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困った私の道標~海の神さまと、私のぬりかべ~  作者: サトウアラレ
二章

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11/25

6 凪視点

家に帰りスマホを見ると、同僚の佐々木さん達から心配のメッセージが入っていた。


『大丈夫?』『休んでいいよ』『なんか山本がゴタゴタしてる』『上原が昼から出てきた。凄く元気そう』


佐々木さん達に、『二日、有給で急に休むことになって、申し訳ない』とメッセージを送るとすぐに返信があった。


『課長から聞いてる』『休むように言われたんでしょ?』『上原、早速こっちに偵察に来たけど何も知らないふりをしたら、凪ちゃんが何で休んでいるか聞いてきた』


上原、早速会社に来たんだ。精神病んでるって言ってたんじゃないの?呆れながらもその強さに感心してしまう。


『上原何か言ってました?私がモラハラ?パワハラ?してるって課長に言ったらしいんですけど』とメッセージを送ると、またすぐに返事が返ってきた。


『凪ちゃん→愛を引き裂く人』『橘→悪い奴、私→可哀そうな子』『正直に言うよ?凪ちゃんが、このまま会社来なければいいのにって笑ってる』


「上原…、何がメンタルやられた、よ…。何が、謝れ、よ。私は例え上原と大地が謝っても許したくないけどね」


『すみません、迷惑掛けますが、何か情報があれば教えて下さい。課長からも証拠が欲しいと言われました』


そう送ると、またすぐに返事が来た。


『了解。マカセロリ』『柳瀬課長、頼りになる~』『という事は、これは業務連絡よね。凪ちゃんと私達の平穏の為に情報収集するねー』


仲の良い同僚の坂田さんと池内さん、そして佐々木さんだ。


それからしばらくは仕事が忙しいのだろう、メッセージは無かったのだが、十七時を過ぎるとまたメッセージが入ってきた。


『凪ちゃん、無理しないで。ていうか、課長から話詳しく聞いた。本部長、マジむかつく』


『橘、何かあったら教える。スパイ活動するけん、情報収集は任せて。上原の知り合いの知り合いが別の会社におるんよ。そっちにも何か情報ないか聞いてみるけん』


『凪ちゃーん、坂田からスパイに誘われた。凪ちゃんを切るみたいな話、マジ?本部長が結局、上原と山本のやらかし、凪ちゃんのせいにするみたいって?いやいや、それ会社的にもバレたらやばいよね。ということで、私は自分が迷惑掛けられないようにスパイ話、乗る事にした。訴える時に証拠になりそうな物集めておく。戦う時の援護射撃はマカセロリ』


そんなメッセージが届く。有難い。本当、一部の人間以外は本当、仲間に恵まれていて、良い職場なんだよ。そう考えると、異動も辞めるのは嫌だな、と思った。


メッセージを閉じ、お母さんにシマおばちゃんに貰ったキュウリとトマトを渡しながら、会社の事を詳しく話し、少しだけ休む事を言うと、お母さんも頷いた。


「休める時に休みんだらいいんよ。凪はなんも悪い事してないんやろ?堂々と休みなさい。それに、そうやって課長さんも分かってくれているし、同僚も良い人がいるんやろ?有難いと思うよ」


仕事から帰ってきたお父さんにも言うと、お父さんは「凪が納得できないなら辞めてもいい。無理して働いて身体壊すより、とにかく休め。次の仕事を探す間位、俺がまた食わせてやるから、無理はすんなよ。無茶するのは好きやけどな」と言われた。


お母さんがお父さんをバシッと叩いて、「あんた、偶には良い事いうけんね。そこが恰好良いやけど。いや、無理も無茶も止めて欲しいっちゃけど。でも、凪。凪の事を蔑ろにする会社なら辞めてもいいよ。凪の身体は一つやけね」と言ってくれた。


「うん、わかった。ありがとう」


私はそう言うと、部屋に戻った。そうだ。私のせいにされて、謝る位なら辞める。その時は言いたい事も言ってやる。本部長ももう怖くない。そう思うと少しすっきりしてきた。


「今日、海に行ってよかったな。可愛い犬にも会えたし。そう言えば、海に行くといつも犬に会える気がする。旅館の犬かな?」


もんきちって変な名前つけてしまったけど、写真撮れば良かったな、と思っていた。


と、そこでまたスマホが震えた。もしかして大地?と身構えてしまったが、相手は会社でも大地でも上原でもなかった。


結海(ゆうみ)ちゃんだ」


『凪、久しぶり。元気?いや、元気じゃないやろ?母さんから凪に連絡してーって連絡きた。なんかあったんやろ?とにかく時間あるなら会おう。私、明日明後日、休日代休。時間ある。夜でも会える?』


シマおばちゃんの娘の結海ちゃん。

同級生で幼馴染で、頭が良くて、びゅーんと飛んで行く感じの無鉄砲さはあるけれど、曲がった事が大嫌い。


『結海ちゃん、久しぶり。今日、シマおばちゃんに会ったよ。キュウリとトマト貰った。私、今有給取ったから、明日、明後日時間あるよ』


私がそう返すと、すぐにまたメッセージがきた。


『じゃあ、明日、昼飯行くよ』


「はや」


思わずそう言って笑った。


『いいよ。何食べる?うどん?』


『多分、フレンチ。今日、大穴当てた。今日のラッキーカラーは黒と青と緑。スタートダッシュから熱かったね。私が奢る』


「おー。流石、結海ちゃん、大穴すごい。賢い人は違うなー」


私はそう言いながら、スタンプを返した。


『了解』


明日は、フレンチか。そう考えて窓を開けると、波の音が聞こえた気がした。


次の日、時間どおりに目が覚めてしまい、二度寝をしようかと思ったけれど、結海ちゃんと出かけるし、もう起きるかとリビングに降りて行くと、お母さんから「今日出掛けるんやろ?」と聞かれた。


「ん?シマおばちゃん?」


「そ。昨日、お礼のお礼のまた電話をしたら、凪の話になってね。『結海、と遊ぶみたいやけど、凪ちゃん昨日元気なかったけど、なんかあった?って聞かれたけ。クソ彼氏と別れてリフレッシュ中』って答えた」


「お母さん…間違ってないけど…」


「シマちゃんから『結海ちゃん、時間あるけん、凪ちゃんの話聞く相手にでもしちゃって』って言われたんよ。だけ、結海ちゃんから連絡あるやろうなって思って」


「うん、あった。お昼にフレンチ食べに行く。この辺にフレンチとかあったっけ?」


宗像(むなかた)の方に美味しいフレンチあるっち聞いたけどね。そこやない?」


「ああ、宗像(むなかた)か。海沿いドライブかな」


「楽しんでデートしてきたら、いいやん。女の子同士のデート。いいねー。結晴(ゆうせい)君も仕事忙しいけど、元気らしいし。結海ちゃんは偶に会うけどね、結晴君は最近全然会ってないね。良い男になっとろうねえ、凪は会った?」


「結晴君?私も会ってはないけど元気みたいよ?忙しくて大変みたいだけど。結海ちゃんがこの間、結晴君が出張言ったって、お土産くれたから」


「あら。本当?やっぱり忙しいんやね」


「二人共賢くて、流石だね。結晴君は弁護士、結海ちゃんは英語も出来るしね」


「うん。さ、凪は、明日のデート楽しんでらっしゃい」


「結海ちゃん、彼氏いないのかな?」


「いないらしいわよ。モテるみたいだけど。ファンは沢山いるみたい」


「なんでお母さんが知ってるん」


「そこは、まあ、シマちゃん情報やね」


「母親ネットワーク、こわ!」


私は朝ごはんを食べて、出かける準備をしているとメッセージが入った。


『山本さん、出勤してる。で、橘とは大分前に別れていたって、休憩室で話していた。でも、コレ、嘘だよね?』


『うん』と送り、大地からの「別れた事にしてくれ」スクショを張り付けて送った。


『もう、私も別れている事に同意だけど、何か月も前ではない』と送ると、『('◇')ゞ。ワトソンは証拠集めておきます』と返事がきた。


頼もしい同僚である。確か彼女の愛読書はコナン・ドイルだったか。


そうやってメッセージを送ったりしていると、結海ちゃんからも連絡が入った。


『十一時に迎えに行く』


『了解』


時計を見ると、十時半。そう言えば、お昼を食べると言っていたけれど、時間を決めてなかったな、と今更気付いた。慌てて時間までに準備をすませていると、十一時ぴったりに結海ちゃんは迎えに来てくれた。


「凪、久しぶり」


「結海ちゃん、久しぶり」


車に乗り込みシートベルトをしていると、結海ちゃんがじっとこっちを見ていた。


「ん?」


「ああ、いや。凪、髪の毛伸びたけど、やっぱり疲れた顔してる」


「うん、正直疲れた」


そう言うと「とにかく今日は話、聞く。じゃ、出すよ」と言って、海の方へ車は出発した。

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