。といっても刑事は示談に持って行って、民事はどうするかってまた別の話になるのが多そうではあるかな」


そういうと、凪ちゃんは立てていた左手の指を握った。


「そうなんだ」


「独り言終わり、(せい)にね、相談してみよう。(せい)は頼りになるから」


にっこり笑う結海ちゃん、大学に行って海外にも留学しておじさんの事務所で事務員兼翻訳兼通訳として働いている。


「結海ちゃん、…私は、はじめ、何が起こったか分からなくてさ。会社の事も元カレの事も、後輩の事も面倒でもう、諦めようって思ってたんよ。なんだか色んな事が起きて、訳が分からなくて、私が異動したら早いのかなって」


「凪、辞めるのはいい。でも、凪のせいにされるのはおかしい。凪が悪くないのなら、凪は真っすぐ前を向いていたらいいっち私は思う」


「結海ちゃん、ありがとう」


ソフトクリームを食べながら結海ちゃんはそう言ってくれた。優しくて、真っすぐで、結海ちゃんは私にとってかけがえのない大切な友達だ。


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