3.碧星の杖
今朝早く目が覚めたカヨは、ずっと気分が上がっている。
今日は杖とローブを受け取る日だからだ。材料から機能性、形、デザイン全てをこだわった、カヨのためだけの杖とローブ。
そのために早くセイカを起こしてしまい、お小言をくらったのは、忘れることにした。
起きてから2時間ほど経ち、セイカも二度寝から起き、朝食を摂ることにした。
外に出るとすでに辺りからは、かーんかーんと金属を打ちつける音が響いている。
「すごい、もう職人さんたちは働いているんだね」
「ほとんどの人が、貴女が起きるよりも前に始めていると思うわよ」
多くの鍛冶師は朝早くから始め、夕方ごろに終わる。おそらくヘストスも今ごろは、カヨの杖の最終調整をしているだろう。
「姉御! 姉御じゃねえか」
後ろから声を掛けられた。振り返ると男たちが数人、昨日夕食を共にした彼らだ。
「あら貴方たち、鍛冶師だったのね」
昨夜は軽装でわからなかったが、今は革の防護服を着て、工具類を持っている。
「ああ、そうだぜ。姉御らはどこに行くんだ?」
「ヘストスのところよ。カヨの杖を作ってもらっているの」
「なんだ、姉御らもなのか。俺らも師匠のとこへ行くんだ。一緒に行っていいか」
「ええ、もちろんよ」
それから少し歩き、ヘストスの工房に着いた。
「師匠ー! 来たぜ!」
「ガキがぞろぞろとうるせえな」
ヘストスがそう言いながら奥から出てきた。扉を開けたとき、金槌の音が響いていたから、何か作っていたのだろう。
「お前ら一緒に来たのか。ちょうどいい、待ってろ」
奥にまた戻り、すぐに戻ってきた。手には碧星がついた象牙色の杖を持っている。
「それって!」
「お前の杖だ」
期待で瞳を輝かせているカヨに杖を渡した。
「すごいすごい!」
「重さや握りやすさはどうだ? 今調整する」
両手で持って上下させたり、片手で持って動かす。片手で持っても重くなく、手にしっとりと吸い付くような握り心地。
装飾で重心も取れていて、とても使いやすそうだ。
「とってもいいです!」
両手で握って、抱きかかえるように持っている。気に入った。
「それと魔法石の破片だ。装飾店に持っていけば、加工してくれるはずだ」
小さな碧星の欠片を渡された。きらめきを眺めると、大事に大切にポーチにしまった。
「師匠、師匠! この杖、師匠が作ったのか!?」
「そうに決まってるだろ。お前らの目は何のためについているんだ?」
男らがヘストスに詰め寄り、それを押しのけながら答える。
「それよりお前ら、こいつらと一緒に来たみてえだが、挨拶したのか。うちのお得意様だからな」
「それを早く言ってくれよ。改めて、俺はこの頑固親父の弟子のザードだ、よろしくたのむぜ」
ほかの2人もリベック、ルルズとそれぞれ名乗った。
「私はBランク冒険者のセイカよ」
「Dランク冒険者のカヨです」
交互に握手をする。
「それでですねー、その杖をちょっと見せてもらえたりしないかと思っていまして……」
「おい、ザード抜け駆けすんなよ! カヨさんよければ自分にも」
ルルズは何も言わないが、その瞳が語っている。
「魔法士が簡単に杖を渡すわけないでしょう。眺めるので我慢しなさい」
大男の圧にカヨが萎縮しかけて、セイカが一喝した。
「お前らは見るんじゃねえ、作るんだろうが。バカ弟子どもが」
ヘストスは奥へ弟子たちを追い立てていく。
「カヨ、俺の杖は丈夫だ。魔法石が壊れたときだけ来い。本体はどの工房でも修理できる。困ったら俺の名前を出せ」
「はい、ありがとうございます!」




