19.氷魔法
「『冒険者閃華』が倉庫に入るために扉が開いたタイミングで、衛兵が突入します。セイカ殿、ご安心ください。必ずや我々がカヨ殿を助けますので」
衛兵隊長のスパトイがセイカに言う。その隣にはセイカに変装した衛兵もいる。
スパトイはセイカが後ろに隠れたことを確認すると、大きく声を張り上げた。
「冒険者閃華を連れてきた。人質の解放を求める」
「閃華を1人でドアの前に連れてこい」
少し時間を置いてから、指示が返ってきた。
「では、行ってまいります」
衛兵が一歩踏み出したそのときだった。
――倉庫が燃えた。激しく。
「……っ、すぐに消火をせよ!」
スパトイが衛兵を指示を出す。水属性の者たちが水を生成し、消火を始める。
「消えません! 勢いは強くなっています」
「一体この炎は何なのだ……」
この事態に彼女が動かぬわけがなかった。
セイカは素早く倉庫の前まで走っていくと、両手を前に突きだした。彼女の前が一瞬光る。
「カヨ……」
彼女が生み出した氷が炎を包み、凍らせ、消していく。
そして、ものの数秒でそこには大きな氷華が咲いていた。
「カヨ!」
勢いそのまま、倉庫の中へ走っていく。
「突入!」
衛兵隊長の号令に、衛兵も一斉に動き出した。
「カヨ! カヨ、どこにいるの?」
「……カ! セイカ! ここだよ!」
カヨの声だ。奥にいる。
ドアを開くと、カヨの姿があった。
「カヨ、良かった……」
彼女に駆け寄り、腕と柱をつないでいる縄をナイフで切ると、強く抱きしめる。
「セイカ、ごめんね」
「いいえ、貴女のせいではないわ」
セイカは近くで倒れている男を見た。
「この男は、オルセインね。どうして彼が?」
「この人が誘拐を依頼したみたいだよ」
はたと辺りを見回す。
「ミダスがいないわ……」
「そうだよ、セイカ。全員で4人いるの」
「オルセインとミダスの2人ではなくて?」
「うん、その2人とボスって呼ばれていた人と、ミダスって人を兄貴って呼んでいた男がいたの」
「それはクリュス兄弟の弟のモロスね。ボス、はわからないわね」
外へ出て、スパトイの元へ向かう。
「カヨ、さっきの話をもう一度いいかしら?」
本当のターゲットはカヨではなく、セイカだったこと。
廃倉庫の中には、オルセインとクリュス兄弟ともう1人ボスと呼ばれる人物がいたこと。しかし、オルセイン以外の姿は現在はない。
「カヨ殿、迅速な救助ができず、申し訳ありませんでした。ここからは、我々衛兵の仕事です。情報提供ありがとうございます」
「あ、あの。さっきの炎と氷って何なのですか」
「炎は不明ですが、氷はセイカ殿の魔法です」
「ありがとう、セイカ」
「貴女が無事で何よりだわ」
セイカはカヨの頭を優しく撫でると、本当に安心したように言った。
「セイカ、カヨ!」
ヘルメアの声が響いた。
「会長、どうしてここに?」
「それはないだろう、セイカ。アタシもカヨのことを心配していたんだからな」
「それはわかっているわよ」
ヘルメアは一度だけ、カヨとセイカを強く抱きしめた。
「セイカ殿、カヨ殿。また後日、話を伺うことになると思います。今日は送っていきましょう」
スパトイに護衛をされながら、宿屋まで帰ってきた。
「本当に此度の件は申し訳ありませんでした」
「これで警備を強化してくれれば、私はいいわ」
「わたしも、同じです」
「戦乙女アルテナの加護に護られんことを」




