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ピンクウサギの言うことなんか聞けるかっ  作者: ひろゆき


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 第四章  ~  はぁ? 主?  ~  (12)

 嘘を言うわけではありませんよ。

           9



 しばらく動くことができなかった。

 鼓膜を押し潰しそうな耳鳴りに耐え切れなくなり、ようやく顔をウサギに向けた。

 また冗談ならば、今度は壁に蹴り飛ばしてやろうとしていたけれど、ウサギはベッドの上で胡座を組み、真剣に牛を眺めていた。

 冗談じゃないのか、と戸惑いを牛に向けると、牛もウサギを怒鳴る素振りを見せず、消沈している。

「本当、なのか?」

 不安にまみれた僕の声はより通ってしまう。

「黙っておこうと思ったのですが、昨日すでに、主からおっしゃっていたので、説明させていただきます。主には、どうしても許すことのできぬ者がおります。その人物は主には対して、多大なる苦痛を与えており、主の憎悪は増していく一方でありました。その行為は罪意外何物でもありません。

 ワシが主に協力を求めた際、その人物が標的に選ばれる可能性もある、と示唆すると、主は協力してくれると承諾していたたけたのです」

「でも、それって」

「っと、誤解しないでいただきたい。主もまったく躊躇してなかったわけではありません。人を消す行為に、主も様々なことに葛藤しながらも受け入れてくださったのです。それほどまでに、その人物の憎悪が強かっただけなのです。主を責めないでくだされ」

 必死に杏奈のことを手振り身振りで擁護する牛。こいつもまた、彼女のことを信頼しているのかもしれない。

 その健気な姿に反論せず、「わかった」と制した。

 彼女のことを冷酷な女の子だと思ったことはない。

 普段から近づき難かったとしても、それは自信に満ちていたのが自分と違っていたから、劣等感が距離を生んでいたからであり、冷酷さからではない。

「例え、主が手を引いたからと言って、憎悪が消えたわけでもなく、いずれ殺意に変わり…… そうなれば、主が標的になる可能性が高まってしまうのです……」

「じゃぁ、いずれお前らのどちらかが消さなければいけなくなるってことか……」

「可能性としてですが」

「でも、すぐに標的が吉岡になるってことは」

「すぐにとは言わなくても、憎悪が強まれば、順位が早まることもない、とは言えないですな」

 ウサギは平然と説明する。それは牛を茶化しているのかと思えたけど、じっと座っている態度からすると、二匹にとっては正論なのかもしれない。

「なんとかする方法はないのか?」

「これまでは、ワシが主のそばにいることで抑止力となって、主の憎悪をごまかしていたのですけど、今となっては……」

「ーーで、次の標的が知らされるのはいつなんだよ」

 素朴な疑問を投げかけると、二匹は揃ってかぶりを振る。

「それはそのときによって変わるので、はっきりとは言えませんが……」

「じゃぁ、運に頼るしかないのか」

「主のそばに戻ることさえできれば」

 牛は嘆くと、頭を抱えてもだえて唸り続けてしまう。

 牛はウサギと違い、冷静さを持った奴だと思っていたので、この動揺はかなり追い詰められているらしい。

 冷静になり、俯瞰して見ると、ぬいぐるみが動いているだけでしかないけれど。

 すぐに、とは言いませんが、早まることも……。

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