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第28話 姉弟の対決と前世の因縁

 ロイアルは落ち着いたブラウンの髪に同色の瞳、そして中性的な顔立ち。見た目は完全に優男である。

 性格も軍人らしくなく普段は全くやる気がないが、戦闘時だけは冷酷で鬼畜な人格に変わる。


「お前、クソ弱いな。アーサーだっけ? でもまぁ大将の首を取れば群れなんて簡単に崩れる。あはは、戦術の基本だよね!」


 アーサーは常に戦バカだが、ロイアルは戦の時にだけスイッチが入る『隠れ戦バカ』であった。

 武器である剣を手から離してしまったアーサーは、ロイアルに剣を突きつけられた事で覚悟を決める。


「く……これまでか……」


 その時、横から素早い動きでアーサーとロイアルの間に兵士が割って入った。

 兵士は自らの剣でロイアルの剣を弾き返すとアーサーを守るようにして正面に立つ。


「ロイアル、私が相手だ!」


 その兵士は武装したレミアルだった。以前のような白銀の甲冑ではなく、デヴィール国の印が刻まれた軽装の黒い鎖帷子を纏っている。

 ロイアルは目の前に現れた実の姉を見ても驚きもせず臆する事もない。


「ふぅん、レミ姉。寝返ったんだね」


 ロイアルは眉をしかめて不快を示すような表情を見せる。それが寝返った事に対する怒りの感情なのかは分からない。

 その隙にアーサーは剣を拾って立ち上がると、レミアルの背中に向かって声を上げる。


「レミアル、お前が勝てる相手ではない。引け!」


 アーサーは決して弱い訳ではないが、ロイアルと戦ってその強さを知っている。そしてレミアルが戦っても勝てない事にも。

 それでもレミアルの意志は変わらない。ロイアルと戦う事は過去への決別であり、アーサーに愛と命を捧げるという覚悟の表れでもある。


「私は引かない! 命に替えてもアーサー殿を守り抜く!」

「本気で戦うの? やめときなよ、オレ強いよ」

「知っている!!」


 レミアルは漆黒の長剣を振り下ろして斜め切りにするが、ロイアルはそれを軽々と白銀の剣で受け止めてしまう。

 ロイアルはレミアルよりも1歳年下の弟だが、剣術の実力も力も体力も、そして心の強さもレミアルを上回っている。

 負傷しているアーサーは思うように加勢できず、長期戦になればレミアルはロイアルに押されてしまう。


「なるほどね、レミ姉はアーサー殿に惚れてるんだ。あんなクソ弱い奴のどこがいいのかね?」

「……黙れ! 侮辱するな!」


 体力の限界にきているレミアルは肩を大きく上下させて呼吸を荒げている。対してロイアルは息切れしていない。実力の差は歴然だった。

 ロイアルは何かを考えて剣を引いた。それでもその余裕の構えから隙は全く見えない。


「レミ姉、ウィリアム国に戻ってきなよ。今はオレが将軍だからカイン様に進言してあげるよ」

「なん……だと……」

「弟としての情けだよ。でも、そうだなぁ、条件としては……」


 ロイアルはレミアルに顔を向けたままでアーサーに刃先を向ける。方向を指し示すような仕草で。


「あいつの首を取れ。そうすれば帰国を認めてあげるよ」

「…………!」


 レミアルは恐る恐るアーサーの方を見るが、彼は肯定も否定もせずに無表情でいる。

 このままロイアルと戦えば二人とも命を落とす。だからと言ってアーサーは命を譲る気なんてない。

 そう、アーサーは戦バカ。魂までもが軍人なのだ。アーサーは剣を両手で握るとロイアルに向かっていく。


「あぁ、バカだねぇ。そんなにオレに殺されたいんだ」


 ロイアルの剣の切っ先が煌めくと、瞬時にアーサーの胸を目掛けて放たれる。その動きは確実にアーサーの剣よりも速い。

 それを見たレミアルの瞳に遠い前世の記憶の映像が映し出される。まさに今、目の前で起きているシーンが前世の映像と重なる。


(私は、前世も今も……アーサー殿を……)


 前世のレミアルとアーサーは敵将どうしでありながら愛し合った。しかし戦いの中で、自軍の攻撃からアーサーを庇う形でレミアルは死んだ。

 そして今、二人が生まれ変わっても歴史は同じ運命を繰り返す。


「レミ姉……!?」


 ロイアルの瞳が見開かれる。アーサーを仕留めたと思っていた剣先は、自分とそっくりな容姿の姉・レミアルの胸を突き刺していた。

 それは前世と同じ光景。レミアルはアーサーを守ろうとして自分の体を盾にした。


「レミアルッ!!」


 アーサーは手から剣を離すと、自分に向かって倒れてくるレミアルの背中を抱き止める。この時、アーサー脳裏にも前世のシーンが蘇った。

 二人一緒に床に座り込みながらも、しっかりとレミアルの背中を抱きながらアーサーは呼びかける。


「レミアル! 愚か者め! お前はいつも、そうやって私のために命を投げ捨てる!」


 それは怒声というよりは悲痛な叫び。常にクールなアーサーが戦の最中に感情的になるなんて、レミアルにとっては驚きよりも嬉しい。

 その怒りの中に愛を感じ取ったレミアルは、薄れゆく意識の中でも微笑んだ。


「アーサー殿、愛してる……何度生まれ変わっても、私はあなたを守る」


 それは、何度生まれ変わっても結ばれる事がない悲恋の運命さえも受け入れる、レミアルの愛と覚悟と強さ。

 軍人であるアーサー、そしてレミアル自身も胸の出血量を見て分かる。止血や治療で助かる傷ではないという事が。

 二人の前に呆然と立つロイアルの手から剣が滑り落ちる。レミアルを突いた剣は地面の上を跳ね、その刃先に滴る血が弾け飛ぶ。


「なんで、だよ……レミ姉……」


 ロイアルはレミアルを慕っていた。そんな姉に致命傷を負わせた罪悪感よりも、レミアルがそこまで愛したアーサーが憎いと思う。

 やる気のなさや無関心は愛の裏返し。結局はロイアルの行動理念も今のエリーゼと同じく『嫉妬』だった。

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